番外編①:銀髪騎士の祈りと、聖女の目覚め
アッシュが王国を救うため、王都へ向かっている数日間。アルカディアはエリナが守っていた。
彼女は毎朝、アッシュが作ってくれた村を見渡せる丘の上に立ち、聖剣に祈りを捧げるのが日課になっていた。
(アッシュ……どうか、無事で)
彼のいないアルカディアは、どこか静かだった。だが、不安はなかった。彼が築き、残してくれたこの村と仲間たちを、自分が守る。その決意が、彼女を強くしていた。
アッシュが連れてきたアイリスは、アルカディアに残っていた。彼女は最初、村人たちから遠巻きにされていたが、自ら進んで村の診療所で負傷者の手当てを始めた。
スタンピードで傷ついた獣人の子供の傷を、彼女は献身的に癒した。
「ありがとう、聖女さま」
最初は怯えていた子供が、笑顔でそう言った時、アイリスは涙をこぼした。
王都で、ただ「聖女」という記号として崇められ、回復魔法を使っていた時とは違う。一人の人間として、誰かの役に立てた。その純粋な喜びが、彼女の心を満たした。
「……これだったのですね」
エリナが見守る中、アイリスは呟いた。
「わたくしが、本当にすべきだったことは」
彼女は、アルカディアで本当の「聖女」としての役割に目覚めたのだった。民に寄り添い、その痛みを分かち合うこと。
エリナは、そんなアイリスの姿を見て、少しだけ彼女への警戒を解いた。
(アッシュは、敵だったはずの人間さえも変えてしまう。本当に、太陽のような男だ)
彼女は再び王都の方角を見つめ、愛しい村長の帰りを、静かに待ち続けるのだった。
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