波紋

OROCHI@PLEC

波紋

 雨上がりのある日、私は友達と映画を見るために駅へ向かっていた。

 鼻歌を歌いながら気分良く歩いていると、道中に大きな水たまりがあった。


 そんなこともあるかと思ってレインブーツを履いてきていたのでそのまま水たまりを踏みしめる。

 チャポッ

 という音とともに水面に波紋が広がる。

 チャポッ

 チャポッ

 一歩進む度に波紋が広がって行き、それがまた別の波紋とぶつかってまた新たな波紋が起こる。


 それを見て学校の授業で先生が話していたバタフライエフェクトを思い出す。

 バタフライエフェクト。

 それは、たった一匹の蝶の羽ばたきの様な小さなことが、波紋の様に広がり、嵐の様な大きなことを引き起こすことを言う。


 私が今起こしたこの波紋も何かを、世界を変えるのだろうか。

 そう考えると自分が神様になったみたいで少し楽しくなってくる。

 チャパチャパ音をたてながら歩く。


 ……いや、でも私は神様ではないか。

 私は全知全能じゃないから。

 世間一般的にいうと神は全知全能だ。


 それ以前に、この世界には全知全能な人は存在するのだろうか。

 んー。おそらくいないだろう。

 全知全能の人は全知全能ではない人の心が分かるかと言われたら分からないはずだから。

 この時点で矛盾が生じてしまうからね。

 だからおそらく全知全能な人などは存在しない。


 だけど、こうも思うのだ。

 全ての人が力を合わせたら、人間という種族は全知全能になれるのではないかと。

 人には、みんな苦手があって、みんな得意がある。

 お互いがそれを補い合った時、人間は何でもできる様になるのではないか。


 もしかすると、昔の人は全ての人が協力した時の姿を理想として、それをとしたのかもしれない。

 そう考えるとなんか浪漫を感じる。

 そんなことを考えながら時計を見ると、電車に乗り遅れそうな時刻だった。


「Oh my god! 神だけに!」


 そうして私は走り出す。

 電車に乗り遅れないために。

 水たまりをバチャバチャと蹴散らす。

 波紋が水面へと広がっていく。

 こうして世界は日々変わっていく。

 何気ない一言が、何気ない行動が世界を変えるのだ。


 空には虹が輝いていた。

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