第2話 神の声


 テルクニ君、なんとダンジョン作りに・・・可哀想!

 以下は昨夜のテルクニ君のグループチャットです。



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 Mr.TK  :ごめん。ちょっとリアルでヤバめな事が発生

 ももちゃん  :なんかあった?

 Mr.TK  :ダンジョン作らんと

 ももちゃん  :いみふ

 テキヤのジョー:もしかしてリアルとかw

 Mr.TK  :それ(TT

 ももちゃん  :まじで?

 テキヤのジョー:金持ちやな。自慢か

 ももちゃん  :流石剣聖

 Mr.TK  :剣聖違うし。借金やし

 テキヤのジョー:いくら?

 Mr.TK  :金1k


(しばらくチャットが止まりました)


 テキヤのジョー:親の金じゃなくて、借金?

 Mr.TK  :うん(TT

 ももちゃん  :またまたw

 Mr.TK  :ガチ。何日かしたら工事。工事オフ会する?

 テキヤのジョー:まじすけ

 ももちゃん  :TKなら魔術で一発しょ? 大魔術師、なんで工事?

 Mr.TK  :魔力異常の洞窟横。魔術使えねえの(TT

 ももちゃん  :手掘り!? まじすか!?

 Mr.TK  :金1kこれ

 テキヤのジョー:1kで足りるの、それ

 ももちゃん  :ボス部屋だけのダンジョン?

 Mr.TK  :多分そうなる・・・悲しみ

 ももちゃん  :頑張って未来の剣聖

 テキヤのジョー:1人で悪の組織やるん?

 ももちゃん  :お宝、何の予定?

 Mr.TK  :サダスケ。脇差。市場価格で金300くらい。あと悪違う

 テキヤのジョー:出来たら呼んで。ももちゃん、人集めて行こ¥

 ももちゃん  :リアルTKに何人集めたら勝てんの

 Mr.TK  :防衛手伝って。まじで

 テキヤのジョー:給料によっては行かんでもなきにしもあらず

 Mr.TK  :給料、ちょっと考えとく。てか、こんな田舎に人くんの

 ももちゃん  :来るんじゃない? テルクニダンジョンとか超話題性

 Mr.TK  :そのネーミング超恥ずかしいです

 テキヤのジョー:こないだのオフ会メンに話しとく? 行くのおるかもよ

 Mr.TK  :助かる

 テキヤのジョー:じゃ、こっちのダンジョン行くべ

 Mr.TK  :ごめん。明日、入れんかも

 ももちゃん  :脱ニート!

 Mr.TK  :ニート違う

 ももちゃん  :脱ほぼニート!

 テキヤのジョー:おっと明日はイベ初日

 Mr.TK  :きついっす

 ももちゃん  :頑張れほぼニート!



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 朝になりました。

 さあテルクニ君! オリネオ洞窟へ行こう!


「だる」


「シズクさんもマスダさんも、もう来てますよ」


「早い! 早いよ!」


「早くないです。もう9時半じゃないですか。さあ、お弁当」


 お弁当は大事です。

 クレールさんは優しいですね。


「ありがと。じゃ、行ってきます」


「頑張ってね!」


「・・・それなりに・・・」


 テルクニ君! 声が小さい!

 ほら、クレールさんがお怒りですよ。


「もう! 何ですか! 折角、お弁当を作ってあげたのに!」


「違うよ、クレール母さん。シズクさんとマスダさん、あの2人が一緒って」


「・・・」


 クレールさん、そこは痛い所を突かれましたね。

 あの2人は超凶悪凶暴な見た目です。


「きつくない? 工事とか計画立てれるの? てか、観光の人とかビビって逃げてない?」


「そっ・・・そこを、テルクニ君がフォローするんですよ! テルクニ君がブレーンなんですから!」


 クレールさん、慌ててませんか?


「クレール母さん、そこ考えてなかったんじゃないの?」


「そんな事はありません。さあ、早く。もう待ってますよ」


「はあい・・・行ってきまーす」


「頑張って下さいねー」



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 この原付はテルクニ君の愛車、ムハンマド号です。

 椅子を上げて、ボックスにお弁当を入れました。

 さあ行こう! 今日は自販機にジュース買いに行くだけではないですよ!


「・・・バッテリー切れかよ」


 ちゃんと充電量には気を付けておきましょう。

 さあ、充電ケーブルを引っ張りましょう!


「めんど」


 ぱしん! 雷の魔術です! 一瞬でバッテリーが充電されました!

 テルクニ君、流石の魔術ですね!


「は。行くか」


 びびーん! エンジンがかかりました! やりました!

 ぶいーん・・・


 テルクニ君! 駄目です! 原付は30km以下ですよ!


(誰も30kmで走らねえよなあ。むしろクラクション鳴らされるし)


 法定速度を守って走ると、逆に迷惑顔されたりしますよね。

 田舎だと、真っ直ぐな農道を100kmくらいで飛ばす人が居ます。

 農家さんは飛ばしませんが、それ以外はスピード狂かよってくらい飛ばします。

 関係ないですが、筆者も何度も事故に遭いそうになってます。


 警察の待ち伏せには気を付けましょう。

 たまに覆面が何も無い田舎道に居たりしますよ!


 ぶいーん・・・

 ぶんぶんぶん・・・

 おや? 何故止まるんですか? トラブルですか?


(あれえ? どおっちだっけえ? ここだっけ? 次だっけ?)


 そこを曲がるんですよ。

 あと、テルクニ君、そこ地元です。

 8割くらい引きこもりのテルクニ君は、たまに地元で迷います。

 コンビニと自販機までの道だけはしっかり覚えていますよね。


「もういいや」


 ぶいーん・・・

 勘が当たって良かったですね。



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 ぶんぶんぶん・・・ふすん。

 電気の原付は静かで良いですね。


 あっ! あれはシズクさんです! 青鬼ですよ!

 わあ! 虎みたいに怖い顔! 虎族ですから当然! あれがマスダさんです!

 2人ともジャージです。全身で銀1、銅98枚の感じです。やる気満々ですね。頼もしい作業員です。


「ども、はよざっす」


「テールークーニー! 遅ーいっ!」

「ここ魔術使えねえってのに、俺らを待たせるとはな。やんのか」


 怒ってますよ!


「すませんした」


 素直で宜しい!


「さっき、役所の人が来たよ。これ、地図」


「役所? 地図?」


 シズクさんが地図をくれましたよ。見てみましょう。

 マスダさんの指、太いですね。

 何より、その爪、長過ぎませんか? 凄く刺さりそうです。


「おお、ここの洞窟とぶつかるとまずいからな。近過ぎると音とか響くだろ。離してくれって」


「あー、危ないって感じですか」


「なんかここ、オリネオの結構な収入源らしいぜ。だから気を付けてくれってな。マツさんの土地だから、崩れちまっても役所は文句出せねえけどよ。客に被害はまずいだろ。今から工事だっつって追い返す訳にもな」


「そりゃそすね」


「ここ、客いねえ日ねえしよ。面倒くせえな。さっさと掘っちまうか」


「そうだね! 私ら居れば、1日で終わるでしょ!」


「掘った石とか土とかどうします? あと、梁立てないと崩れません?」


 うわ、冷たい目ですよ・・・

 テルクニ君、そのくらい、魔術で穴でも掘って、その辺の木を切って下さい。


「向こうの方に穴掘ってよ」


「向こうまで離れりゃ木くれえ魔術でぱぱーっだろ。運んでやるから」


「はい」


「じゃあよ、どんな形にすんのか考えて来てんのか」


「どんな形もなにも、入口作って、真っ直ぐ廊下作って、10m四方くらいの部屋作れば良いんじゃないすか」


 シズクさんもびっくりです。


「1部屋なの!? それダンジョン!? 迷宮じゃないの!?」


「いや、僕1人しか居ないですから。ここ、魔術も使えないから、死霊術も陰陽術も駄目ですし」


 マスダさんもびっくりです。


「テルクニ、お前、1人でやんのか!?」


「しかないすよ。あ、中にもトイレくらい作っといた方が良いすかね。トイレは業者呼ばないとですけど。外で待つ人は、あっち(観光洞窟)の方、使ってもらって」


「・・・」「・・・」


「僕、昨日寝る前に悟ったんですよ。金払ったら道場破りと立ち会います、みたいな感じですよーって神の声が聞こえたんです」


「そう・・・かな?」

「それ悟りか?」


「受付の人くらい、冒険者ギルドで雇った方が良いすかね。通信回線、洞窟の方から引っ張ってこれるかな? この辺、特殊なケーブル使ってそうだし、高そうですよねえ」


「ううん・・・」

「さあ・・・」


 テルクニ君、1部屋じゃ足りないですよ。

 トイレ、待合室、受付、医務室、テルクニ君の休憩所も作らないと。

 医務室はお金が掛かりそうですけど、本当に大丈夫ですか?

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