Monochrome 警視庁公安部公安総務課第6公安捜査第11係
零音霖
EP1(1)
痛い、痛い、痛い......。目の前は血の海だ。ベレッタのグリップをぎゅうと握り直す。あれからどれほどの時間が経っただろうか。
目の前がチカチカする。あの日の記憶と目の前の惨状がリンクする。
玄関の扉を開けた途端漂う鉄の匂い。居るはずの両親のただいま、と言っても帰ってこない返事。リビングへの扉を開けた先の惨状。
もう何もかもが最悪だ。
あの問題児がついに追い出されるらしい。という噂が警視庁捜査一課を駆け巡る。
警視庁捜査一課にいる時点で皆優秀なのだ。1人減ったからとどうということはない。
「それで?みはる〜どこ行くんだ?ここから追い出されるんだろ?」
生田班班長。生田春樹。瞠の同期だ。
「公安部だそうです」
「公安部?そんなとこ行ってやる事あんの?結構派手な事してるじゃん。バレてるでしょ」
「なんか大丈夫らしいですよ。表立って公安と言って捜査するらしいです。相手もかなり訳アリだそうで」
「そのお相手さんに同情するわ。このクソ暴れ馬の相手しなきゃならないなんてな」
瞠は春樹を軽くどつく。
「うるさいですよ」
警視庁の13階の小会議室。ここが俺たちに割り振られた部屋だ。
他にないから仕方ないらしい。まぁここを使うのはもう1人だけ。
部屋に着いたがまだその人はついていない。とりあえず荷物を下ろして部屋に入ろうと重たい段ボール箱を置いた途端、声が掛かる。
「初めまして」
後ろからの声に振り返るとそこには派手な格好をした若い男がいた。
肩を越したぐらいの長髪をポニーテールにし、サングラスを掛け、服はシャツとネクタイと普通かと思えば派手なニットに黒いロングパーカー。そして足も悪いのか杖もついていた。
「......初めまして」
「このメガネは遮光メガネ。色が分からないのですがその分光に弱いのでつけています。この杖は足を怪我してしまって。その内走れるようにはなると言われているので安心してください。詳しくは言えませんが僕は休職していたのでこれが復帰初日となりますがどうぞよろしくお願いします」
不信感を抱いていたことに気づかれていたのか。
小会議室に入り、とりあえず荷物をそれぞれに配置したところで自己紹介が始まった。
「改めまして。捜査一課から参りました。唯川瞠です」
「
「キャリア組ですか?そうとなるとまたすぐ向こうに行ってしまいますね」
「準キャリアです。すぐ向こうに行くのは事実ですけど」
一通りの自己紹介を終え、聖園から業務説明があった。
「僕たちが配属されたのは警視庁公安部公安総務課第6公安捜査第11係。今まで顔出しで捜査をしてきている以上、警察だと知っている裏社会の人間だって少なくないはず。だから表から堂々と公安だと名乗って捜査する。ほとんど独立部署みたいなものだから遊撃部隊として行動する。それで主な事件だけど、ヴァルキリーの残党処理。もちろん他の事件だって多いけれどヴァルキリーの元構成員関連の事件は後を絶えない。だから専門捜査の係が作られたわけ」
ヴァルキリー、一年半ほど前に起きた【警察官拉致監禁事件】の現場にヴァルキリーの幹部が居たことによって、20年間どの国も解決の糸口を見出せなかった大型犯罪組織の崩壊への一歩となった。その事件がきっかけになり、芋蔓式に逮捕されていった。リストに載っているボス及び上級幹部は逮捕出来た。しかし下っ端や下級、中級幹部の中には逮捕出来ていない人物も存在する。そんな元構成員が起こす事件が逆に被害に遭う事件が後を絶たない。というわけで、この係が出来たというわけだ。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます