作者様はカクヨムにて執筆活動を始めてから、テーマの一つとして二人称小説を書き続けています。この、恐ろしく厄介な代物を。
一人称小説なら、主人公は「私は」「僕は」「俺は」等々。
三人称小説なら、主人公は「○○は」("○○"とは人名)
二人称小説とは、語り手が「あなたは」と語り続け、読者を主人公に据える小説です。
必然的に読者の行動も心情も作者により決めつけられる形式であり、読んでいる途中の気持ち悪さは群を抜きます。ですから商業的成功を目指す作家志望者は手を出しません。
本作も例に漏れず読者は作者により決めつけられ続け気持ち悪くなります。しかし結末まで読むと聡い人なら気づきます。決めつけられていなかったら、自分はどうなっていたか分からないと。
人は自分が見えません。傍目八目(囲碁で八目ほどの差がつくくらい、他人の方が見ているという慣用句)。
物理的には作中に登場しない、鏡をふいに覗き込んだときの恐ろしさ。それが身に染みます。