「巡る影」

人一

「巡る影」

件名:お願い


本文:

このメールを読んだ人は、必ず 3人 に送ってください。

送らなかった人には、不幸が訪れると言われています。


過去にこれを無視した人は、

・その夜に事故に遭い入院しました。

・大切な人と突然別れることになりました。

・理由もなく職を失いました。


逆に、送った人には幸運がありました。

・臨時収入が入った。

・疎遠だった人から連絡が来た。

・願いがひとつ叶った。


信じるかどうかは自由です。

ただ、読んでしまった以上は、あなたにも選ぶ権利はありません。


~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~


「なんだこれ?」

何気なしにスマホのメールボックスを見ていると、埋もれていた変なメールを見つけた。

「今どきチェーンメールなんて流行らないだろ……というか、迷惑メールならネットで見るような面白い文面でを送れよな。」

そう言ってメールを削除した。


翌日。

職場のパソコンでメールをチェックしていると、再び迷惑メールが紛れていた。


~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~


件名:re:お願い


本文:

このメールを読んだ人は、必ず 2人 に送ってください。

送らなかった人には、不幸が訪れると言われています。

…………


~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~


「うわ、このメールここにも届いてんのかよ。」

迷惑メールは仕事の邪魔なので、削除した。

すると、その日の午後。

上司に呼び出されたかと思えば、突然の解雇を言い渡された。

何度理由を聞いても「もう決定したことだから」の一点張りで、最後まで理由を教えてくれなかった。

途方に暮れながら、身の回りを片付け帰宅した。

何も喉を通る気分ではなかったので、何も食べることなくそのままベッドに潜り込み眠った。


翌朝。というより日は高くもう昼間だった。

重たい気分で起き上がり、自室のPCデスクの前に座った。

そしていつもの癖で、メールボックスを確認すると……

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~


件名:re:re:お願い


本文:

このメールを読んだ人は、必ず 1人 に送ってください。

送らなかった人には、不幸が訪れると言われています。

…………


~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~


「またこのメールか……」

仕事を辞めさせられたのに、染み付いている癖にも毎日送られてくる変なメールにも辟易して削除した。

もう使わないだろう。と迷惑メールを削除した後に、メールボックスごと削除した。


何となく安心していると、突然母親から電話がかかってきた。

「もしもし?どうしたん?」

「おじいちゃんが……おじいちゃんが……」

母親は電話口で激しく泣いており、何事かと何とか宥めて話を聞いた。

すると、祖父が亡くなったと告げられた。

「なんで、じいちゃんが……一月前に会った時は、あんなにピンピンしてたのに……」

自室に1人だが、もはや周りを気にすることもなく大声で泣いた。

そして落ち着かない気分で祖父の家に向かい、突然訪れた別れを済ませ現実的な手続きを進めた。


翌朝。

結局、俺は一睡もできなかった。

ブブ……

泣き腫らした赤い目でスマホを見ると、見たこともない番号からSNSでなにかのリンクが送られていた。

「こんな時になんだよ……」

と思いながら、リンクを踏むとメールボックスへと遷移しあるメールが表示された。


~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~


件名:お知らせ


本文:

このメールを読んだ人は、必ず 0人 に送ってください。

送らなかった人には、不幸が訪れます。


これを無視した人は、

・理由もなく職を失いました。

・大切な人と突然別れることになりました。

・その夜に事故に遭いました。


あなたは、私たちを無視し続ける選択をしました。

あなたにはもう選ぶ権利はありません。


~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~


頭の中で何かが切れた気がした。

「こんな時にふざけるなよ!!どんだけ手の込んだ迷惑メールなんだよ!!」

怒りのあまり、スマホを床に叩きつけ破壊してしまった。

一瞬だけ後悔したが、気持ち悪いメールに対する怒りがすぐにかき消した。

壊れたスマホを片付け、1度荷物を取りに帰宅した。


人もまばらな、駅のホームで電車を待っていた。

手持ち無沙汰で、ボーッとしていると電車通過のアナウンスが流れた。

遠くから向かってくる電車の轟音が聞こえてきている。

――ドン!

突然背後から誰かに突き飛ばされた。

咄嗟に背後に顔を向けるよりも早く、俺の目に映ったのは、もう眼前まで迫った猛スピードの電車だった。

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「巡る影」 人一 @hitoHito93

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