私とキミたちとの調和

ユメウラ

Episode-1~日常と交差点~


私は生まれて初めて衝撃的なものを見てしまった。


「なにこれ…音やキラキラがいくつもあって!お空みたいで!!」


ドキドキと走る鼓動に私は戸惑いながら、お父さんとお母さんの高校時代のDVDを見せてもらったのだ。


絵本読んだりすることが好きだったんだけど、絵本を取り出す時に、ある日テレビ台の下の引き出しを開けたらあるDVDを見つけた。


「お父さん、これなぁに?」


「煌夏、これはな。バンドというものなんだ。」


「バンド?」


「高校時代の文化祭の時のDVDでな。父さんと母さんと友達2人で、楽器を引き合うんだよ。」


「お父さん、私もお父さんみたいなことやりたい!」


「お!煌夏もギターに興味あるのか?ギターやってみるか?」


「うん!」


ーーーこの時からバンドというものを知り、それが穂川 煌夏(ほかわ きいな)の音楽人生のスタートだった。


お父さんの部屋に行って見せてもらったものが黒くてかっこいいエレキギターだった。初めて持たせてもらったギターはとても重くて、初めて触った弦は固くて、弾いた瞬間ビリビリと鳴った音の感覚に心が震えた。


「なにこれ、すごい!」


「はは!煌夏はギター上手くなりそうだ!」


「本当に!?」


「あぁ、毎日頑張って練習したらな!」


雷に打たれた衝撃に、私はすっかりハマってしまった。


「これがギターを弾くのに必要な、楽譜というものだよ。」


「楽譜?お父さん、この英単語はどういう意味なの??」


「はは、煌夏にはまだ少し難しいか!これはな!」


ここからお父さんにギターを教わる日が始まった。最初はコードとか何?この英語はどういうこと?って感じだったけど。練習を毎日重ねて、弦を抑え方がわかってきたりして


「お、煌夏!もうCコード弾けてるじゃないか!」


「頑張って練習したもん!」


「凄いぞ、煌夏」


そう言って頭を撫でてもらえる嬉しさと出来るようになる楽しさに外で友達と遊ぶことよりお父さんとギターを弾くことが好きだった。


そして、Cコードだけじゃなく。DからFコードまで弾けるようになっていた。


「きいなーご飯よ!」


お母さんが呼びに来るまで、ギターの練習した。そんな子供時代で、楽譜も読めるようになってきて。


ーーージャカジャカジャン。


お父さんの部屋にある棚から楽譜は気付けばスムーズに弾けるようになっていた。


「子供の成長は早いな。」


「本当ね!」


そんな両親の言葉なんて聞いておらず、お父さんの部屋にエレキギターとは違う赤と黒色のアコースティックギターを見つけて。それも教えてと音楽に対してはすごい貪欲だった。


「ついに、アコギにも手が出るようになったか。」


「え?お父さん何か言った?」


「いいや!」


毎日飽きずに学校から帰ったらギターとアコギの練習していた。ふと私も自分のが欲しいなぁと思い始めたんだけど、音楽をやるにお金がかかるんだと知った。


「そんな困ったような顔してどうしたんだ、煌夏?」


中学入学した祝いに買ってもらったスマホをソファーで見ていたら、コーヒーを飲んでいたお父さんが私のスマホを覗き込んで話しかけてきた。


「バイトしたいのに、やれるバイトがない。」


「中学生はなかなかないよな。」


「私もお父さんみたいに、いろいろやったり、道具ほしいのに。」


「なら、父さんと母さんの店を手伝うか?」


父さんと母さんは喫茶店をやっているから手伝ったらバイト代を出すと言ってくれて。


「やる!やらせてください!!」


「はは!父さんたちも助かるから嬉しいぞ」


そこからお父さんとお母さんの手伝いをした。最初はお皿割っちゃったり、上手く料理や飲み物を運ぶのが難しかったけど、2人は怒らずに笑いながら「大丈夫だよ」と励ましながら、やらせてくれた。


私は初めてバイト代をもらう達成感を知った。ギターを練習してる時、父さんが部屋に入ってきた。


「はは、そのギターとアコギ。もう煌夏専用だな!」


「えへへ、うん!」


「煌夏はギター弾くの楽しいか?」


「もちろん。」


「楽器は高いから、ギターとそのアコギ、もう父さん使っていないからあげるよ」


「え、いいの?」


「あぁ。煌夏頑張ってるのが、父さんも嬉しいんだ。」


「ありがとう、お父さん。絶対大事にするね!」


この時に、このギターとアコギが相棒になった瞬間だった。そして、バイトして貯めたお金で楽譜や弦を買うようになった。


たまにお店にある小さいステージで、お父さんとセッションしたりして楽しかった。お父さんが時々作詞作曲というものをしてて、それを私も真似して自分で作ったりするようにもなった。


「なにこれ?Ms.DrainのPretendStarのカバーを弾いてみた??」


学校の休み時間でそんなタイトルを動画サイト見つけた。イヤホンをして聞くと、とても上手だった。


なにこれ、こんなことできるの?と私も動画に上げることに興味を持った。どうしたらこの動画と同じようなことが出来るんだと調べた。


お父さんがDVDでやってた、ギターを弾きながら歌うことができるのではとわくわくした。


でもどんな曲をやったらいいか思いつかず、好きなバンドのMs.DrainのPretendStarをギターを弾いたのと歌ったのを初めて録音した。そして無料編集ソフトで本当に初歩だったけど、調べた内容を見て真似して。


コウ、という名前で投稿したのだ。顔出しはさすがに勇気が持てず、顔なしでも投稿している人はいたからそれを真似して、手汗握りながらも動画サイトにを投稿した。


最初は達成感のせいか、全然気づいてなかったけど、落ち着いて録音したのを聞いてて思ってしまった。


コメントにあった言葉「ギターはそこそこだけど歌はイマイチ」と見たとき、歌も練習しなきゃな駄目だとわかった。


「歌の練習か。」


歌が上手くなる為には、とネットで調べるとお腹から声を出しましょうとか、喉の使い方についての動画を見たけど。今更かもしれないけど、さすがに下手な歌を練習しているところを両親に聞かれるのは恥ずかしいと思った。


だから気軽に音を出せる場所がないかと、ネットで調べたら意外とカラオケでやることもあると記事を読んで知った。


その手があったかと思ったけど、中学生のお小遣いでは、回数も時間も全然足りなかった。


だからこっそり夜に家から抜け出して、公園で歌の練習をした。お腹や腹筋に力を入れる方法や息継ぎの仕方とか練習した。あと家でも出来ることで腹筋やスクワットもちょっとずつ始めた。


そして中学を卒業して、春に高校へ入学して、まずやりたかったことは、バイトだ!お父さんとお母さんのの手伝いもやるけど、やっぱりお金が欲しくて即バイト先を探しまくった。


学校帰りに趣味の写真を撮っていたら、すっごい運命的なバイトの張り紙を発見した。それはライブハウスのバイトだ。


「お父さん!見て!!」


絶対やりたいと思った。


「なんだ?急に大声出すなんてギター始めた時以来だな!」


「あのね、私ライブハウスのやりたいの。」


「どれどれ?…このライブハウスか」


「お願い!お店絶対手伝うからいいかな?」


「いいんじゃないか!やってみろ!」


そこから私にとっては音楽の倉庫で。お金も欲しかった私は、バイトをとにかく入れまくった。お店手伝いもたくさんした、時々お父さんのバンド仲間に混ざってセッションしたりした。


スタジオで練習するということも始めて、公園と違って周りを気にせずに思いっきりギターや歌を練習することが、こんな生活が楽しくて、気付けば人よりギターが友達になっていた。


教室の放課後、誰もいなくて。ちょうどいいやと思ってアコースティックギターをケースから取り出して、紫のストラップを肩にかけて、長い後ろ髪を整える。


最近は投稿はカバー曲だけど、作詞作曲が楽しくてそれを毎日やっている。。教室の窓を開けると見えるのは、この前までは、校門前の桜並木が綺麗だったのになもう緑の葉しか見えない。


「夕陽、綺麗だな。」


私はアコギの弦を弾くと、教室に音が響く。なんだかちょっとLAMPかMS RED PEACHみたいだなとか思ったり、アルペジオの練習した。


「ある夕陽が差し込むと、眩しい輝きに 影が生まれる。」


昼休みや休憩時間を使って、意外と誰も来ない屋上や教室を使って、ギターのフレーズ考えたり、歌詞を書いたりして、時にはカラオケ行って、練習か録音をする日々を送っていた。


スタジオやカラオケはお金がかかるから、こういう場所は有難かった。


「うーん、このアルペジオはもっとこんな感じがいいかなー?」


ある日の放課後、今日も時間的にもう誰もいないだろうと思い、アコギで自分の作った曲を楽譜にしたそれを弾いていたら。


ーーーガラッ!


教室のドアが突然開いて、思わずビックリしてしまった。もう生徒の皆は帰ったと思っていたから。


「あれ、確か。穂川さんだっけ?」


あの人は、最近軽音部入ったとクラスの女子によく囲まれている同級生でクラス委員長でもある男子生徒。


「春田くんか。」


「あれ、俺の名前覚えててくれたんだ。」


「まぁね。それで春田くんは忘れ物か何か?」


「そうプリント忘れたんだ。ていうか、俺と話してくれるんだ。なんか意外。」


「別に話くらいするわ。」


「ごめん!あんま人と喋るところ見ないからさー

!」


ま、今は友達よりギターに費やしたいからな。バイトも毎日入れてて、お店も手伝っているし。


「つーか、それアコースティックギターじゃん。穂川さんが弾くのか?」


「まぁね。」


今さっきまで弾いていた、Ms.DrainのPure Horizonのアルペジオを練習していた部分をアコースティックギターの弦を指で鳴らした。


「すげー!Ms.DrainのPure Horizonじゃん!めっちゃアルペジオ上手いな!」


「さっきまで練習してたからまぁまぁかな。春田くんは軽音部なんでしよ?」


「ああ!俺の幼馴染み2人含んで、3人でバンド組んでやってるんだ!」


「春田くんの幼馴染み?」


「俺たちよく一緒にいるからわかると思うし、穂川さんと同じクラスだよ?」


同じクラスでよく一緒にいる、となるとクールな印象で授業中寝ている印象の男子である柳くん。オシャレにピンクのパーカーを着こなしていて、生徒会書記をしている井間くんかな。


「そうなんだね、軽音部で何の楽器をやってるの?」


「俺は、ベースだ。」


「へぇ、ベースか。いいね。」


あの重点音がたまらんよな。お母さんもベースたまに引いているんだけど、特にMs.Drain のUnseen DawnのAメロ部分とかLAMPのプラネタリウムのイントロのベースラインが超好き。


「兄貴がベースやっててな。兄貴はHONEY YELLOWってバンドのベーシストでなその影響なんだ。」


HONEY YELLOW、王道ロックサウンドだけどかなり重量感が特徴なのを一昨日ライブハウスのバイトの時に聞いて、めっちゃかっこいいと思ったけど…マジか。


「春田くんのお兄さんのバンド名は聞いたことあるよ。私はライブハウスでバイトしてるけど、一昨日出てた気がする。」


「穂川さんライブハウスのバイトしてんだ!いいね!俺の兄貴のバンド結構上手いって評判でさ!俺も早く兄貴みたいになりたいんだ!」


「そうなんだね。」


春田くんにも憧れの存在がいて、ベースが上手くなりたいと私と同じように思っているんだな。


「穂川さんは?ギターの始めたきっかけとかあるの?」


「私はね、両親がバンドやってた時期があってね、それが影響で私はギターを始めたの。」


「おぉ、いいじゃんか!それ!もしかして、もうバンドメンバー決まってんのか?」


「ううん、まだでもいつか組みたいとは思っているよ。」


「そうだよな!さっきのアルペジオ上手かったし、そのギターもアコギもかっこいいもんな!」


春田くんに笑いながらお父さんからもらったギターとアコギを少し嬉しかった。少し話が盛り上がった時、春田くんのズボンのポケットから着信音が聞こえた。


「え。」


その春田くんのその着信音、私が弾いてみた企画動画でやったMs.DrainのPretendStarじゃん。


「あ、穂川さん電話だ、ごめん。どうした慧(けい)?」


慧ということは、電話相手は柳くんかな。


『どうしたじゃねーよ、練習サボんなよ。アホ田。』


「悪かったよ、今戻るよ。ごめんな、呼ばれちった!またな、穂川さん!」


なんで、着信音がMs.Drainのではなく、私のカバー版にしているのかよくわからず、風のように教室を出て行ってしまった。


そうか、私のカバー曲を気に入ってくれてる人が居るんだなと知って、誰かに初めて私の音楽を認められた気がしてそれが凄い嬉しかった。自然と口角が上がりアコギの弦とネックを握り直して練習を再開した。


次の日の朝、少し気分が上がりながら廊下を歩いた。昨日は久しぶりに同い年の人と話したこととか、音楽の話ができたことが少し嬉しかった。


教室のドアを開けた。


「おはよう、穂川さん!」


爽やかな笑顔で春田くんが挨拶してくれたことに、少し驚いた。


「……おはよう。」


まさか昨日の今日で笑顔の挨拶して来るなんて、春田くんは人との距離あまり遠くないタイプか。流石女子の人気者は違うな。


「あれ、今日はアコギじゃないんだね!」


「春田くん。うん、今日はエレキギター。」


背中に背負っている、ギターケースを机に置いて、開けて見せる。


「エレキギター黒かっこいい!つかそのギターFender Stratocasterじゃね?」


「嬉しいことに、このギターはお父さんに譲ってもらったの。」


「あー、俺もベースは兄貴のお古だからな!!」


家族からお古の楽器を譲ってもらうのあるあるなんだな。ライブハウスのバイトでもスタッフの人とそんな話をしたことある。


「それでさ、っていってぇ!?」


何故か痛そうにする、春田くんの後ろには、彼を蹴ったであろう、春田くんとよく一緒にいる柳くんだった。


「おい、春田。穂川さんを何ナンパしてんだよ。」


「何すんだよ、慧!?」


春田くんと柳くんが突然喧嘩を始めてしまった。


「あはは〜!けーくん見事な飛び蹴りー!」


明るく笑いながら話をしているのが、井間くん。


「優も、慧になんか言ってやれよ!」


教室でもよく3人でいる姿は見るし、この光景を見ると春田くんたちはとても仲がいいんだなと改めて感じた。


「穂川さん、こいつが悪いかったな。」


「ううん、大丈夫。」


「ていうか、そーくんと穂川さんが話してるのめっちゃレアじゃない?」


そんな話をしていたら。


「そうじゃなくて!穂川さん!」


ーーーキーンコーンカーンコーン


春田くんか話しかけるタイミングで残念なことに予鈴のチャイムが鳴ってしまった。


「ごめん、私席に行かなきゃ」そう伝えて私は自分の席に行き、教科書やノートを勉強机の引き出しに仕舞う。


春田くんが私に何を伝えたかったのかわからないまま時間は進んで昼休み。私はお昼ご飯が入っている鞄とギターを持って、いつものように今日も人がいない屋上へ来た。


この開放感、大好きだ。空も綺麗に見えるし。意外と屋上は他の生徒も来ない、そう今までは思っていたのだ。


「ごちそうさま。」


お昼を食べ終えて、お弁当箱を手提げ鞄の中に入れて。ケースからギターを取り出した。ストラップを肩にかけて髪を整えてからピックを持って、弦を弾こうとしたら。


「あ、いたいた!穂川さーん!」


屋上が開いたドアを見ると春田くんと柳くんだった。どうやら、春田くんに懐かれてしまったらしい。


もう気にせずに弾いてしまえと思い、弦をギュインとグリッチサンドを弾いた。やろうとしてる時に話しかけてきた、キミが悪い。音楽の情熱は、キミたち負けない私は自分が作ったオリジナル曲を演奏する。


「ギラギラと眩しい太陽、あんなに輝いてて、暑くて存在感があるのにー!」


この瞬間から私はあの太陽みたいに眩しいくらい輝いて、あの瞬間のように心が熱くなって、高い遠い青空のように自由に歌って、詩や曲を作るんだ。


ーーー君たちのバンドは、どうなの?


「春田の言う通りだったんだな。穂川さんがギターやっているって昨日の話。」


「だろう。凄いよな。」


「これはなかなか難しいんじゃないか。穂川さんを勧誘するのわ。」


ここから、私のバンドライフが変わるとは思ってもいなかった。


……To be continued

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