六
比叡山に到着後、カヤトとうちは新田義貞軍から離れ比叡山の帝の周辺警護の任務に就くことになった。比叡山は軍勢が入ってこれないという理由でうちもカヤトと交代で周辺警護の任務に就いた。
そんなある日のこと。
帝の居る建物に続く道に見慣れぬ二人の男の影をうちは発見した。カヤトに報告してから二人で追えばいいのに、うちは一人でその二人の行動を監視していた。初めて任された任務でうちは浮かれていたのだ。二人以外に見慣れぬ男が他にもいたことなど考えられないほどに。うちは後頭部に鈍い激痛を感じた瞬間、意識を失った。
肩を揺すられる感覚でうちは目覚めた。辺りはすっかり真っ暗になっていた。
「サチ、どうした?」
カヤトの心配そうな声にうちは少し安心した。
「この道を見慣れぬ男が二人歩いていたので監視してたらガンって⋯⋯」
「わかった。次からはオレに声をかけろ。頭のケガは治しておいた」
頭のケガ?
うちは咄嗟に後頭部を触るもコブさえ見つからない。うちが不思議そうな顔をしてたらカヤトが例の不思議な刀を指差す。
「秘術があるんだよ」
カヤトはそう言って苦笑いをする。そんなことがあったので翌日から二人で周辺警護をすることになった。
その三日後、また例の二人組が帝の居る建物に続く山道を歩いていくのを発見する。
「カヤト、この間の二人組だよ」
「とりあえずこのまま行かせよう。即死でなければ
カヤトの言葉にうちは首を横に振る。
「て、て、天皇陛下でしょ。そんなんでいいの?」
「てんのうへいかって何だ?」
天皇陛下って通じないの?
「帝でしょ。それで大丈夫なの?」
「たかが帝だろ。どうとでもなるだろ」
いやいや、もう価値観の違いにめまいがするんですけど⋯⋯。
うちらは二人組を尾行する。すると、背後で物音がしたので振り向くと、カヤトが見知らぬ男を後ろ手に縛り上げている。
「どうしたの? カヤト」
うちの言葉をシカトして、縛り上げた男にカヤトは刀の切っ先を向ける。
「お主の命に興味はない。名前だけ聞いておこうか」
「お主こんなことしてただで済むと思うのか?」
逆行転生した女と式神にはそんな脅しは効かないと思うが⋯⋯。
「そうか。では、まず右腕から」
カヤトはそう言ってその男の右肩に刀を突き刺しそのまま刀を持つ手に力を入れてその男の肩を切り裂く勢いだ。男が激痛に悲鳴あげ苦痛に顔を歪ませている。
「某は親王の配下だ。こんなことしてただで⋯⋯」
男の言葉が終わらぬ内にカヤトの刀は男の右腕を切り落とした。
「オレたちが帝や武家の配下に見えるか? わかったよ。名前は勘弁してやる。ここに何をしにきた?」
男が黙り込でいると今度は男の首筋にカヤトは刀を突き刺した。
突き刺した?
って、普通こういうのは首筋に当てるだけでしょ。
首からも血が出てるんですけど。
鬼。
この男、鬼に違いない。
うちがカヤトの凶行に閉口していると男は口を開いた。
「帝が親王に三種の神器を引き渡すんで迎えにきただけだよ⋯⋯」
「それは帝のご意思か?」
カヤトの言葉に男は首を縦に振る。首を縦に振った勢いでカヤトの刀が男の首筋に食い込んでいき男は絶叫する。
「サチ、急ぎ東坂本の新田様に伝えてこい」
「なんて?」
「帝が裏切って足利に降った。急ぎ比叡山にと。時間は止めておく。さっさと行け」
カヤトはそう言って例の不思議な刀を抜く。景色はアナログの世界に変わっていく。そのアナログの世界をうちは東坂本の新田義貞の本陣に向かって走っていった。
アイツ、ヤバいやつだ。
ヤバい。
ヤバい。
ヤバい。
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