五
オレの今回の任務は三年後の織田軍の総攻撃の際に避難する場所を確保することである。とりあえずオレは遠江の国に向かっている。徳川家の重臣である服部半蔵をまずは頼るべきというのが郷士衆の一致した意見である。オレ自身は織田家の同盟国に頼るのはどうかと思うが……。
「カヤト、カヤト、どこ行くのよ? お伊勢さんに行くって言ってたでしょ」
雪乃が苛立っている。
「お前、お伊勢さんでたっぷり食ったろ。それ以上食ったら豚になるぞ。ブーブー」
「ああ~〜、言ったな。あたしは火炎使いだから大丈夫なんですぅ」
「火炎使いがブーブーにならんなんて聞いたことはないがね」
「ブーブー言うな」
やがて、オレたちは浜松城下に到着して、雪乃を宿屋に残してオレは浜松城へと入っていった。服部半蔵と会う予定であったが、その前に本多平八郎というお偉いさんと謁見することになった。
「そなたが伊賀から使いの者か。よい、頭を上げよ」
「某は伊賀下忍のカヤトと申します。服部様への書状を百地様よりお預かりしております」
「百地殿か。書状は直接半蔵に渡せ。実はな。そなたには別の用事があるのだ」
「某に?」
「ワシは入城の際に帯刀を許してはいないといえばわかるか?」
「
本多平八郎はオレの言葉を最後まで聞かずに口を開く。
「ほう、それは
オレは頷き、
「なんじゃ。掴めんぞ。おい、カヤトどうにかせい」
「
「そういうことか。しかし、触れることが出来ぬのに何を斬るのか?」
「異形の鬼にございます」
オレの言葉に本多平八郎は目を見開く。
「異形の鬼とは……。そなた見たことがあるのか?」
「一度だけございます。某の倍ほどの身の丈はございました」
「それでそれで」
まるで童のようにオレの話に聞き入る本多平八郎。
「一度しか会敵しておりませぬ故、正しき情報かどうかはわかりませぬ」
「それでもよい。角はあったか?」
本当に童のようだ。
「昨年、織田軍の……。申し訳ございませぬ。そういえば織田家とは盟約を……」
「そんなことはどうでもいい。角はあったか?」
「角はございませんでした。ただ、すべてが墨絵の中にあるような状態だったので、某が見逃したのかもしれませぬ」
百地様の許可なく、これ以上は喋るわけにはいかぬ。
「墨絵の中とは?」
「わかりませぬ。ただ、すべてが止まり動いているのは某と異形の鬼だけということ以外は」
「そうか……。わかった。半蔵のところにいくがいい」
そこでオレは本多平八郎とは別れた。
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