双翼のシックザール

金賀 治武峯

プロローグ

「我が誇り高き王国民諸君!余こそが国王シュトルズ三世である。今日、余がこうして国民諸君にラジオで語りかけているのは、つい先程喜ばしい知らせが伝えられたからだ!」


部屋の中心に置かれたラジオから、いつか小さなころに聞いた、国王陛下の重々しい声が響く。

俺達第288航空中隊は、続く言葉を聞き漏らすまいと、懸命に耳を傾けた。誰かがゴクリと唾を飲み込む音がした。


「我が国の宿敵、スランツェを含む共同陣営が降伏した!余はここに、第二次世界大戦の終結を宣言する!」


一瞬の静寂。

俺は、隣にいる、なんだかんだで初期から共に生き抜いてきた、ジュドーの顔を見た。奴は鳩が豆鉄砲をくらったような顔をしていた。が、きっと俺もそんな顔をしていたのだろう。


次の瞬間、俺はジュドーと抱き合い、歓喜の雄叫びを上げた。

「バンザアアアアアアイ!!」

「うおおおおおお!勝った!俺達は勝ったんだよおお!!」

「うわあああああああ!母ちゃああん!俺、生きたよおおおお!」


涙を流す者。神や王に祈りと感謝を捧げる者。田舎の家族に伝えようと、慌ててペンをとる者。

俺も例外ではない。泣き叫びながら、それでも懸命に万歳を叫び続けた。


戦争は、終わった。

もし今、何かを願うのなら…


もう一度、空へ。


平和になった空を、飛びたい。


まるで鳥のように、自由に空を飛ぶのだ…

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