ブロッサムの空に
わたぬき れおん/四月一日 獅音
ブロッサムの空に
へえ、アンドール出身だったんだ。
私はたまたま授業で習った内戦の、その司令官につい仲間意識を覚えて。
「いいな、ルーランの地元はスー=コッティいるじゃん。会った事ある? 会った事ある??」
「確かにそれは誇り高き地元の大自慢だよ。いろいろ言われてるけどうちでは大人気だもん。でも残念ながら会ったことなんてありませーん、あんな大女優どこで見かけられるって言うのさ」
「だよねー……。いいなあ、でも地元にそんな人いるなんてさ! うちにいるのなんかやたら元気なおっちゃんと鳥ぐらいだよ」
「いいじゃん元気なおっちゃん! うちなんか声大きいおばちゃんしかいないよ」
「おばちゃんの方がいい! 男ばっかりだようち。ってかリンどうした? ぼーっとしてさ」
「ん? あ、ごめん、有名人かーって思ってさ」
「有名人? いた? 近所にいた? あ、そういえば」
「そこで止めないでよ、なになに?」
「重大ではないけどさ? さっきの授業で出てきた人アンドール出身だったなと」
「ああ、あ、そうじゃん。リンの地元だ!」
「そうそう、それでちょっと考えててさ」
「何を?」
「どんな人だったか? とか?」
そう、別に歴史が好きなわけでも、かっこよさそうな写真を見たからでもなく、ただ少し気になって。
というか理由はあるか。先生がその人大好きで。その人のこれまたファンがその昔に色々取材したから記録があるって。他の人と比べても統率力があったとかなんとか。まあ、ルーラン達と遊んだり部活以外にはやることもないしちょっと調べてみようかと思ってね。だって、ほら、ちょうど課題が出てるし。
*
その日から、リンは課題の消化にもちょうどいいと彼のことを調べ始めた。
まずは手始めにと図書館に。
ここブロッサムは歴史が浅くもなく深くもなく、ある程度の年数を建国してから経ている。また、基本的には近隣・諸外国との関係も良く戦争をしてきた経験はほとんどない。そのため、体制も変わる必要に迫られることはなく大きな反乱・内戦・革命なども行われることも同様にほとんどなかった。
「革命ね、何革命なんだろ、結局よくわからなかったから、とりあえず 検索:ブロッサム 革命 と。お? 出てきた」
そのため、このように簡単な検索で出てくるほどにその革命については有名だ。
国としても、長らく続いた体制がゆるがされ、変革を試み実行・成功させたこの革命を大きな事柄として残していく方針だ。
*
検索結果一覧、と。『ブロッサム 革命』お、でたでた。
こんなにすんなり出てくるぐらい有名だったんだ。今まで知らなかったのにな。これ一冊でも調べるのには十分大丈夫そうな感じがする。まずはいったん概要どんな感じだったのかを調べて、あの人のことが載ってなかったらまた探そう。
んー、だいぶん読んだけど、概要しか載ってないなあ。せっかくならあの司令官の話も一緒に調べて書きたいんだけど。とりあえずまとめてからあの人のを増やす感じでいいか。
「ねえリン、課題やった? 進んでる?」
「それ聞いてくる時は仲間集めでしょ、ミリ。残念、いいのがあったからいつもより進んでるよ」
「嘘! リンの裏切り者ー! 何について書いてるのー!」
「裏切り者ってそんな進んでないの? 私のが終わったら手伝うよ。私はあの革命のやつで書いてるよ、ほら地元が一緒の」
「あ、いたね、いた! そっかあ、確かに地元だとつながりとかもあるから進めやすそうだね。え、もしかして! 終わりそうとか!?」
「さすがにまだだよ、提出まで一カ月あるしね。でも概要は書けたかも、肝心のその人に絞った資料は無くてさ。全然ないの」
「誰かに絞ったのはなさそう、な気もする!
え、今日一緒に図書館いかない? 題材探しからだから私もなにか見つけたい! ルーランも誘おう!」
「そこから!? まあ、いいけど。私の方が見つかったらすぐそっち手伝うよ。ルーラン今週は確か部活動の個人練習がしたいから部屋にこもるって言ってたような、同室の子と同じ部に入ってるから集中できるって。って、そのルーランは今どこにいるの?」
「ありがとう!! リンは神様だ! え、ルーラン用事があるんだ。あそこの部はいっつも大変そうだね、楽しそうだからいいけどね! 今度誘おうね! 今はね、次の授業がグレイ先生の生物だから物運び係だって」
「うん、誘おう。みんな提出できないと遊べないもんね。あー、グレイ先生か。それは仕方ないね、あの人は御年が御年だし」
「なんか、かわいいよね! 優しいし!」
「かわいいはちょっとわかんないけど、温厚な人だよね」
「じゃあ放課後は図書館ね!」
放課後、図書館にて
「んー、やっぱり私のは全然ないね、見つけ方もわからないし」
「そっか、リンのないのかあ。ん? ね、イン先生に聞けばいいんじゃない? 大好きだよね、その探してる人のこと」
「確かに。一番早い方法忘れてたね、聞いてくるからミリは自分の探しておいて?」
「はーい!」
そうだよね、一番身近な人に聞くのを忘れてたよね。あの人は結構徘徊してるから職員室にいるといいけど。
「イン先生はいらっしゃいますか?」
「あら授業について質問? 関心ですね、アン=リンさん」
「そんなところです、先生にも聞きたいことがあるから今度聞きに来ても?」
「もちろんですよ。そして、イン先生ですが今はいらっしゃいませんね。今日は天気がいいので庭にいらっしゃるかもしれません」
「やっぱりいなかったか……、ありがとうございます。探してみます」
「お戻りになったら、あなたが探していたとお伝えしましょうか?」
「いえ、大丈夫です。大急ぎってわけでもないので。お気遣いありがとうございます、失礼します」
職員室を出てから西へ少しと北へ少し。この寄宿学校には庭がある。国に三つある寄宿学校のうち、学力・品のレベルは中程度。しかしその代わりに大きな敷地と伴った施設を兼ね備えており、それを求めて選ぶ生徒もいるくらいだ。
中でも様々な植物が育ち広々とした庭は人気が高い。宿舎に居づらくなった生徒や植物が大好きな生徒が良く訪れる。また、生徒だけでなく教師もちょくちょくベンチに座っている様子は見られていて、学校全体に愛されている。
リンが探す教師のインもそのまた一人で、敷地のいろんなところをお休みスポットとしている彼の目撃例が多いのはこの庭だ。
そして今のこの時間にも彼はやっぱりここに居て、心地よい天気を嬉しそうに味わい鼻歌を歌っていた。
「イン先生」
「リンさん、どうされましたか?」
「少しお伺いしたいことがあって」
「はい、いいですよ。なんですか? あ、せっかくなのでこのサンドイッチ食べてみてください、とっても美味しかったのでおすすめです」
「前に授業で教えていただいた司令官のことです。サンドイッチ、美味しそうですね。でも今はさっき軽食をつまんだばかりなのでお腹が空いていなくて。良ければお店を教えてください」
「! 司令官って、彼のことかな! 革命のお話しの彼? の前に、そっか。確かにリンさんにだけあげても良くないしね、実はこれ食堂で買っただけなんだよ、でも僕は多分これが一番おいしいと思うなー。お友達にも教えてあげてね!」
「そうです、その司令官。そうなんですね、食堂に絶賛のサンドイッチがあるなんて知らなかったです、今度みんなと一緒に食べてみますね」
「ぜひそうしてみて!よかったらまた感想教えてね! そうそう、それにしても唐突だね、どうして彼のことが知りたいの?」
「今、二か月に一度の課題のタイミングじゃないですか。私と同郷なんです、その方。せっかくなら調べてみようかと思って」
「そういうことだったんだね、ということはリンさんもアンドール出身ということかな? 同郷なんて羨ましいな」
「そうなんです、それで彼に関する資料を図書館で探していたんですけど、概要を表した書籍がいくつか見つけられただけで。どんな人だったかとか載っているものが見つけられなくて」
「確かに個人的な資料は元から探すのが難しいよね。それに彼の資料は小説仕立てになっているものもあるから余計に探すのが難しいかもしれないね、見つけられないのもよくわかるよ。案内しようか?」
「お時間があるならぜひ。場所を見つけられなくてもう一度尋ねるのも効率が良くないので」
「それは確かにそうだね、十分くらいなんだけど職員室に行く用事があるから先に図書館に行っていてくれるかな?」
有力な情報を得ることができたリンはさっそくミリが待つ図書館に足を向けた。誰かといることが好きなミリはきっと遅いとぷりぷりしているころだろうか。
想像の通りご機嫌ななめさんなミリにごめんねとおいしいサンドイッチ情報を伝えて、リンはイン先生を待つことにした。
「お待たせしました、ミリさんも一緒だったんですね」
「はい、課題の資料探しを一緒にしようと話していて」
「そうですか、お二人とも偉いですね、感心です」
「では、案内をお願いしても?」
「ええ、それでは行きましょうか」
案内されてみると、リンが全く自分では探していない棚で、それは見つかるはずもないなと思った。でも検索には出ていたような気もして、必要ないと見なかった部分だったことには少し後悔。でもサンドイッチ情報が得られたからいいかなんて思いながら。
そんなことを考えながら案内してくれたイン先生に挨拶をして、リンは図書館を後にした。
せっかく資料を手に入れられて少しワクワクしていたリンは、興味のある話題をみつけたというミリに安心しながらカフェテリアに向かった。少しざわざわした雰囲気の方が意外と読書には良い。ミリは今日の仕事はもう終わったと嬉しそうで、自室に戻るらしい。
*
紹介してもらった本は二冊。前後編ものの小説だった。少し実際よりも脚色はあるそうだが、件の彼と知り合いだった人が実際の彼を元にして書いたらしくイン先生いわく結構実物に近いらしいよと言っていた。なぜ確信めいた感じで言っていたのかはよくわからないけれど。
読んだ後に思った。優しい人だったんだろうなあ。実際にはこれは革命で、訓練もしていくっていう中にいろんなこともあったのは思うけど。みんなに慕われているような感じがしたし、革命が終わった後にも元戦闘員の人たちとお酒を呑んだり飲み会をしたりしているみたいだし。
でも正直この人が司令官に選ばれて、なぜそれだけ強かったのかはよくわからなかったな。あんなにファンのイン先生が紹介してくれたのがこの二冊だったから、きっと他に資料はないのかもしれないけど。それは本当に名もない英雄だね。
まあでも、これで課題はもう大丈夫かな。革命の概要とアンドールについて、それから小説をもとにどういう人か紐解いたって感じで書けば、うん大丈夫だ。ミリのを手伝ってあげないとな、そういえば練習してるルーランは大丈夫かな、頑張りすぎるところがあるからな。
「リン、美味しいサンドイッチ知ってるんだってー? 私にも教えてよー」
「おはようルーラン。いいよ、でもその前に先に髪の毛整えてこようか、元気だよ今日」
「そうなのよ、さっき起きたばっかりなの。昨日盛り上がって結構深夜までやっちゃったから眠たくって。急いで梳かして準備していくから今日は先にいっててー」
「わかった、遅れないようにね。サンドイッチは食堂らしいから今日行ってみよっか」
「いいねー。じゃ後でー」
「はーい」
教室に行くと、ミリが熱心に何かをしていた。あ、気づいた。
「リン! おはよう! 聞いてよー!」
「どうしたの?」
リンが話を聞くと、昨日自室に戻ったあとやる気はなかったはずなのに借りてきた本をしっかり読んでしまって、その上おおまかに課題が終わったそうだ。エンジンがかかるのが遅いミリは、それでも一度始めれば集中力がすごいので、リンは安心と感心をしていた。
そんな話を二人がして、ルーランも朝礼にはしっかり間に合って、そんなこんなで今日も寄宿学校での一日が始まる。
四限目が終わって食堂に向かって、ちょうど目的のサンドイッチを三人とも手に入れられたその時、イン先生も食堂に入って来た。彼は現在独身で自炊はしないとのことでよく食堂で目撃されている。今日は国語のダン先生と一緒に来たようだった。
イン先生のおかげで課題をまとめられたので二人とご飯をおいしく食べた後(ちなみに安かったのだが件のサンドイッチは本当に美味しくて三人ともリピーターになることを決意してしまうほどだった)、まだイン先生が食堂にいることを確認したリンはお礼を言いにいくことにした。
「こんにちは、イン先生にダン先生」
「こんにちは、リンさん」
「昨日はありがとうございました。あの本どちらも読んで、課題も終わりそうです」
「何か昨日イン先生に相談したのかい?」
「そうなんです、お食事中にごめんなさい。お二人でお話しされていたところに」
「違うよ、ダン先生トレーニングしに一度部屋に戻るんだよ。僕のこと放って」
「インなんでそんなこと言うんだよ、トレーニングは俺の日課だろー?」
「今日は一緒に夕食たべるって話してたのに忘れてたダンが悪いんだもん」
「だもんって。思い出したし予定もそりゃ他には入れてないからインの好きな料理を作るって話で決まったんだろ。機嫌直してくれよ。というかこんな話を生徒に聞かせちゃ、みっともないか?」
「機嫌は直したけどちょっと意地悪してみただけだよーだ!ごめんね、ダン。それとこんな話を聞かされちゃったリンさん」
「俺はもう行くからちゃんとリンさんの話聞けよ。それではね、リンさん」
「はい、さようなら」
「そうそう、さっきの話の続きだね。ごめんね本当に。もう課題終わりそうなの? すごいね、昨日頑張ったんだ!」
「はい、気になって全部読んでしまいました。優しそうでしっかりしていそうでイン先生がファンになった気持ちも少しわかった気がしました」
「本当!? それは嬉しいなあ! あ、そうだ! グレイ先生に話は聞いた?」
「グレイ先生?」
「あ、昨日僕言わなかったね。グレイ先生は彼のチームというか団というか、そのメンバーの一人だった人でね、きっとお話を聞かせていただけると思うよ」
御年七十四歳のグレイ先生が、実はその昔革命に参加していた戦闘員の一人だった、という衝撃の事実。いつも穏やかで優しく控えめな先生の顔を思い出しながら、リンは放課後にイン先生と話を聞きにいくことにした。もう一度考えてもやっぱり衝撃の事実が過ぎていて。実際に革命に参加した人がこの学校で先生をしていてる、しかも自分も知っている人だということに実感の湧かなさを感じながら、とりあえず今日の授業を終えた。二人にバイバイまた明日ねと挨拶をすると、さっそくグレイ先生の元へ向かった。
疑ってはいなかったリンだが、実際にグレイ先生から事実だと告げられるとなんとも言えない気持ちになった。
「シレイさんのことですね、もう何十年も前のことですが」
課題に彼のことを取り上げようとしていると伝えるとグレイ先生は少し驚いていた。彼はそこまで有名な人ではない。しかしリンがアンドール出身だと伝えると少し納得したような様子を見せて、彼についてのエピソードをいくつか教えてくれた。
旅が好きな人で革命の前には船でいろんな島や国を訪れていたこと、過度には干渉しないけれど、もめごとや何かあるとしっかり話を聞いてくれたこと。選ぶ戦闘員の出自などは気にせず気持ちと実力・チームの輪を過度に乱さないかなどのみで決めていたこと、そしてこの革命でこの国がよりよくなるように願っていたこと。
話をするグレイ先生は穏やかな目で昔を懐かしむような表情で。
話終えると、グレイ先生は彼のことを覚えておいてほしいと締めくくった。この学校には大ファンのイン先生がいるため誰も知らないということはないけれど、残っている資料が少ない中で彼を覚えている人がほとんどいないというのも、少し寂しいようだ。
*
彼のことを本当に知っていて、話をしてくれる人がいるなんて貴重だもんね、今すぐにでもその話をつけ足して完成させよう。
二人の教師に挨拶をしてリンはすぐに自室に戻り、勢いそのままに彼のエピソードや人柄をノートにつけ足していった。ポスターと発表のための下書きを完成させたころには、まだ夕日だった空はすでに濃紺に変わっていた。
そして自分が夕食を食べていないことに気づき、同室のリーサに一緒に食べようかと声をかけた。でももう夜も少し深く、リーサはすでに夕食を終えていて、かつ声をかけても答えてくれなかったよと少しむくれられてしまった。ごめんねと伝えて明日は一緒に食べることを約束した後、急いで料理をして食べて眠りについた。
*
いよいよ今日は全クラスを集めた課題発表の日だ。この寄宿学校では一切の授業をとりやめて、午前午後を通して課題発表を行う日を設けている。一日中行われるので、もちろんあちらこちらで眠たそうな生徒もいる。しかし興味関心は人それぞれということで同じ趣味や夢が同じだという人を見つけるいい機会にもなっているため(実際にここで意気投合してホリデーに出かける生徒もたくさんいる)、開校当時からの伝統行事となっている。
教師としても生徒が最近気になっていることや好きなことを知っておくことができるため、この機会は学校全体で貴重な時間だ。
リンはというと、二週間ほど前にすでに準備を終えて今日の日を迎えていた。緊張はするけれどしっかり調べた彼のことを紹介できるのは少し嬉しい。何といっても彼女と同郷の、少し誇れる人だから。ちなみに部活動で忙しかったルーランもちょうどそのことを題材に準備をしたようで問題はなさそうだ。
「こんにちは、E組のアン=リンです。今日は私の出身アンドールにいた、司令官についてお話をしたいと思います」
緊張で少し噛んでしまったり詰まってしまったりはしたけれど、リンは無事に自分の発表を終えた。みんなの顔はそんなに見えなかったけれど、少し興味のある顔をして聞いてくれていた生徒もいて嬉しくなった。そして、少し見渡した限り一番喜んでいそうなのはイン先生で、本当に好きなんだなあとなんだかもう一度感心してしまった。
「ねえ、さっき司令官の話をしていたのってあなた?」
「はい、そうですよ」
「実はね、私のおじい様もすごく若いころに少し革命に参加していたの。私は誇りだったのだけれど、あまりこの話をされる方がいなくて。お詳しいの?」
「そうだったんですね、それはすごいですね。でも詳しくはないんです。ごめんなさい」
「いいのよ、こちらこそごめんなさい、謝らないで。それにしても、とても詳細だったけれどどなたかにお話をお聞きになったの?」
「実はイン先生が彼の事が大好きだそうで、本を紹介してくれたり彼のことを知っている人と話をさせてくれたりしたんです」
「そうだったの、それはいいわね。課題に関する資料って集まらないことが多いもの、私も完全なものは出来なかったわ」
「でも紹介されていたお菓子、とっても美味しそうだと思いました私」
「あら? 私のお話しを覚えていてくださったの? 嬉しいわ。実は作るのはお母様が一番上手でね、今度の休暇によろしければいらっしゃらないかしら? 私の実家はアグリサだからアンドールと近いのよ」
「ぜひ。たまたま彼の話をして、それであなたとお話しできて嬉しいです。彼がつないでくれた縁かも」
「私こそとっても嬉しいですわ、B組にいるからいつでも話に来て。私もうかがってよろしいかしら?」
「もちろん、明日から楽しみです」
たまたまちょっと気になったところを調べただけで、リンは誇らしい同郷の彼と出会い新しい友人を得た。いつもは少し面倒くさい課題に今回は感謝しないといけないなと思いながら、昨日少し悲しませてしまったリーサが好きな料理はなんだったかと考えながら自室へ向かう。
「誰かが紹介するなら、ちょうど私でよかったね」
*
ハッピーバースデートゥーユー
ハッピーバースデートゥーユー
ハッピーバースデーディアブロッサム
ハッピーバースデートゥーユー
あなたたちがこの国のためにと動いてくれて、私は少なくともいろんな人と出会えて楽しい暮らしをしているから。きっとこの世界は良くなったのだと思う。どこかに今も暮らしている名前は知らない彼に思いが届けばいいなと思いながら、小説の始まりを口ずさんだ。
ブロッサムの空に わたぬき れおん/四月一日 獅音 @leonsverse_
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