第21話 彼女の最後通告?
『へえ、千波ともしちゃったんだ』
「そうなんですよ〜〜。もっと酷い目に遭うかなって思ったから、意外でしたね。えへへ」
あの後、麻衣先輩から電話がかかってきたので、千波にキスされた事まで正直に話してやる。
これで諦めてくれるとも思えないけど、俺達がラブラブなんだって所を見せつけてやれば、いずれは考えを改めてくれるかなーと、淡い期待をしていたんだが、
『千波もいよいよ本気になってきたって事だね。わたしも負けてられないなあ!』
「逆に意気込まないでくださいよ。正直、俺も千波と別れる気ないですからね」
『別れる気はないけど、アイドルと浮気する気はあるんだ? アハハ、欲望に忠実なんだね高俊は。おとなしそうな顔しておいて、結構女好きなんだ』
ハッキリと麻衣先輩に言ってやったつもりなのに、楽しそうにケラケラと笑いながら、そんな事をいっちゃうなんて、この人はどんだけポジティブな思考の持ち主なんねん。
流石にここまで来ると無神経な気もするが、そんな麻衣先輩も段々と好きになってきたなあ。
『んで、次はいつ会える? 今度は本当に2人きりでデートしたいな』
「いやあ、基本そっちの都合に合わせますので。先輩、次の休日はいつなんですか?」
『うーん、一応、毎週水曜日はオフなんだけど、次の水曜日は他のメンバーと遊びに行く約束してんだよね』
「へえ、遊びに行ったりするんですか」
『うん。何、そんなに変? 三人とも仲いいけど』
アイドルグループのメンバーって表向きは仲よくしていても、実際はかなりギスギスしているって噂だし、本当に仲が良いってのなら、むしろ驚きだ。
『まあ、アイドルによるけどね。そんなに仲良しでもないグループも居るには居るし』
「そうなんですね。あんまり知りたくないので、これ以上は聞くの止めておきます」
アイドルの裏事情とか、興味ある人は好きなんだろうけど、俺はあんまり知りたくはないので、イメージを損なわない為にも敢えて深堀はしない事にする。
『じゃあ、また連絡するからー。明日もレッスンあるし、週末も仕事あるから。今度のライブ、ちゃんと見に来てね。んじゃ』
結構、先輩と話し込んでしまったが、麻衣先輩も仕事で大変みたいなので、無理しないでほしいな。
彼女はアイドルとしては純粋と応援したいので、俺が彼女のアイドル活動に傷をつけるような事はしたくないんだけど、麻衣先輩の誘惑には……うん、勝てる自信ないかも。
翌日――
「あ、千波。おはよう」
「おはよう。昨日は麻衣先輩とお楽しみだったみたいだね。どう? 彼女を怒らせてまでする浮気は楽しい?」
朝、学校の最寄り駅を出た後、一足先に来ていた千波に遭遇し、ジト目で睨まれながらも挨拶をされる。
「朝から嫌味を言わないでくれよ。本当に麻衣先輩とは疚しい事は何もしてないんだ」
「あんなのを見せておいて良く言えるね。んで、今度はいつ会う約束をしたのよ? 人気アイドル様に好かれていて、本当隅に置けないね、ウチの彼氏は」
朝っぱらから、こんなキツイ嫌味を言ってくる俺の彼女だが、そのくせ、しっかりと手を繋いでくるのはよくわからないんだよなあ。
「へへ、ゴメン、ゴメン。今度からは誤解されるような行動はしないように出来る限り、気を付けるから」
「どうして絶対にやらないって断言しないのよ。ったく、このクズ彼氏は……」
とブツブツ言いながら、俺の手を引いて、一緒に通学路を歩いていく。
うーん、しっかりと愛されているんだな俺。
調子に乗ってはいけないけど、彼女を悲しませないようにしないとね。
「というわけで、今日からテスト期間で部活が休みになるので、各自しっかり勉強しておくように」
朝のホームルームで担任がそう連絡事項を告げると、もうすぐ中間テストであることに気が付いた。
「ああ、もうそんな時期なんだな」
色々とあって忘れていたけど、しっかりやらないと進路にも響くので点は取っておかないと。
「ちょっといい?」
「何?」
「今度の日曜、暇?」
「暇だけど。もしかして、どっか遊びに行くの?」
休み時間になり、千波が俺の机に来て、今度の週末の予定を聞いてきたので、素直にそう答えると、千波はため息を付いて、
「そうじゃなくて、今度二人で試験勉強しないかって話。嫌ならいいけど、タカちゃんに赤点を取られて、私に泣きつかれても困るし」
「俺、そんなに成績悪いかな……確かに先月の実力テストの点、そんなに良くなかったけど」
まあ、成績には関係のないテストだったが、千波も結果を知っていれば、不安にはなるわな。
やっぱり自分の彼氏が馬鹿だと嫌ですよね。
「じゃあ、日曜に駅前に集合ね。くれぐれも予定を入れないように」
と念を押して自分の席に去っていったが、これは暗に麻衣先輩と会うなって言っているんだよな。
うん、テストが近いんじゃ無理だよね。
なら安心だなと思いつつ、次に先輩に会えるのはいつになるかなって思ってしまったのであった。
日曜日――
「あ、もう来ていたんだ」
千波と約束の時間に待ち合わせ場所に行くと、既に千波が私服姿で待っていた。
春物のブラウスにジーンズというカジュアルな格好だが、千波によく似あっていて、何ていうかモデルみたいだ。
「先輩、来てないよね?」
「今日は仕事あるみたいだし大丈夫だよ。楽しんできてねってとか言っていたくらいだし」
「へえ、また密会したんだ。良いご身分だね」
「会ってないって! メールでそうメッセージを送っただけだって」
今日、千波とテスト勉強する事は麻衣先輩にも言っておいたが、最近は先輩とのやり取りも楽しくて毎日のようにラインや通話をしている。
これくらいなら良いよな……友達の範囲内じゃない。
「タカちゃんに聞くけどさ。あなた、私が他の男子と仲良くして、二人で会っていても私の事、許せる?」
「それは……嫌だな、うん。そんな男は許せんし、千波も許せん」
「でしょう。タカちゃんがやっているのはそれと同じなんだよ。それをリアルで堂々とやられているのが今の私なの。可哀相に思わない?」
「う……ゴメン」
想像しただけで、千波が他の男子と二人きりで会っているなんてのは悪夢としか言いようがないが、仮にそうなったら、俺は千波とは速攻別れちゃうかも。
だって耐えられないって……前にも経験あるしさ。
「もしそうなったら、私と交際続けられる?」
「無理」
「ふつうはそうだよね。じゃあ、麻衣先輩との浮気を理由に私が別れてくれって言っても文句言えないよね?」
「そ、それは……ゴメン、本当に悪かったから」
まるで最後通告のように突き放した口調で千波がそう言うと、血の気が引いてしまい、彼女にしがみついて謝り倒す。
やば、遂に千波も我慢の限界に……。
「わかればよろしい。でも、別れるつもりないから、安心して。もしそんなことをして先輩を喜ばせるだけだし」
「あ、ありがたき幸せ~~……」
「軽く言うんじゃないの。ほら、行くよ。全くダメ彼氏なんだから。もう麻衣先輩と浮気しないって約束出来るよね?」
「は、はい。もししたら……」
「乱取りの練習にでも付き合ってもらおうかな。骨の一本は覚悟しておきなさい」
「ああ、そのくらいで良いんだ。いいよ、付き合うからまた麻衣先輩と会うね」
「そういう話をしているんじゃないの! ああ、もう本当、人の話を聞いてないバカだよね、あんたは!」
と、腕にがっしりとしがみついて、呆れながら怒鳴るが、浮気しても別れないってなら、俺もますます甘えるぞ。
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