「アンナなら大丈夫。きっと大丈夫。だから店も名も――受け継ぎなさい」

『アンナの魔法よろず屋』
灰都の裏通りにある寂れた魔道具店だ。

店を守る主の名は、「アンナ」。うら若き乙女である。

だが、彼女が本当に守っているのは祖母の名声――すなわち「老婆のアンナ」の名前なのだ。

「まだ年若い娘に魔道具の真贋が見抜けるものか」
「頼りない」
「かつての老婆アンナならともかく」

決断した彼女の仕事は早かった。
魔道具を使い、祖母の姿に瓜二つ。
昼は「老婆のアンナ」として客を迎え、夜は「若きアンナ」として過ごす二重生活だ。

そんな折、彼女の下を1人の剣士が訪れた。
彼の名はルーカス。年不相応に落ち着きはらっている。

「鑑定をお願いしたいが」

ルーカスの動きが一瞬止まり、笑みを浮かべて続けた。

「……なるほど、話が早く済みそうだ」

その瞬間、アンナの指輪が赤く光った。
この先の運命を告げるかのように――。

これは、いわくつきの魔道具を巡るヒューマンダークファンタジー。
「いらっしゃいませ。2人の『アンナの魔法よろず屋』へようこそ」

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