ハン:「セックス反対党」の謎!!!
立花 優
第1話 新党誕生
★ 題名の「ハン」とは、『セックス反対党』のハンでもあるし、その政党自体に反対するハンでもあり、警視庁「別班」のハンをも意味するのである。
この話自体は、近未来を描く完全なフィクションである。だが、そのファイクションがもうそこまで来ているかも知れない事を付記してこの物語りを、投稿する(作者:注)。
時は、西暦202○年代の末。
この頃、日本人の所得格差は、各種の要因が重なり、異常な程に差がついていた。
超一流企業に就職できた超一流大学卒の新卒の学生らの初任給は、何と月額50万円にまで達していた。
しかし、聞いた事も無い大学卒業生らは、そう言う超一流企業には、就職等は絶対に出来なかったのだ。
例え、40歳を過ぎていても、月収20万円貰えればオンの字だったのである。
だから、いつまで待っても正職員になれない者、二流・三流企業にしか就職出来なかった者達は、例えばコンビニ店員、宅配の分配業務をも兼務し、昼夜問わず働いて、やっとの事で、この物価高の中で生活していたのである。
だが、この為に、特に結婚したくても出来無い若者達が急増。
更に、追い打ちをかけるように、日本の合計特殊出生率は、とうに1.0を下回っていた。
性欲を持て余している若者の男性達が、それでは一生に一度は風俗店にでも行って発散しようと思っても、歌舞伎町のソープランドの料金は、どんなに最低店でも一回10万円以上になっていた。
結局、一生涯アレをする事も知らずに、朽ちて死んで行く事になってしまうのだった。
やがて、性欲を持て余した一部の若者らによって、かっての「強姦」、現在で言う「不同意性交罪」が、全国で急激に多発するようになって行った。
最初は、東北の一地方からスタートしたこの流れは、超巨大な津波のように、遂には東京都にまで、あっという間に伝播して来たのだ。
で、先程の、西暦202○年代の末頃、遂に、東京都渋谷のスクランブル交差点で、驚愕の事件が起きる事になる。
丁度、ホコ天の開催期間中の事だった。
見た目が可愛い女子高生が、通りすがりの若者に、白昼堂々、多くの衆人環視の眼前で、道端に無理矢理に引き倒され、下着も無理矢理脱がされ、不同意性交されたのだ。
即挿入だった。
突っ込んで、突っ込んで、突っ込まれ続けた。
だが、誰もが皆、自分の日々の窮乏生活に追われており、大声で助けを呼ぶ、一人の女子高生を尻目に、全員が素知らぬ顔で素通りして行ったのだ。
彼女の大きな悲鳴は、しかしここで、更なる悲劇を助長する事になる。
その彼女の絶叫にもかかわらず、誰一人として助けに行かない現状を見て、密に蜂が群がるように、今度は、更に若者らが十数人が一斉に襲い始めたのだ。
遂に、彼女の絶叫は「嬌声」に変貌した。
彼女は、とうとう「狂った」のである。
火事場の馬鹿力か、数人の男性の若者らを跳ね飛ばすと、そのまま、ホコ天を無視して突破し、車道にまで急に飛び出て、丁度スピードを出して走って来た大型トラックに、自ら突進して行ったのだ。
その女子高生は、そのまま、即死。
だが、ここでただ一人のみ、この状況を、高性能スマホで冷徹に撮影していた人間がいたのである。
大谷純一郎である。
この衝撃の事件から1週間後、彼:大谷純一郎は、勤務していた超一流企業を自ら辞め、政治の世界に乗り出したのだ。
先ずは、SNSから、ホトンド寝ずに近い状態で、毎日毎日、発信を1日中続けた。
遂には、生成AIまで活用して、更なる複製の動画の発信をも猛烈に続けたのだ。
また、賛同者からの資金と、会社を辞めた時に貰った多額の退職金を、MBAを取得していた事もあり投資運用に廻していた。
で、わずか1年後には、手持ち資金は、十数億円にまでに達していた。
この資金を元手にして、彼は、既に政治団体を立ち上げていたのだ。まず任意団体としてスタートした。その後、要件を満たせば法人格を取得する計画だったのだ。
その政治団体の旗揚げの日の記念すべき、第一声は、丁度1年前、あの驚愕の事件のあった、東京都渋谷のあの場所だったのだ。当該、政党の渋谷事務所の前でもある。
大谷純一郎の第一声は、次の通りだった。
「聞け!
全日本中の人々よ。若者らよ。
この私は、ここに『セックス反対党』の立ち上げを宣言する!」
だが、これに対し、最初にソレを聞いた一部の一般聴衆が、最初は猛烈な抗議をした。
「あんたは、何を馬鹿な事を言っているんだ。
血迷っているのか!
この日本の少子化問題は、今後、どうなるんだ?」
「そうだ、そうだ、合計特殊出生率は、とうに、1.0を下回っているんだぞ!」
との猛烈なヤジが、飛ぶ。
「五月蠅(うるさ)い、黙れ!」と、大谷純一郎は一喝した。
「それだったら、この画像を、見ろ!」と、大谷純一郎は、宣伝カーの真横に大型の液晶テレビを急遽吊り下げ、そこで、あの渋谷のスクランブル交差点で、丁度1年前に若者に強姦されている、あの女子高生の録画映像を流し始めた。
可愛い女子高生が、一人の男性に、無茶苦茶に強姦されているものの、直ぐ真横を通っている誰の一人も助けに行かなかったのである。
突っ込んで、突っ込んで、突っ込みまくられているのにかかわらずだ……。
皆、全く無視して、素通りなのだ。
更に、その後の、十数名の若者らの集団強姦へと、画面は急激に変わって行った。
大谷大谷純一郎は、この日の為に、この大事件の一連の撮影動画を実は今まで一切、SNS等には、UPしていなかったのだ。
「いいか、よく見ろ。これが、今の日本の惨憺たる現状だ。
ここでだが。
この私は、全ての「セックス」に反対だとは言っていない。無論、正式な夫婦や、恋人同士なら、一切文句は言うつもりは無い。
また、かような時代状況だ。生活に困った女性達がパパ活をするにも、また積極的に援助交際するにも、一切反対しない。現在の所得格差の大きさでは、これでは仕方が無いだろうが……。
だが、この異常な現状は、果たしてどうなのだ?
この私ら、日本人は、一体、いつから正義心や義侠心を無くしたのだ!」
だが、既に、この『セックス反対党』の事は、1年前から、事前に、この日本中でのSNS上で、充分過ぎる程に拡散されていたのである。
その名称は、特に若い世代の深層心理には、既に、深く深く浸透していたのだ。
誰かが、
「そうだ、そうだ、そうだ、その通りだ」
「僕は、この政党が選挙にもし出るならば、必ず、1票入れる」
「わ、わ、私もよ……」
「俺、俺もだよ……」
と、既に、Z世代をも超えて新たに出現して来たΩ(オネガ)世代の、熱烈な支持コールが、湧き上がったのだ。
「セックス反対!」
「セックス反対!!」
「セックス反対!!!」
との、一団の声は、巨大なウネリとなり、一夜にして巨大なサイレント・マジョリティーになって行ったのである。
たった一日で、この大谷純一郎の演説部分の動画再生数は、1億回以上に達したのである。
だが、この日のニュースが、次の日のテレビのニュースで流され、元アイドル出身の某コメンテーターが、この『セックス反対党』について、一言のみコメントした。
「『セックス反対党』の言っている事にも一理ありますが、根本的問題は、現代の男性及び女性達の若者達のあまりの貧富差や所得差をどうやって解消するかなのであって、この問題の解消こそが、この少子化問題や、毎日のように起きている連続不同意性交罪が減る最大の政策なのでは無いのですか?」との、実に、素朴な疑問を述べたのだ。
この発言を聞いた、大谷純一郎党首は、この元アイドル・コメンテーターに猛反論したのだ。
「んな事は、もう、充分に、分かっているんや。この私を馬鹿や阿呆と一緒にするな!
よし、いいだろう。1週間以内に、この我が党の大まかなアジェンダ(目標)を発表する。
ソレを読んでから、反論しろよ!」と、そう大反論を開始したのである。
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