47品目 正月の「ぜんざい」
冬休みが終わって、今日から3学期が始まっている。お昼の時間になり、学食で注文したのは『ぜんざい』だ。
3学期初日だけの限定メニュー――。正月だからという理由で提供してくださっているのだろう。
「湯気がほかほかだよ純ちゃん~」
「ああ……温まりそうだ」
とろっとした小豆あんに、お餅が入っている。甘く煮込まれていて、食べてみると思わず頬が緩んでしまった。
「うまぁ~……!」
学食和菓子に悶絶。甘さと温かさで体の芯から満たされた。
「うちじゃお餅はお雑煮で食べたから、ここでぜんざい食べられて良かったよ~」
さと子も餅をうにょーんと伸ばして楽しんでいる。クリスマスの時もピザでやってたなそれ……。
「さと子んとこは雑煮か。人見家では焼き餅とかだったよ」
家庭によって色々な違いがある。また地域によっても、ひと口に「ぜんざい」と言えど様々バリエーションが存在するらしかった。
お餅をごっくんと飲み込んださと子が言う。危ないからよく噛んでから嚥下しようね?
「そいやー先輩から聞いた話なんだけどさ。沖縄では『ぜんざい』っていうと、金時豆の上にかき氷をのっけたやつなんだって~」
「は……。え? き、金時豆の上にかき氷……?」
何だそれは。あったかいんじゃなくて……夏とかに食べる冷たいスイーツってこと?
私が衝撃情報に目を白黒させていると、さと子が追加の説明を施してくれた。
「天文部の先輩がね、修学旅行で沖縄行ってきた帰りに教えてくれたんだよ」
甘く煮た金時豆の上から、かき氷をガリガリとかける。ものによっては白玉が入ることもあるらしく、沖縄夏の風物詩として定着しているとのことだった。
「へえ~……」
すごいな沖縄……。今は冬だから正直あんまり食指が動かなかったけど、暑い季節なら食べてみたい。
そう心に感じたのが顔に出ていたのだろうか、さと子もうんと頷いて私に同意していた。
「うちらも修学旅行で食べようよ。同じ班にならなくてもさ、自由行動の時とかに」
いつかそんな話をしたっけな……。さと子と一緒に観光スポットを巡るという展望……。
(今年で二年生か……)
気づけばこの高校に入学してから、9ヶ月以上もの時が過ぎている――。春になればひと学年上がって、もう二年生になるのだ。
進級のタイミングでは、確かクラス替えがあったはずだ。さと子と一緒の組になれるかな……。
『1月8日 ぜんざい
あっかた和菓子に心もとろとろになりました。二年になったら、沖縄で冷たいのも試してきます!
純 & さと子』
さと子が気合の入った筆跡でノートに刻み込む。「よし!」と快活な声を上げていた。
「おんなじクラスになれるといいね純ちゃん」
「そうだな……」
仮にまた別々の組になってしまったとしても……こうしてさと子と過ごす学食の時間は、変わらず大切にしていきたい。
ノートを元の位置に片したところで、さと子が思いだしたように「あっ!」と口を開いた。
「いっけね! これ言うの忘れてたよ~」
おてんばな仕草で私に向き直る。手を自分の体の後ろで組むようにして、にこっと微笑んでから言った。
「今年もどうぞよろしくね純ちゃん? ……えへへ」
はにかむさと子に、私もいくらか口の端を持ち上げながらで答えた。
「うん……。よろしく」
「あーい」
自然と和やかな気持ちになっていく……。新年一発目の数学の授業を、私は実に朗らかな気分で迎えることができた。
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