第4話 人形さんは感謝を伝えたい
荷物の整理と幽霊さんのイタズラも相まって
お昼過ぎまで寝てしまった私
やば……何もすることないとはいえ
この生活はすぐ直さないとな……
あれ?抱っこして寝たはずの人形がいない
幽霊さんが持って行って隠した?
もう、イタズラ好きだなぁ
部屋を出てみると玄関のど真ん中に立っていた
そこにはダンボールが置いてある
あ、宅配、もしかして受け取ってくれたの!?
……そんなわけないか
サインしなくても受け取れる宅配だったらしく
人形の足元には『ここに置き配しててください』
と丁寧に書かれていた
多分宅配の人も、これを見て置いてくれたのだろう
幽霊さんがわざわざこんなことしてくれるとは思えない
まさか人形がひとりでに……!?
あ、ありえないよね……
ゴトッ!と人形が倒れ、ビクッ!と驚いてしまう
私はすかさずスマホを取りだし
『もう!幽霊さん!いるなら出てきて!』と周りに見えるように出すが
一向に出る気配はない
お昼だから?じゃあこれは……
まさか怪奇現象……!
考えていてもしょうがない
ダンボールと人形を抱えて……重っ!何入ってるの……?
中身を開けると米が大量に入ってた
ど、どうりで……
何とか分けて炊飯器の近くに置いた
恐らくお母さんからだ、いらないって言ったのに
声が出なくなって、高校も行く気が起きず
1人になりたいからこうやって一人暮らししてたのに……
ま、まあ?貰えるものは貰っておくかな?
…あれ?また人形、こんなに髪長かったっけ?
日本人形らしく、おかっぱがかわいいのに
明らかに数センチ伸びてる
まさか成長期!?
いやいや、10年も一緒にいて伸びたことなんてないのにありえない
……事故物件にいるからなのかな、これって
幽霊さんに聞いたら、何かわかるのかな
数時間後…………
【人形がひとりでに動いた?】
ご相談があります、という置き手紙を机に置いたまま夜になると
幽霊さんは何かを察して変な出方をせずに普通に出てきてくれた
『そうなんです!髪も伸びてて!幽霊さん、何か知りませんか?』
【そんな、怪奇現象でもあるまいし。ありえん】
目の前で怪奇現象その者がいるのに……?
このツッコミはしない方がいいか
幽霊さんは人形をプカプカ浮かせてじっくり眺める
【……そういえばお前、これよく大事にしているよな】
『もちろん!子供の頃からの大切な相棒ですよ!』
【人形は、愛情を与えられ続けると意思を持つ、という伝承を知っているか?】
なんか聞いたことある
超常現象か何かの類だし、信じてはいないけど
もしかしたら、と思い
髪をとかしたり、良く撫でたりハグしたりしてみてる
【その現象もあるし、私がいることによって、不思議な力が宿り始めてるかもしれないな】
『もしかしたら本当に動くかもしれないってこと!?』
【可能性はゼロじゃない…ん?今この人形動かなかったか?】
動いた……?
私達はじっと見つめてると
微かに、でも確かにグググッと腕が動いている
え!すごいすごい!
本当に動いてる!
【喜んでるのか……?普通怖がるだろ、本当に変なやつだ】
不気味がってる幽霊さんを尻目に
私はメッセージで『頑張れ人形さん!動け!』とエールを送る
パキパキ!と何か変な音がして
ジタバタと動くようになった!
幽霊さんは【本当に動いた!?】と驚いて地面に落とす
「おぶ!?貴様!もっと優しくおろさんか!」
喋ったあああああ!!!!
私は思わずハグをする
「グエー!ちょ、離さんか柊奈!苦しいぞ!」
柊奈!?柊奈って呼んでるぅ〜〜!
感動のあまり泣いてると
幽霊さんが人形をスっと浮かせて
机に置く
【ほ、本当に喋った!?お前、本当に人形の意思か?】
「そうじゃ!わらわは仁(にん)!柊奈が名付けてくれた名前もあるぞ!」
仁……?
そ、そんな名前、つけたっけ……
あ!初めて貰った時につけた気がする!
そんな前のことも覚えててくれてるなんて……本物だ!
『仁ちゃん!お喋り出来るなんて思ってなかった!』
「わらわも一緒じゃ!お主には伝えたいことが山ほどある」
え、伝えたいこと?
何かな何かな、お礼かな?もしかして大好きとか?
「はっきり言って鬱陶しいのじゃ!」
ピシャッと私は驚きのあまり石化する
「毎日のようにハグをし、髪をとかし、大好きだよって甘い言葉でそそのかしおって!迷惑なのじゃ!」
そ、そんな……風に……思ってたの?
わ、私は良かれと思って……
大好きなのは本当だし……
「あ、でも、幽霊よ!お前には感謝してる!こうやって言葉に出来たのだからな!」
【…待て】
「なんじゃ?」
【お前、本当にそう思ってるか?】
「な、あ。当たり前ではないか!」
【この子の言った通りなら、お前は動ける範囲で、起きないように置き配をしてあげたり、バリエーションのなかった髪を伸ばしてみたりと、まるでこの子の徳をするようなことしかしていない】
た、確かに
今回のこと、幽霊さんがしていないなら
仁ちゃんがしてくれたことになる
感謝していないなら、叩き起すくらいしそうなのに
「そ、そ、それは!お、起こすの可哀想とかたまには違う髪型を結って欲しいとか思っとらん!」
【本音がでたな】
これって……ツンデレ?
『んもう仁ちゃんてばぁ〜ありがと♡』
「貴様のせいでこやつが勘違いしたではないかー!」
【……嬉しそうにしてる癖に何を言ってるのやら】
「嬉しくないわー!!!」
そんなこんなで、新しい家族(?)の仁ちゃんまで動いてくれるようになった
本当に嬉しいな……!
プロフィール
日本人形さん (のちに仁(にん)ちゃんと呼ばれる)
日本人形の見た目まんま 15cmほど
昔から柊奈が大事に持っていた日本人形が
事故物件に来たことにより動けるようになった
戦争していた時代から色んな人に持たれたが
柊奈の手入れや愛情が良すぎて大好きになる
しかし素直になれず、口が悪くなることがある
いわゆるツンデレだが、ツンは10%でデレが90%なことが多い
ちなみに、最初に少し髪を伸ばしてみたときに
すぐに柊奈が気づいてくれたことは物凄く嬉しく思っている
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