第2話 高津柊奈はお喋りがしたい

自分で言うのもなんだけど

中学の時の私は人気者だったと思う

歩けば美人と言われ

喋れば声かわいいと言われ続けた

だから私もみんなに幻滅されないように

優等生を演じ続けた


……そんな時に、居眠り運転で走ってきたトラックにひかれた

体に関しては特に問題はなかったけど

喉の損傷が激しく、呼吸が困難になり

手術をしないと助からなかった

その手術の代償が、声帯をなくすことだった



『なので、声が出せないんです。本当は幽霊さんに声を大にして驚きたいんですけどね』


私の長文説明を

幽霊さんは真面目に読んで

そして泣いていた


【お前……辛かったんだな……分かるぞ。その気持ち】


『あの……幽霊さんは、なんでこんな所に?』


【私は逆だ。何もかもダメで、生きる希望が見いだせず、自殺をした。悔いはなかったが怨霊としてここから離れられなくなったのだ】


『そ、そんな!ダメだなんて!めちゃくちゃ可愛いのに勿体ない!』


右親指だけでうってた文字を

両手に変えて高速でうって見せる

幽霊さんの真っ白な顔は真っ赤に変わった


【な、ななな何を言っている!?私が可愛い!?】


『はい!今まで見てきたアイドルにも引けをとりません!!』


【ふ、フヘヘ……そうかな……じゃない!そうやって私を騙そうたってそうはいかないぞ!】


ほ、本当なのに……

どうしたら本当なのか伝えられるんだろう

よし、ここは言葉責めだ!


『その白髪ボブも似合ってますし!幽霊らしい白装束もちょっとえっちで可愛いですし!何より顔はタイプなんです!』


【な、ななな……わかった!分かったから褒めるのやめて!】


私の褒め言葉にすっかり乙女になっちゃった幽霊さんは

モジモジしながら

【ま、まさかこんなこと……でも私幽霊だし……】と、なにか呟いている

ひとまず、私を呪い殺すなんてことはしなさそうだ


ここまで来たら幽霊さんと仲良くなりたい!

だってこんな美人さんと同居生活なんて凄くない!?


『あの、私、どうしても格安のこの家で一人暮らししたくて、出ていかなくちゃダメですか(๑o̴̶̷᷄﹏o̴̶̷̥᷅๑)』


【……見逃してやってもいい】


『本当ですか!?美人で可愛い幽霊さんと同居だなんて、嬉しいなぁ』


【フヘヘヘ……そんなに褒めても幽霊しか出ないぞ】


『幽霊さんが出てきてくれるなら褒めまくります!』


【そ、そこまではいい!!ひとまず今日は寝ろ!】


『さっき寝ちゃったから寝れるかなぁって……』


【フン、それなら心配はいらない。私が呪って寝かせてやろう(さあビビれ……!)】


『本当ですか!?幽霊さんに呪われるなら本望です!』


【……まさかこいつ相当やばいやつだな…もういい、さっさと寝ろ】


幽霊さんは私に手を向ける

その手のひらを見てるとどんどん眠くなり

いつの間にか寝てしまった……



【わ、私が可愛いなんて……フヘヘ……こいつ、まさか私の事好きなんじゃないか……?なんちゃって……】



プロフィール

高津 柊奈 (たかづ ひな)

高校1年生 身長154センチ

黒髪ロング


中学の時、不慮の事故で声を出せなくなった女の子

誰にでも優しく、どんな子でも仲良くなれたが

声が出せなくなってから引っ込み思案になる

まだ手話を覚えられていないので手記やメールでコミュニケーションを取っている


心霊の類は全く信じていなかったが

幽霊さんなら呪われてもいいと

ちょっと危なめな思考をもっている

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