ゆくひと、くるひと

河風充流

第1話

 あれは何だったのか、いまだに謎は解けない。幼いころの、おぼろげな記憶。

 僕はその人のことを「おじさん」と呼んだ。

 名前は分からなかった。だけど、おじさんというより「おじいちゃん」だったのかもしれないと、あとになって思った。

 それは、単に年齢のことではない。祖父、という意味での呼び方だ。

 僕はその人の姿を見て、声を聞いた。れることはなかったけれど、確かにその存在を認識した。

 けれど、その存在は、どうやらの人には認識されていないようだった。

 幽霊、だったのかもしれない。

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