25 お祭りの奇跡
お祭り当日、先に待ち合わせの場所に来ている俺は市川と中山を待っていた。
本来ならはなびと一緒に来るつもりだったけど、午後一時頃に佐藤と菊池に呼び出されて今は佐藤の家にいる。お祭りが始まる前に女子同士でいろいろ話したいことでもあるらしい。というわけで、夜空を眺めながらぼーっとしていた。
女子たちはともかく、市川と中山はどうして来ないんだろうな。
「ヤァー! 青柳」
「湊」
「おせぇよ!」
学校でしか見たことないからか、おしゃれした二人を見て少し慌てていた。
てか、中山カッコいいな。それに市川も学校いる時と雰囲気が違うし、いつもと同じなのは俺だけか。
「佐藤とお祭りだなんて! 最高じゃねぇか! 俺、ドキドキして寝れなかった!」
「昨日のいびきのせいで俺寝れなかったぞ? 颯太。何言ってるんだ」
「えへっ!」
「てか、湊。今日おしゃれしたな」
「えっ? そうか」
「髪型もそうだし、告白をするならやっぱり今日だよな?」
「そっちも今日告白をするつもりか?」
「俺はそうだけど、颯太はどうだろうな」
「俺はいいよ、まだ時間が必要だからさ」
「そうか」
そのまま俺たちは女子たちが来るまでゲームや恋愛の話をしていた。
やっぱり、男同士でできる話ってこういうことしかないよな。
そして中山は「今日菊池に告白をする」と堂々と俺たちの前で話した。学校にいる時にすでに気づいていたけど、中山の方から先にそれを言うとは思わなかった。上手くいけるはずだから心配しなくてもいいと思う。
「みんな! 待たせてごめんね」
すると、向こうから聞こえてくるはなびの声。手を振る彼女にドキッとする俺だった。
「旭くん! 今日カッコいいね」
「ありがとう。すいも今日可愛いよ、その浴衣似合う」
「ありがと〜」
さりげなくイチャイチャする二人、そしてはなびが俺の手を握る。
じっとこっちを見ているその目は「どー?」って言っているような気がした。
「はなび、可愛い」
「えへへっ、だよね? お母さんが用意してくれたの」
「似合う。やっぱりはなびは何を着ても可愛いね」
「へへっ」
そしてちらっと市川の方を見た時、あっちは何も言ってないように見えた。
そういえばあの二人ちゃんとデートをしたって市川に言われたけど、どうして何も言わないんだろう。
うじうじしている市川の姿を見て、ふと俺のことを思い出した。分かる、あの気持ち。
「てか、今日人多いな」
「そうだよね、みんなと離れないようにゆっくり———。みんなどこ行ったの?」
それから五分くらい歩いた気がするけど、みんなと逸れてしまった。マジか。
ちゃんとついてくると思っていたのに、振り向いたらみんな消えてしまった。
すると、中山が「花火が始まる十分前にここで会おう」と花火大会が行われる場所を写真で送ってくれた。それを見たみんなが「うん」と答える。ということは、今からはなびと二人っきりってこと。
「確かに、ここ人多いよね」
「そうだな、仕方がない。目的は花火だから、その前まで二人っきりの時間を過ごそう」
「目的ははなび!」
なんで自分を指すんだ!?
「違う! そっちじゃない!」
「私じゃないんだ……」
なんで落ち込むんだろう。
まあ、でも今日は告白をしようとしたから別の意味で正解かもしれないな。
どうやってそれを言えばいいのか分からないから今まで迷っているけどぉ。
「わたあめ! 食べたい!」
「あっ、いいよ。はなび、子供の頃にもあれ好きだったよな。懐かしい」
「そう! 中学生になってから来たことないからね、お祭り」
「そうだな……」
三年間、行かなかった。小学生の頃にはよく行ってた気がするけど、懐かしい。
りんご飴を落として泣き出したはなびをいまだに忘れられない。
そしてこの景色は小学生の頃とあまり変わっていなかった。変わったのは俺たちだけ。そのままゆっくりはなびと歩く。
「今日カップルができるかもしれない。湊くん」
「中山のことか」
「そう! すいちゃん今日のためにメイクとか浴衣とかめっちゃ気にしていたからね」
「いいな、二人はいつかそうなると思っていた。どういう関係なのか分からないけど、上手くいってほしい」
「そうだよね? ふふっ」
はなびと話しながら向こうにあるベンチに座った。
それにしても俺も早く告白をしないといけないのに、なんでためらっているんだろう。
「ねえ、聞いて」
「うん?」
「すいちゃんね、いつも楽しそうな顔で中山くんの話をするの。下の名前で呼ぶようになってから楽しいことがたくさん起こってるって。私たちはハグまでしたのに、すいちゃんは下の名前で呼ばれただけでウキウキしているの。可愛くない?」
「そうだな、俺たちは幼馴染だから。あの二人と違ってさりげなく手を繋いだり、ハグしたり———」
「ねえ、湊くんはそれで満足しているの?」
「えっ?」
わたあめを食べるはなびがこっちを見ていた。
それで満足……できるわけないよな。ずっと好きだったからさ。
やっぱり、ドラマの中の主人公みたいに告白をするのは無理かも。いろいろ考えてみたけど、俺にできることは素直に自分の気持ちを伝えることだけ。それで十分だとそう思う。
数日前にはなびが誤解だと言ってくれたあの時みたいに、告白もそんなに難しくないかもしれない。言ったことないから、言うチャンスがなかったから、そういうのが初めてだから怖がっているだけだ。
だから、ためらう必要はない。はなびもずっとそれを待っているはずだから。
「もっと……、もっといいところでロマンチックに言いたかったけどぉ」
「うん?」
「実はもっと早く言いたかったけど、タイミングが……悪かったっていうか」
「うん……」
はなびと目を合わせた。
そして中学生の頃にずっと我慢していたあの言葉を口にする。
「好きだ。付き合ってくれない? はなび」
「おっ……」
なんでびっくりするんだ!? てか、俺が予想していた反応じゃないんだけど。
「あっ……。ちょ、ちょっと待ってね!」
「あっ、うん……」
いつものはなびならすぐ受け入れると思ったけど、なんか違う。
どうしたんだろう、俺から目を逸らして反対側を見ていた。
やっぱり、勘違いをしていたのか? はなびが今までやってきたのはただ反応が面白いからからかっただけか……。しばらく静寂が流れて、俺は下を向いていた。
まずい。
「あ、あのね!」
すると、はなびが俺の手首を掴む。
「うん」
「それ……、冗談じゃないよね?」
「えっ? これが冗談に聞こえるのか……? てか、こっち見てよ」
「ううぅ……」
そして再び俺と目を合わせた時、はなびの顔が真っ赤になっていた。
そういうの初めて見たかもしれない。マジで、真っ赤になっている。
「えっと……、はなび大丈夫?」
「えっ、うん! ああ……、うん! いきなりそんなことを言うから恥ずかしくなって……」
「いや、この前にキスしよっかとか言ってたくせになんで照れてるんだよぉ! はなび……」
「だって! 付き合ってって言われるとは思わなかったから! 実は今日すいちゃんの恋を応援しにきたから」
「そういうことか」
でも、なぜか答えを聞けない俺だった。告白をしたくせに、そこでビビるなんて。
「じゃあ、行くか……」
「待って! 湊くん」
「うん?」
それはあっという間だった。
座っていたはなびに腕を引っ張られて……、避ける暇もなくそのままキスをした。
唇と唇が……触れた。
「あっ! えっ!? はなび! ちょっと……」
「私の答え! 私の答えはこれ! 分かった?!」
「えっ?」
「わ、私暑くなったからかき氷買ってくるね!」
「えっ!? あっ! うん!」
「待ってて!」
そう言いながらかき氷を買いに行くはなび、俺はその場でじっとしていた。
いきなりすぎて頭の中が真っ白になっている。
……
「うわぁ、青柳……すごい」
「そこで何してるの? 市川くん」
「あっ! いや、なんでも! 佐藤は? えっと、暑くてさ」
「ふーん、あやしいね。何かあった?」
「何も……」
「はい。これ」
「うん。あ、ありがとう」
偶然、二人の告白現場を見てしまった颯太は隣に座る凪沙にビクッとする。
そして固唾を飲む。
「さっきから何?」
「いや……、なんかいいこと起こりそうでさ」
「そう?」
「うん……」
はっきりと言えない颯太だった。
冷たかった幼馴染が俺のことをエロい目で見てくる件 棺 藍子 @hitsugi_san
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