三.始まる殺人事件

 村田と同じ会社で働いている山内と藤原に挨拶をし、私たちは席に戻っていた。

 山内はクールな性格をしていて、あまり人と仲良くする気はなさそう。逆に藤原は笑顔が絶えず、ニコニコと話していた。どうやら村田の彼氏らしい。

「ねえ、瞳さん。なんだか眠くなってきましたね。」

 そう言って美空は手で覆いながらあくびをした後、机にだらっと横たわる。確かに私も少しうとうとしていた気がする。周りを見渡すと、他の客たちはもうすでに眠っていた。村田もスタッフも。

 何かおかしい。

 どうにか起こさなきゃと思ったけれど、なんだか眠く...。


「瞳さん、瞳さん。」

「えっ。」

 眠たい目をこすりながら開けると、美空が私を起こしていた。

「村田さんが!」

 そう言って美空は村田の机を指差した。

 見ると...村田はナイフが刺ったまま死んでいた。

「多分、私たち睡眠ガスで眠らされてたみたいで、その間に殺されたみたいで。でもみんな寝てたし。さっき脈もとったんですけど、動いてなくて。」

 確かに記憶を辿ってみると多分みんな眠っていた。でも犯人は起きていたんだと思う。どうやったのか分からないけど。

「とりあえず警察呼んだ?」

 重い体を頑張って持ち上げ、立ち上がって伸びをした。

「いや、それが電波届かなくて、今大雪が降ってて。」

「えっ、嘘でしょ。」

 私は立ち上がってそばにあった大きなカーテンを開けた。見ると雪でいっぱいだった。ありえない。

 美空が私にちょっと近づいて、耳打ちをした。

「これは瞳さんが解決するしかありませんね。」

 口を尖らせながら、私は美空をじっと見る。美空も私を見返す。

「分かった。はあーやっぱり事件起こるんだね。最悪。」

 ため息を吐きながら後ろを見ると、みんなは静かに椅子に座っていた。

 多分、村田が亡くなったこと、死体を見たこと、犯人がこの中にいるのかいないのか、そんなところでみんなどうしたらいいのか分かってないんだと思う。

 私はとりあえず南のところへ向かう。

「ねえ、流石に遺体があるこの部屋には居られないと思うから、一旦鍵を閉めて違う部屋に移動しましてもいい?」

 南は苦しそうにも、なんとか笑顔を作りながら分かりました、と言い鍵を取りに行った。

 数分後に戻ってきて、私たちは2階の部屋に移動した。

 さっきまでの部屋の鍵は、美空に渡して誰も入れないようにした。マスターキーはないらしい。

 明日、警察が来るまで遺体を置いておくことにしよう。



「ちょっと皆さん聞いてください。」

 美空が部屋に座っているみんなの視線を集める。美空がこっちを向いて、頷いた。次は私...か。

「まず、この事件の犯人はこの中にいる。」

 えっ、と口々に言い始めた。

「はいはい、うるさいうるさい。で、私が今から一人ずつ事情聴取をする。いい?」

 皆が順に頷いた。

「よし、じゃあ美空は監視というか、まあ監視だね。監視のためにここに残ってて。」

「分かりました。」

「ねえ、隣に確か応接間あったよね?」

 スタッフ2人の方に向かって話しかける。

「はい。使って下さっても大丈夫です。」

 小林が答えた。

「分かった、ありがと。じゃあどうしよ、佐藤さん?だっけ先あんたから始めよっ。」

 なんとなく変人から始めたい。

 はーい、と言いながら私たちは部屋の外に出て、別室に移動した。

 ここからが地獄の事情聴取。

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