秘め事

もふもふ

第1話

「秘め事」


誰しも、秘密を抱えている


僕もそうだ。他の人に比べれば、そう大した秘密では無いだろうけど


深夜、裸で寝ている彼女を起こさないように、そっと離れる

よし、起きてない、成功だ


音を立てないように、気付かれないように、服を着て僕は外へ出る


と言っても、他の女性が目当てというわけでは無い


夜中の街は表情が違う

時折、僕はそれが見たくてこっそりと彼女から離れるのだ


それが僕の秘密

大したことは無いって?

僕もそう思うさ


でも、彼女が知ったら恐らくびっくりするだろうから秘密にしているんだ


深呼吸をする


夏の終わりの、蒸し暑くもぬるくなった空気が僕を満たす


昼の熱を残した道路の匂い


草の香り


ささやかに鳴く虫の声


遠くで騒ぐ酔っ払いの声


アテも無く歩き続け、小さな光を見つける


ポツンと自販機があった


ポケットを探ると数枚の小銭


キンキンに冷えたコーラが全身に染み渡る


歩いて火照った体を心地良い炭酸が冷やしてくれる


東の空が白んでいる

鳩の鳴き声が聞こえてきた


もうこんな時間か


彼女が起きる前に帰らないと


足早に家に向かい、音を立てないようにドアを開ける


ドアを閉じると足元に擦り寄る一匹の猫


彼女の家族、名を美樹本俊也という


「よっ」と小声でささやき頭を撫でると彼はうっとりと目を細めた


寝室ではもう一匹の家族、にゃんこ先生が彼女の枕元ですやすやと寝ている


僕も寝ようかな

彼女と合体してから


僕は服を脱ぎ全裸になり、全身に力をこめて深呼吸をする


繰り返すと僕の体は薄ぼんやりと光り、縮んでいく


否、縮んでいくのでは無い

戻っているのだ

現在は仮の姿、大きくなった姿である


そして僕は本来の姿、俗に言う半透明のピラピラに戻る


助走して彼女の頭部に勢い良くぶつかると、ぐにゃりと視界が歪む


そして僕と彼女は合体し、意識が無くなる直前に彼女のうめき声が聞こえたような気がした

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秘め事 もふもふ @mohumohuuuu

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