枯水
君と私の歳月は、後から振り返って、それを俯瞰して眺めてしまうと、ひどく短く、限られたものだった。それがちっともわかっていなかった。君は大病を患っていたけれど、最後の最後まで諦めることをしなかったし、私もその強さに甘え切っていた。だから本当に迂闊で愚かだった。もっと大事なことはいくらでもあったはずなのに、大事なことなんてどれほどに語り合っていけたことだろうか。
「でもね、大事なことってそれほど言葉にして語り合えるものなのかしらね」
そうだなあ。そうかもしれないなあ。
でもさ、それでもややこしい言葉に自分を託していくしかないのかもしれないよね。そこで絶望しちゃって抱きしめ合ったりすることが全てを解決させることかというと、そうでないこともたくさんあるからね。
「さあ、それはどうかなあ」
ほくそ笑む君が見える。その笑顔は間違いなく大事なものそのものだ。それ以外なんて本当にどうでもいいことかもしれない。
「わたしの笑顔がありさえすれば、あなたは特異点に安住し続けられるのかな」
そう、君はそんな意地の悪いことをからかうようにして言う。冗談だとわかっていても、私は一生懸命にその答えを考える。
多分それはノーだよなあ。特異点ってさ、ひたすらに沈んでいく。何かがずっと沈んでいく世界だからねえ。君の笑顔はそこにはない。あるのは誰かのおしきせの笑みと黒ひげの冷笑ばかりだからね。
君は別に聖人なんかじゃない。結構変わっていて、誰でもない自分の難儀さや寂しさ、損を承知で、平気でそう歩く人だけれど、傷つきやすくもあって、弱音も吐けば毒も吐く。
「ひどい言われようだなあ」
そこが大好きなんだ。とことん。岸壁としてさ。いくら海が荒れても荒れても、船が嵐を潜り抜けてやってくることを岸壁としてずっと待っている。嵐の波間の上の、雲と雲とのわだかまりの隙間に光さすような笑顔を、ずっと待っている。
「もう時間切れになっちゃったじゃない。ゲームオーバーだよ」
そんなことはないさ。終わりなんてことはない。たまたま居所世界が別になっているだけで、待つこともできる。そっちの世界に呼ばれれば追いかけにも行く。次の世界でまた巡り合うことだってあるだろう。絶対そうなるわけじゃないかもしれない。でも今こうやって君の声が聞こえ、君に言葉を届けることができる。
「ただの一人合点、思い込みかもしれないよ。そうでなくとも、わたしがそうやってウソをついちゃうかもしれない」
そうだなあ。でもそれは、生きていたって、きっと同じことだからね。言葉を届けるのだって、命がけの飛躍をして、君へならば君への次元へと言葉を飛び越えさせないとならない。しくじることは山のようだけれど、それでもさ。
「来世でまた会えるかな。わたしたち」
来世かもしれない。意表をついて前世かもしれない。どっちだっていい。また巡り合うことができるならば。
「そうだね。あなたは居心地がよかったもの。それは本当に不思議だったわ。わたしにとって男の人は恐怖以外の何物でもなかったけれど、あなたはどうしてかわからないけれど安心できた」
不思議だよなあ。別に私は温和でもなければ包容力が備わっているタイプでもない。
「知ってる」
笑わんでよ。
「でもホントにね、笑うしかないくらい不思議で、よくわからなくて、安らげたのよ。必ずまた会いに行こうと思ったもの」
私もだ。君にいってらっしゃいと言われることが、どんなにしっくりきてうれしかったか。
でも本当に、私自身も不思議でならない。何で私はそんなに君から信頼を勝ち得たのだろうね。私の中の何が君に癒しをもたらせたのだろう。私にもわからない。私はいびつな、圭角のある人間だからね。
「わたしもわりかしそうだよ」
だからかなあ。もちろん、自分でも自分のことなんて知悉して把握しているわけじゃないからね。そう思い込めるようなら人生お気楽だったかもしれないけれどもさ。
「あなたはどこか自分を突き放しているんだよね。それはこじらせたブンガクシュミっていう悪い癖なのかな」
言ってくれるねえ。そうなのかな。そうかもなあ。
自分の境界線、さあ。どこからどこまでが自分であるか、というおはなし。肉体であったりとか、そこにぶら下がっている容姿とか、自分の存在を規定するもの、着ている服みたいな現実のものもあれば、帰属している社会やら、記されている戸籍や住民票みたいな現実に存在していることにせよと突きつけられる制度も自分の輪郭のひとつだよなあ。さらにせせこましく、学歴があり、就職している会社があり、地位職責があり、年収額というドラゴンボールのスカウターの戦闘値みたいなのがあり、転職スカウトがスカウター装着して戦闘力アップの方法をほざいてくる。
「今のわたしは境界線がなくなっちゃった。なくなってみると、どうでもいいことばかりね」
いやあ、君には旅立つ前からそういう感受性があったよ。それで辛い思いを何度も味わったことだろうし、私との歳月の中でも何度かそんなことがあったじゃないか。
「守ってくれたよね」
大したことはできなかったがね。
でもさあ、本当に、そういう輪郭ってハッキリさせるもののくせにひどく曖昧でもあって、どこからどこまでが自分で、どこからどこまでが他人からの借り物、コピペなのかわからない。ものすごく知らないうちに癒着しちゃっているような領域もあるんだよねえ。
話をしたことがあったかな。
私はいわゆる古い街のダウンタウンの生まれなんだ。その古い街には重力が横走りしている。あらゆる秩序の根源、まるで特異点、平面上の特異点だね、そこに古い神社が存在している。その神社に近い方のエリアはカミ、遠い方はシモという。私はシモのほう。シモはシモネタのシモだわね。もっとも、私は品行方正でエレガンスの濃縮還元だから、シモネタの世界での別枠特異点なんだけれどもさ。
「はいはい」
その神社の向こう側、カミの突き抜けた特異点の先はどうだったかというと、
「SFな話ねえ。ワープでもするの?」
いやあ、別のムラだったということなんだけれどね。大したことじゃないでしょ。でもねえ、それ近世の終わりまでの話なんだよ。明治時代になってちょっとしたらムラなんて合併して消えちゃったの。
でもさあ。変なもので、感覚としては存在しているんだよね。特異点と、その向こう側の別の世界っていう感覚がさ。境界線なんて何もない。親やその親、またその親たちがそのまた親から延々と影響を受けて感覚を引き継いでいかないと成立しないんだよ。江戸時代のことよ。マツケンサンバが成敗やってた頃よ。いや実際史学的にはやっているわきゃないんだがさ。でもその感覚があるわけ。それは自分のものではないに決まっているし、でも自分の感覚として存在はしているんだよね。確かにそう感じるもの。ああ、何となくだけど、神社の向こうは別世界って。
私は自分の中にあるものの全部が自分のものとは思えないし、自分の存在の根拠にもできないなあって思っている。そのくせ、他人、先祖なり家族なり、友人知己なり世の中という同時代性なりさ、そういうものが恐ろしく根を張って到底伐採も伐根もできないというのもたくさんある。悪いことにおそらく、地表に露出したぶっとい根をチェーンソーでぶった切ろうとしたら、樹液の代わりに血がぶしゅーになるんじゃないかね。そのくせ、私は私なんだ。
「変なの」
幻滅したかい?
「さあ、どうだろう」
また君は笑った。
ありがとう。その想いでまた君を待ち続け、探し続けることができる。
言っておくけれどこれは正真正銘、間違いなしの、私のオリジナルの私だけの想いなんだからね。
「何焦ってんの」
からかわないでよなあ。でもさあ、どこまでが自分で、どこまでが自分でない自分なのか、そんな思いをぼんやりと抱えながら、若いころに書いた小説があるんだ。
きっかけは、実際に執筆したよりも更にずっと昔、ずっと若いころだったと思う。何と中学生か。私にだって中学の頃というのはあったんだよ。
「かなり浮いてたでしょ」
ヘリウム搭載だったさ。
中学の頃に、何のきっかけだったかねえ、クラスメートたちと自分の先祖の話をしたことがあった。私はお武家さんの家系ではないのだけれども、どうも直接の血のつながりはなく傍系もいいところであるにせよ、系図的には先祖のひとりに代々の庄屋の家に行き当たるようで、
「へえ」
その中でひとり、切腹をした人がいるそうなんだ。それも介錯を頼まず一人で腹を切って、死にきれずに数日苦悶して亡くなったらしい。
「想像すると怖くて辛い話ね」
うん。私もちょっとショックというか、どういう思いだったのかとどうしても想像したよ。だけれども中学の時にそれを話したら、クラスメートに大笑いされてねえ。マヌケなドジっ子みたいに思われたんだろうなあ。
「悔しかった?」
うーん、悔しいとか怒りみたいなのはなかった。先祖を笑われたって激怒するほど、自分と同一視しているわけでもなかったしさ。でも違和感はあった。自分の感じ方とはかなり違うなあって。
その時にさ、かなり違う自分の感覚とやらを説明するのに、その場のアドリブな会話では無理だったんだ。それでうなだれちゃった。
そういうのがくすぶるんだよね。うまく言えないことを、うまく語るにはどうすればって。
そういうことで小説書いていたな。一瞬で感じちゃったけれどもそれをうまく言葉にできないものを、小説にして伝えようとするんだって。そんなことを考えていたよ。若いころの話さ。
若かったなあ。
炒りつけられるような暑天であった。太陽の息吹は嘲笑う熱波であった。草木は萎れるばかりでは収まらなかった。緑を奪われ、命を奪われた。水がなかった。井戸は枯れ、村の溜池もまた干上がっていた。庄屋槙島藤兵衛は暑熱に喘ぎながら干上がった溜池の底をじっと見た。拡張はおろか、保つことも怠りがちであったこれまでの累積が、底に放埓にうねる干からびた泥土によく示されていた。
わかりきったことではあった。お天道様の気まぐれで雨雲を退け続ければ、この程度の溜池ではあっという間に水が足りなくなる。そんなことは算盤を弾くまでもなく自明の理であるのだった。それをやれなかった。
始末をつけねばならぬな。熱波に燻されながら、藤兵衛は淡々とそうつぶやいた。誰が聞くこともないつぶやきであった。藤兵衛の傍には誰一人いなかった。
三十路の半ば、子は三年前にようやく生まれてくれた。隣村のそのまた隣の村からやってきた女房とはどうにも反りが合わず、ふた月前に子を連れて実家に戻っていた。女房の母親がそれを手引きしたようであった。激昂すると人を詰り切らねば気が済まない性格は母娘よく似通っていた。ふた月女房の金切り声から遠ざかり、静謐と共に干天がやってきた。溜池の水はその間に尽きた。
溜池の危惧を常から藤兵衛は触れ回っていた。寄り合いにも再三語った。御陣屋筋にも何度もかけあった。しかし皆、漫然とした危機感についてはさほどに拒絶もしないにせよ、今日明日何かをするということになると靄がかり、石ひとつどかすのにさえ倦怠を露わにした。御陣屋筋は衆意の合致を繰り返した。繰り返したが、自分たちで取りまとめも呼びかけも何もやらず、具体な計画の粗を探すのに血眼になり、気ままな思い付きを口にして無駄に話を大きくし、共に未発の危惧を取り除くという態度は微塵も示すことがなかった。本百姓らにかけあうことを彼らが忌避したのは、難物がいくらでもいるせいでもあった。へその曲がった者などは、他所に先に話を持ちかけこちらは後回しと立腹し、自意を全て吞まれぬ不平ばかりを叫び、しまいにはこの件に何のかかわりもない藤兵衛の父親の生前の振る舞いに対する悪口まで連ねる有様であった。藤兵衛は寸暇のいとまも与えられぬ伝書鳩のようにして上にも横にも説いて回った。しかし説けば説くほどに軋みが増し、話が膨らんでとりとめもなくなり、金のことでは詰られた。
藤兵衛は、やがてくたびれ果てた。
くたびれ果てた心地というのは、奇妙なものであった。投げやりになると、かえって物事の先が悲観的な色合いを伴って遠くまで見え、見たくもない眺望が広がるようになった。彼らの全て、藤兵衛より身分の高きも、似たり寄ったりも、その下の者らも、おしなべて先行き、天が雨を忘れ水が消えてしまう時が来たならば、自省も自責も何もなく、ただただその怒りを誰かにぶつけ、やり玉に挙げて詰め寄るのだろう。自分がそうなることが藤兵衛には見えた。そして、その未来を回避しようと思う気力が萎えている自分に気づいた。それを為そうとする前に、働きかけてもどうせ連中は聞き入れまいという眺望の方が先立った。届かぬ言葉を費やして何になろうか。
その歳月の中で女房が去った。それを種に村人らは藤兵衛の陰口を横行させた。女房が村にいる間はむしろその高慢さを罵っていた連中が、去ってかえって女房の肩を持ち、藤兵衛を嘲るようになった。藤兵衛は一切の反論も不平も示さず、黙ったままでいた。女房にも村人らにも、語っても無駄であると思った。届かぬ言葉を費やして何になろうか。どうせ人の気持ちなどは他人が変えられなどしないのである。
やがて、当然の顔をして、焼けただれた太陽がやってきて、天に君臨し地を焼いて、水を奪った。田は干上がってひび割れた。人々は白日を避けて暗がりにこもり、こもる分だけ呪詛を連ねた。今年の収穫は絶望的であった。
米は、収穫のあるものとして在った。実入りを当然として組み込まねば世の中が成立しなかった。侍は定まった俸禄としての米俵を得るのが糧であり体面であり秩序であり生きる目的であった。百姓もまた自ら育んだものの半分を年貢として奪い取られながらも、残る半分を命の支えにせねば生きていけなかった。しかし米などは、天の気まぐれで不作になるときはいくらでも不作になるものであった。その当然さを許さぬほどに、人と人がひしめくこの世界は矮小で貧相であった。
人がそれゆえ、だからこそ備えよ。藤兵衛はそう警鐘を鳴らしたが、人と人がひしめくこの世界は矮小で貧相であった。
年貢をどうするか。無いものは収められない。仕方がないのである。太陽でも白州に据え居丈高に吟味を行うのか。やれるものならばやってみよ。しかしそうはならない。天の酷薄、烈日の無慈悲さには阿るしかない。阿った上で、その情のなさに対して備えをすべきを怠ったという責任を取らねばならない。そもそもがくだらない話だ。くだらない話をくだらない人間がくだらない頭で必死に考え、臭気のする脂汗を滴らせて答えを出す。或いは出さない。何の答えにもならないことを答えとして、自分たちは難問を解決し壁を越えたなどとうそぶく。藤兵衛は疲れた。疲れたがゆえに眺望が開けた。そういうものがあらかじめ見えていた。達観していた。女房は出ていった。会いたいとも思わなかった。肌身を寄せ子をなしてもわからぬものはわからぬし、伝わり得ない言葉を抱えてしまいもする。この世界の、その果てのどこかに、届かぬ言葉の受取手があるならば、それが女であるならば、どれほどに幸福であるかと藤兵衛は暑熱の中でうわ言のように思った。
年貢を納められぬのであれば、弁明の証がいる。溜池の整備を怠った罪がいる。そんなものはそもそもどこにもないが、かたちがいる。切ればいいのだろう。腹を。
藤兵衛は屋敷の奥へと入り、このような場合の定型の文面でさっさと一筆をしたためようとした。墨滴のひとつなりともこぼす前の奉書は白々しく、それがどこか滑稽であった。定型の文面は概ねそらんじていて、悩むこともない。むしろ藤兵衛は墨蹟に凝った。筆が走り、わざとぞんざいに、そのくせ撥ねるように踊るように。白さの中で縦横に筆致が駆けた。馬鹿めが。藤兵衛は嘲笑い、実にくだけた、しかしぞっとするほどに流麗な書体で一書をしたためた。此度の一件の弁明を記し、自ら責任を取る旨を書き残した内容と、その自在な、身勝手な、奔放な書体とはおよそ不釣り合いであるのだった。だが藤兵衛は、筆の走り具合に満足した。いいものが書けたと思った。額装をされて飾られでもしたら茶番で滑稽なことだと一人笑った。そしてさっさとひとり白装束に着替えた。
武家ではない。作法に堪能というわけではない。しかし死ぬことくらいはできる。白鞘の短刀は常に用意されていた。庄屋として不始末あれば腹を切るためにである。それを三方の上に置き、さっさと鞘を抜いた。そして着物をくつろげ、さっさと刃を腹に突き立てて横に引いた。鋼の肉身に食い込み、肉身を切っていく苦しみが奔騰し、臓腑の暴れ外に飛び出そうとする苦しみが続いた。そのくせ研ぎ澄まされた鋼の刃はどこまでも冷ややかでぞっとした。藤兵衛は苦悶の中で願った。早く闇が苦しみごと包み、苦しみごと己を消し去ってくれと。
しかし藤兵衛は容易に死ねなかった。当然である。介錯を頼まず、孤独にただ腹を切っただけであった。家人が悲鳴を上げて切腹の間に飛び込んできて、藤兵衛を抱きかかえ大騒ぎになった。もうだめさ、藤兵衛は血の気の引いた力ない顔でその騒ぎを他人事のようにして眺めた。
天は藤兵衛に惨く報いた。暑熱の中、六日も藤兵衛の気息を断ち切らず、苦しめ続けた。ただ藤兵衛はその間の、はばかりもできない苦悶のうめきを呪詛代わりに嫌というほど周囲に聞かせた。苦しみを聞け、痛みを聞けと言葉にならずうめいた。村人の何人かはそれを耳の奥にこびりつかせ、終生消し去ることができなくなった。それが罰であった。また藤兵衛の苦悶に心をくじかれ、心屈した者は、藤兵衛の生前の実を結ばなかった尽力を讃えつつ、それに惨く薄く報いた者をこれでもかと白眼視し、罵った。それら者らはうそぶいたが、完全にそれを跳ね返すには藤兵衛のように白刃を我が腹に突き立て同じ苦しみを味わう他になかった。だからうそぶけばうそぶくほどに面目を失った。それもまた罰であった。
天はそのような人の矮小さを見届け、自らも行いを改めたわけでは決してない。藤兵衛への償いでもない。弔意でもない。ただ気まぐれに暑天を収めた。代わりに雨を今更に下した。それで幾何か稲穂も持ち直した。
翌年も雨が当たり前に降った。その翌年も当たり前に降った。その後のことは知らない。
別にね。クラスメートに恨みも不平もなかったんだよ。繰り返しになっちゃうけどさ。そんなもんだよね。
でも系譜上の先祖に、そういう人がいたらしいんだね。
これは歴ヲタとしてのウンチクなんだけれど、切腹もほら、ガチで死ぬほど苦しい、当たり前か、そういうわけだからさ、江戸時代もある程度以降になると扇腹っていうのがスタンダードになったんだって。実際に腹を切るんでなくて、扇子を腹に当てるとか、短刀を突き立てる前に首ちょんぱだけで終わらせるっていうの。それがテンプレだったみたいよ。でもご先祖さんは一人でガチで腹を切ったらしい。まあ、聞いたのは溜池が干上がって腹を切ったという話だけで、他のあれこれは創作だけれどもね。
「この世界の、その果てのどこかの女かあ」
目ざといねえ。見つけたな。
「よかったねえ。わたしと出会えて」
本当だよ。これを書いたころに希望なんてなく、願望だけがあったと思う。君に出会う前だったからね。本当だよ。本当に君と巡り合えてよかった。だから探す。待っているし追いかけるのさ。
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