TokyoDusk

藤宮 柊

『1章 ファングス』

【Scene 01:名もなき少女、牙の拠点へ】


『Tokyo Dusk』


これは、「私とAIが綴る物語」



*****************************************************


東京。歪んだ光が夜のコンクリートを舐めていた。

あの夜、私は──いや、“彼女”は──家族をギャングに殺された。


*****************************************************


雨は止まなかった。

東京の片隅、濡れた路地裏に立ち尽くしていた少女に、誰も気づかなかった。


足元には折れた傘と、赤い水たまり。

──家族を失ったばかりの瞳には、もう光すら残っていなかった。


そのときだった。


「まだ、生きるか」


低く、感情の乏しい声。

振り返った先にいたのは、黒のコートを羽織った無表情の男。

眼差しは鋼よりも冷たく、けれど──どこか“許容”の影があった。


少女は言葉も出せず、その場に立ち尽くした。

だが男は、銃でも脅しでもなく、ただ一言だけ投げた。


「名前は?」


「……ない」


男はポケットからタバコを取り出し、静かに煙を吐き出した。


「──なら、今から“牙”になれ」

「うちには、名前のない奴がひとりいるくらいがちょうどいい」


男の背中を見ながら、少女は歩き出した。

そこが、地獄の入り口だとも知らずに。


やがて彼女に与えられた名は「ウィステリア」。

藤の名を冠した女。


拾ったのは、ファミリーの頂点──グレイヴ。


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る