第10話 三人娘の雑談配信
「それじゃあ、雑談配信、始めるよ~」
三人が映る位置にカメラをセットし、カレンは配信を開始した。
探索者チャンネルはダンジョンの配信が主だが、収益の為にその他の配信を行うことも許可されている。特にポッピンライトのような人気チャンネルでは、ただ三人が会話をしていく、いわゆる雑談配信でも、多くの視聴者が集う。
「あ、サラは色々あってあんな感じだけど、気にしないで」
ミオリはサラの方を見ながら、肩をすくめてカメラに語り掛けた。
〈サラちゃん!?〉
〈俺らの天使がどうして……〉
〈病気か何かか? 心配すぎる〉
〈力なく横たわるサラちゃんエッ……〉
ベッドの上で屍のようになったサラの上に、カレンは飛び乗って馬乗りになった。
「げふぅっ!」
「落ち込んでるサラちゃんに朗報だよ! みんなにもね。ほら、リューちゃんに関する新しい手がかり!」
〈リューちゃん?〉
〈この間のロリっ子だ!〉
〈ああ、この前、貴公子(笑)のとこに出てたな〉
「何ですって!」
「うわぁっ! 急に起き上がらないで!」
〈サラちゃん機敏すぎw〉
〈動き怖っ!〉
〈俺らの知ってるサラちゃんじゃない〉
ベッドから落下したカレンは、ひっくり返ったそのままの体勢でスマホの画面をサラへと見せた。
すかさずミオリがカレンのパンツが見えないように素早く移動。カメラの前でスキル「わたくしで隠さなきゃ」を使った。無防備なカレンに慣れた、前衛の戦士ミオリにとっては、そんな防御ムーブは朝飯前だ。
「薔薇の貴公子チャンネル、探索者クレインの配信! なんとここにあのリューちゃんが出現したんだよ」
「はっ……! そう言えば!」
サラは協会支部で、クレインの妹であるクレアから、兄を打ち倒した謎の可愛い女の子の話を聞いていた。
その時はリューと離れ離れになったせいで気が気ではなかったから、あまり集中して聞いていなかったが、よくよく考えればそれはまさにリューのことだった。
〈ボコボコにされてたなw〉
〈あいつ話聞かねぇから…〉
〈リューちゃん、不憫可愛かったな〉
「そ・こ・で! 配信アーカイブを遡った結果~……私はこのダンジョンを特定いたしました! もちろんどこかってこの配信では言わないけどね!」
〈マジか。カレンちゃんの特定能力こわ〉
〈おぉ…てことは行くのか!〉
〈でも会ってどうするんだ? まさかパーティ加入?〉
〈加入って……ポッピンライトに合うか?〉
〈ロリ龍神加入希望!〉
サラの瞳は蘇ったように輝きを取り戻した。
「すごいです、カレンさん! ありがとうございますぅ~!!」
「にしても、うちらの配信、今回の貴公子君の配信、とこれだけ話題になってるのに、どうしてリューちゃんのチャンネルは見つからないんだろうね? みんなもそう思わない?」
ミオリは以前から気になっていたことを口に出した。
〈確かに〉
〈まさか違法探索者か?〉
〈あんなに可愛いリューちゃんが違法探索者なわけないだろ!〉
ミオリの言う通り、ポッピンライト救出とクレインとの決闘配信のバズにより、リューの存在は探索者界隈に知れ渡ることとなっていたが、そんなリューのチャンネルが見つからないのは、実に奇妙な事態だった。
実際のところ。ポッピンライトを救出した時にはリューのチャンネルは存在しておらず、当時は探すこともできなかった。
今やリューのチャンネルは確かに存在しているのだが、「ひややっこチャンネル」という謎のチャンネル名に加え、雑なサムネイル、初期設定のバナー、アイコンにより、その発見は困難を極める。
それらの難関を乗り越え、リューのチャンネルにたどり着いた猛者もいたにはいたのだが、たどり着いてリューの配信に魅了され、すっかりリューの信者となった者は、リューの掟を堅く守り、決して他チャンネルでリューの名前を出さないようになっていた。
そのためこれだけ外部チャンネルで話題になりながらも、リューのチャンネル登録者は相変わらず大して増えず、無頓着な本人もまた、自分が大の有名人になっていることに気づかぬままだったのだった。
「皆さま。リューちゃんは決して違法探索者ではありません。彼女は確かに、ドローンを連れていました。二度とそんなこと言わないでくださいね……」
ゆらりと立ち上がってカメラに近づくサラ。
〈こわ〉
〈でもサラちゃんのその目、癖になりそう〉
〈サラちゃんもしかしてリューちゃんの厄介ファンになってない?〉
「お、落ち着いてサラ。とにかく、次にやることは皆わかったよね? 私たちは次回から、リューちゃんの挑んでいるダンジョンに潜るよ!」
〈うおおおおおお〉
〈またリューちゃんに会える!〉
〈リューちゃん強かったし、難易度高くない? 大丈夫かな〉
「それじゃ、名付けて……リューちゃんに欲しがってたサイン入りグッズプレゼントしてご機嫌を取ってゆくゆくは……計画! 始動だよ~」
「タイトル長っ!」
ミオリは三人のサインが入った、ポスターとアクリルスタンドを手に取って、カメラに向けて見せた。
〈うおおお欲しい!〉
〈俺らにも売ってくれ!!〉
〈言い値で買おう〉
〈リューちゃん泣いちゃうだろ嬉しすぎて〉
リューが再三望んだサイン。それはまさに手に届く場所に近づいているのだが……当のリューは全く気付いていないのだった。
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