朝のために

目がさめると

体が軽い

さっきの寝言はだれの声?


窓辺にも床にも陽がこぼれ

ただ

昨夜ゆうべの本だけが

読みかけのまま

机の上で

貝のように口を開いていた


きのう

あの子が読み残し

永遠に読めなかったものは何だろう


… ページは白く 誕れたばかりの化石のよう、

その碑文いしぶみをぼくは読む

見たこともない言葉がぼくの身体からだに流れ込み

パジャマのすそから

夢のかけらを掃き落す


さようなら

忘れの里の仲間たち


大切な物は何もかも

寝ているあいだに失くしてきたぼくは

けさ

こんなに新しい


今夜また

この本を遺して発とう


次の朝

ぼくの知らない

別のページを読み継ぐ者のため

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