狼の涙、初恋の約束

@black_wolf_1

第1章:出会いと疑念

第1章:出会いと疑念

咲は、幼少期からずっとこの村で暮らしてきた。しかし、村のしきたりや言い伝えに疑問を感じている部分もあり、特に「狼の神」に関する話にはうんざりしていた。それでも、毎年村祭りのたびに聞かされるその話を、祖母からはよく聞いていた。

ある日、村に都会から引っ越してきた青年、陸が咲のクラスに転校してくる。彼は、周りとどこか違っていた。髪は黒く、眼差しは鋭く、常にどこか遠くを見ているような目をしていた。村の風景や生活に不安を感じていた咲は、彼に対して無意識に引かれていく自分に気づく。

しかし、陸にはなぜか村の誰とも深く関わろうとしない奇妙な一面があった。授業中、休み時間にさえ、誰かが声をかけても冷たく応じ、どこか無関心な態度を見せる。その態度に、咲は不安を覚え、次第に彼に興味を持つようになる。

ある日、放課後、咲は図書館で一人本を読んでいると、陸が突然現れる。彼は一冊の古びた本を手に持っており、その表紙には「狼の神」と書かれていた。咲はそれが気になり、つい声をかける。

「その本、どこで見つけたの?」

「これは、村に伝わる伝説の本さ。」と、陸は言う。

その答えに、咲は一瞬言葉を失う。なぜなら、その本に描かれているのは、まさに村で語り継がれてきた「狼の神」の絵だったからだ。だが、咲は少し嫌な予感を覚え、陸に対してますます興味を抱く。

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