第24話 合宿計画

103 合宿計画1

 花音さんたちが来てから3日目、4月19日金曜日お昼休みの部室。

 本日長机に並んでいるのは、カツカレー甘口とサラダ。

 甘口なのは花音さんと陽菜さんが『カレーは好きだけれど辛いのが苦手』だからとのこと。

 どうやらここでの昼食は、もう日課に組み込まれてしまった様だ。

 

 本日のカツカレーは、ルー部分にも豚の角切りだの大きめのジャガイモやニンジンだのがゴロゴロ入っているという、豪華でボリュームもある仕様。

 サラダはレタス、千切りキャベツ、ニンジン、ゴボウというサラダ。

 ニンジンとゴボウは、ごまドレッシングであえてある。


「ひとり3杯くらいまでならおかわりも出来ます。ご飯やカレーだけでなく、カツもサラダも、まとめて作ってストックしていますから」


 魔法収納を使えば、腐ったり傷んだりしない。

 だから作り置きも自由に出来るわけか。

 俺や衣緖菜は料理が得意ではないから、自分たちで作った料理ではなく、美味しそうな惣菜のまとめ買いなんかで活用しているけれど。

 なんて思いながら、口に運んで。


 そして考える。

 俺は本来、辛口から中辛が好みのはずだ。

 そしてこのカレーは、お子様カレーと言っていいくらいに辛くない。

 しかし辛くない分、様々な味の深みが感じられるから、甘口の方が美味しいのではないだろうか。


 というくらい美味しいカレーを食べながら、今後について話し合い開始。


「まずは衣緖菜さんの部下について、花梨さんに調査をお願いしました。今のところ今現在の把握はないそうですけれど、調べてくれるそうです」


 これは花音さんから。

 花梨さんとの連絡は、基本的に花音さんの役割らしい。

 日本に脱出する為に協力を求めた時から、そうなっているようだ。

 別に連絡先を花音さんが独占しているというわけではなく、誰でもメールやSNSでやりとりは出来るらしいけれど。


「ありがとう。お礼とかなにか考えたほうがいい?」


「花梨さんについては、心配しなくて大丈夫です。あとはあの人なりの情報網があるので、お任せした方がいいでしょう」


 花梨さんについては、花音さんから伝達された情報では、こんな感じだ。


 ○ アトラ世界から地球に来た最初の人で、以降アトラ世界から地球へ来る人は、彼女の移動の痕跡を元にして魔法を構築している。アトラ世界からの移民が日本に集中しているのはそのため

 ○ アトラ世界からの移民を気にかけている。またアトラ世界からの移民などで、互助会的な集まりを主宰している

 ○ 空間系特化の強力な魔法使いで、アトラ世界と地球を行き来することが可能

 ○ 外見と戸籍上は、20代後半くらい

 ○ 5年くらい前の株高で大金持ちになった

 ○ 花音さんたちが日本に脱出する際、お世話になった。

 

 とりあえずこの件については、任せてしまった方がいいだろう。

 俺たちが何かできるということはないから。


「でもここの部員を増やすのは、今は難しいと思うよ。この学校に来てから愛美姉が魔法に伴う空間の歪みを常時観測しているけれど、アトラ世界の魔法を使った痕跡が少しでもあるのは、衣緖菜と陽翔だけだから、今のところ」


「ですからここで出来るのは、情報を集めることと、魔法を鍛えることくらいだと思います。そして校外の情報収集は、花梨さんに頼むほかには、ネットで広報するくらいしかないでしょう」


 確かに結菜さんと愛美さんの言うとおりだ。

 でも、そうなると……


「だから今出来る異世界魔法部にふさわしい活動は、魔法を鍛えることだと思うよ。ということで、昨日も話した合宿の話になるんだけれど」


「この世界は魔素が薄いですし、アトラ世界の神のような魔法を司る存在がいません。ですから訓練する際は、魔素が集まる様、魔力の性質が違う魔法使いを5人以上集めて訓練するのが効果的だとされています」


「花梨さんに話したところ、自由に使える無人島を1つ借りることが出来ました。熊本県にある一周しても600mくらいの小さな島だそうで、知り合いの私有物件だから部外者が来ることはないそうです。電気や水道はありませんが、20人くらい泊まれる合宿所はあって、布団やテーブルなどはあると聞いています。行くなら、この世界に対応した移動用魔道具を貸してくれるそうです」


 結菜さん、愛美さん、花音さんからそんな説明を受ける。

 しかし私有の無人島か。

 相当な金持ちがバックにいるのだろうか。

 俺はそんなことを真っ先に考えたのだけれど、衣緖菜の場合は違った様だ。


「こちらの世界にも魔道具がある? 長距離移動可能な?」


 確かに熊本県は遠い。

 ざっと千キロくらいはありそうな気がする。

 そして衣緖菜の知識によると、転移魔法で移動可能なのは百キロ程度まで。

 大型の転送装置を使用しても、倍の二百キロは厳しい。

 距離の二乗に比例して魔力を必要とするらしいから。


「花梨さんの話ですと、愛美が使用した場合、でしたら一トン分の人か荷物を二千キロ往復させるくらいは可能だそうです。魔素濃度が薄くて魔法の邪魔にならないことと、移動魔法は五百キロを超えたあたりから三千キロくらいまでの間は、距離の大小にかかわらず同じ程度の魔力で転移可能なことが理由だろうと言っていました。魔道具そのものは後で送ってくれるそうなので、実際に試してみればいいと思います」


「わかった。楽しみにしている」


 ということは、これで決まりなのだろうか。

 一応確認しておこう。


「なら、その島で合宿するので決定でいいか? あとGWの連休は2回あるけれど、どっちにする? 寮を出て外泊する言い訳は大丈夫か? あと参加者は今いる7人でいいか?」


 本当はこれも聞きたい。

 男子は俺1人だけれど、本当にいいか? と。

 そう言うと女子を意識している様だから、聞けないけれど。

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