ラグナロクは終わらない 第1部
藤原霧亜
序章 分解する少年と吸収する少女〜因子なしコンビ結成〜
第1話 出来損ないの運び屋、少女と出会う
この街では、あり得ない力…『
俺に
俺はマナ。この街の裏側で、自分の頭と足とちょっとした技だけを頼りに、危険な依頼をこなして日銭を
路地裏の
「…報酬は?」
「ククク…これだ」
どこかの組織の下っ端らしい男が、革袋を投げてよこす。
中身は契約の半分にも満たなかった。
「話が違うな」
「依頼は『配達』じゃねえ。『捕獲』だ」
罠だった。俺は、短く息を吐いた。
「…だろうと思った。三流以下の組織は、やることまで三流だな」
その言葉に、男の表情が怒りに
「―
彼の腕が、おぞましい
だが、俺はもう駆け出していた。生き延びるための、いつもの戦いの始まりだ。
追手を振り切るため、
「いっ…!」
誰かと激しくぶつかり、俺は勢いよくアスファルトに倒れ込んだ。黒いフードを目深にかぶった少女が、同じように
すぐに気づいた。彼女もまた追われている。
ただし、俺を追うチンピラどもとは違う。
スーツの女が、彼女の退路を塞いでいく。
最悪だった。俺を狙うチンピラと、少女を狙うスーツの女。
2つの狩りが、この狭い路地で
「ターゲットを発見、確保に移る」
スーツの女が報告していた。その目は、少女を
「待て、そいつは俺たちの獲物だ!」
チンピラが、俺を指差して叫ぶ。
スーツの女は、俺たちを
「財団のチンピラが我々の任務の邪魔をするな。その男はどうでもいい。その女を渡しなさい。」
「ふざけるな、俺たちの目的はその男だ!貴様ら教会の犬こそ、俺たちの狩場からとっとと失せろ!」
互いに、一歩も引く気はない。交渉の余地はなく、残されたのは、力による排除だけだった。
「―
スーツの女が光の
同時に、チンピラの男が
2つの脅威が、同時に迫る。
俺は、まず、自分に迫る
「――
俺は、自らの能力…
「なっ…!?」
チンピラの
よし。まず一体。
俺が、そう確信して、少女の方を振り返った瞬間。
光の
(しまっ…!間に合わねえ!)
俺の能力は、直接対象に触れなければ発動できない。今から駆け寄っても、少女が攻撃される方が早い。
少女は、目の前に迫る光の
光の
「なにっ…!?」
スーツの女も、チンピラも、自らの力が「消滅させられた」という、あり得ない現象を前に、
その数秒の硬直が、俺たちの運命を分けた。
「…とにかく、逃げるぞ!」
俺は、少女の手を
追手たちの怒声が、背後で遠ざかっていく。
こいつは、一体、何者なんだ。
その時、彼女が、俺の視線に気づいたように、こちらを向いた。
そして、こう言ったのだ。
「……やっと会えた。私と同じ人」
(第一話 終わり)
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