公爵家の孫に転生、ギフトは「創造」

たかみつ

第一章 公爵家の孫に転生 

第1話 事故死そして転生 

第一章 公爵家の孫に転生 はじまり



15歳を迎える年、子供たちは祝福のギフトをもらえる。

これがこの王国、イヤこの世界での常識。

その年に15歳になる子供たちは、一年に一回、教会で司祭さんから祝福の儀式をしてもらえる。

まだ誕生日を迎えていない12月産まれの子供でももちろんその権利がある。

ただ本人の具合が悪くてなどいろいろな理由で儀式に出れなかった者は、有料になるが儀式をしてもらえる。

でも祝福の儀式は一生で一回だけのもの。


僕はちょうど先々月が誕生日で、15歳になったばかり。

僕も、教会へ連れていかれて、司祭から祝福の儀式を受けるときが来たのだ。




僕は3歳の時に、母親を亡くした。僕もその時大きな怪我を負って死に瀕していた。


母の実家の公爵家に呼ばれて、母と一緒に馬車で向かっているところに・・・

運悪く、魔狼の大群に襲われてしまった。50頭以上いたって話だ。

護衛の騎士が6人付き添ってくれていたんだが、それでも魔狼50頭の集団には勝てなかったらしい。魔法を使える母も馬車の外へ出て魔法を放っていたのだが・・・

開いている馬車のドアーからちょろちょろと出てしまった僕が魔狼たちの餌食にされた。

腕を噛まれ、振り回されて地面にたたきつけられて・・・意識がなくなってしまった。


その後のことはただ一人大怪我を追いながらも生還した御者の話だけど・・・


護衛の騎士達もどんどんやられていく中、母は孤軍奮闘で魔法で魔狼に風刃を放ったりしていたらしいが、その母も、気を失った僕を庇いながらで・・・腕をやられ、脚に噛みつかれ・・・

ついには、転がっていた僕を拾い上げて、馬車の中に籠ったそうだ。


「あああ・・・エリス! 死んでは駄目よ! ああ~~ひどいわね・・・

私はもういい・・・あああ・・神様! お願い! いらっしゃるのなら・・・私の命をこの子に! 私の可愛いエリスを助けてください・・・どうか・・・私の残り少ない命をすべてこの子に!~ 捧げます・・・どうか・・・エリスを・・・・」

それが母の最期の叫びだったらしい。


御者も、片腕を噛まれてはいたけど、そのあと、なんとか馬車を操って戻ってくることができたという。


伯爵邸に血まみれの馬車が戻ってきて大騒ぎになった。

母は既に冷たくなってしまっていた。

僕もひどい怪我をしていたものの、まだ冷たくはなっておらず、ただ、母にしっかりと強く抱きかかえられていたらしい。


そしてそのあと、7日間僕は昏睡状態であったという。


実は・・僕は5日目には目を覚ましていたのだ。

でも、頭がものすごく痛くて、何か?混乱していて、とても起きれる状態ではなかった。

後で聞いた話では、5日目と6日目は、僕はひどく何かにうなされるように・・・でもまだ意識が戻っていなかったらしい。

身体の傷のほうは伯爵家の知り合いの魔導士によって回復魔法を何回もかけられて綺麗にはなっていたらしいが、意識が戻ることはなかった・・と。

これは僕に付き添ってくれていたメイドから聞いた。

僕の体を拭いたり、体中をさすってくれたり・・・してくれてたようだ。世話をかけたな。


僕は実は、頭の整理? 記憶や経験などの情報処理をしていたのだ。

実は、5日目の朝、この体の持ち主であるエリスは息を引き取った。

と同時に、僕の命がそのエリスの体に産まれた? というか入り込んだようだ。



僕の記憶では・・・


入社式の当日の朝、さっそうと身支度を整えて会社へ向かう。今日から社会人のスタートなのだ。

僕は、一応、日本の某国立大を出て、大手の某商社から採用通知をもらっていたのだ。

最終面接で知り合った女子と品川で待ち合わせをしていた。


遠くに彼女が見える、あっ! 手を振ってくれてる。向こうからも見えるんだ・・・

でも、僕の意識はそこでプツンって無くなった。一瞬のことだった。


少しして地面に僕が転がってるのが見えた。しかも僕の上には、それこそ何トンもありそうな鉄の構造物が僕をつぶして、コンクリートの地面をどす黒く染めている。


どうやら、建設中のビルの一部がそのまま落ちてきたらしい、僕の真上から。なんだって・・? それに・・何だろう・・僕は、幽体離脱してるのか? そんなのアリ? ・・・とそこまでだった。



そして僕は、こちらへ飛ばされたのか?今死んだばかりのエリスの体に入っていたようだ。

この体が、伯爵家の三男坊のエリスということを知り得るのにはかなりの時間が必要だった。頭がぐるぐるそれこそフル回転していた。眩暈どころではない・・・ガンガン、ズキズキがひどくて熱っぽかったし・・。ただ、ほとんど食べていなかったみたいで、上からも下からも固形物が出てしまうことはなかったようだ。


・・・つまり、僕は、転生?ってやつなのかな・・・日本で事故で死んで、こちらへ転移させられて、こちらの子供の死んだばかりの死体に乗り移ることができた。


伯爵家三男坊、3歳の男子、エリスとして。





僕、エリスには二人の兄がいる。

長男カーチス 22歳、それに次男マーチン 20歳、そして僕 15歳。

随分年齢差がある。僕をかばってなくなった母上は父の二人目の妻だったらしい。

しかも、伯爵の父上自身より身分の高い公爵家の次女であった。

カーチスとマーチンの母上はまだ存命だが、重病のためか、現在では離れの屋敷で籠っている。

その女性は、母を失った僕の面倒を見ようとしてくれたらしいが、やはり体に大きな負担となって、1週間ほどで倒れてしまった。

僕はそれが何の病かは知らないが、それほどの重病なんだろう。

以来、その人が僕に接することはなくなった。伯爵の父上がそう決めたらしい。

ちなみに、伯爵家の正妻であるその女性の名前はマチルダという。


そして僕の実の母の名は、エメルダだった。幼い記憶では、とても慈悲深い女性で、僕に対しては最大の愛を示してくれていたらしい。それは亡きエリスの記憶だ。

マチルダの母ともうまくやっていたようだが、どうやら、カーチスとマーチンはエメルダとは大きく距離を取っていた。

そんなものだろうな。自分たちには無縁の女性だろうし。


そして、我が父上は、ダンブル伯爵。

この国、アリトリス王国の伯爵の一人ではあるが、公爵家からも嫁を迎えることができるほどの名家であるらしい。特に、歴代のダンブル伯爵は剣技に優れた才能とスキルを持っていて、領地の運営さらに王国への貢献度も高いものであった。

そして、僕の二人の兄たちもともに剣技に関するスキルを所持している。


だからなんだろうな、父上は僕の祝福の儀式、その結果を楽しみにしていた。



僕が司祭から申し渡された結果は・・・

「エリス、君が授かったものは・・・なんというか・・・詳しくは儂でもわからないが、はっきり見えるのは、君には「ポーション作り」のスキルがある」

というものだった。


何だって? ポーション作り・・・は分かったけど、詳しくは分からない、ってどういうことだ? はっきり見えないってどういうこと? 

じゃあ、誰なら、はっきり見えるのさ?~ 当然、自分でもどうしようもない現実だった。


それでも・・父上には、ちゃんと報告しておいた。

「父上、僕が授かったスキルは・・・ポーション作り、でした」

「・・・・」


長い沈黙があった。息をしても良いのかな? 苦しいほどこらえていた。

「そうか! エリスよ、人のためになりそうなスキルよの・・・エメルダもあの世で喜んでいるだろうよ・・・」


父上のがっかりした表情は忘れられない。

考えなくても分かる、剣技とか剣王とか・・・そういうのが欲しかったんだよな。ダンブル伯爵家として、たとえ三男坊で、上に二人も男子がいるにしても。


それからというもの・・・父上は僕とは距離を取るようになった。





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