ブーケトス

縞間かおる

『KENICHI&YAEKO』

 手書きのウェルカムボードのアルファベットが拙すぎて笑える。

 書き慣れないアルファベットを書いて失笑を買うなど……まさにこの二人に相応しいけど。


 まさか『私から寝取った』とは知らない八重子は私を披露宴に呼んだのだけど……健一はどんな顔をしていたんだろうね!


 とにかく!親友として出席するのだからご祝儀は5万円包んだわよ。

 その5万円は……昔、健一から貰った指輪やネックレスを“買取”へ売って作ったものだから……私って、殊勝でしょ?!


 さて、新婦側のテーブルに着き、“いつもの面々”との会話を卒なくこなす。


「綾乃、今日のコーデは落ち着いた感じだよね」との言葉には「当たり前でしょ?!親友としてスピーチするんだから、一瞬でも八重子より目立っちゃいけないもの!」と応えたけど……言葉に棘があったかしら? まあいいわ!


 しかしまあ……八重子の身内もそうだけど……健一の親族ども……初めて見たけど……親と一緒!! 粗野で下品!!


 それに何?! この料理!

 私が今まで出席した不味い!!

 私、こんな物の為に5万円も出したわけ??!!

 あまりにもバカバカしくて零した一粒の涙を……周りの皆は『親友の幸せに感極まった』と受け取ってくれたのが、せめてもの救いだわ!

 でも、このタイミングでスピーチに呼ばれて……私は涙ながらに八重子の事をベタ褒めしたわ。



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