声なきあなたへ

白蛇

第1話 ただいま、の温度

// SE 雨の音(弱め・窓を叩く)

// SE 風がカーテンを揺らす音

// SE 時計の針の音(規則正しく)


// SE 濡れた足音(駆け足)


// SE ドアを開ける音


「あぁもう。急に降ってくるんだから……」


// SE ドアを閉める音


「ただいま。遅くなっちゃってごめんね」


「もう。こんなに寒いのに、暖房も付けずに……」


// SE 暖房を付ける電子音

// SE エアコン微ファン立ち上がり(30秒で-6dB→-12dBへフェード)

「そんなに薄着のままだと風邪ひいちゃうよ」


「こんなに冷たくなって……氷みたい。……でも、ね。……そういうとこも……好き」


「でもほら、ちゃんと毛布を掛けておかないと、風邪ひいちゃうよ」


// SE 毛布の縁が頬に触れる微擦れ(綿・ごく近接)

// SE 指腹で頬を二度なでる音(L→R、近接2cm)


「……ひとりでお留守番できた? 寂しくなかった?」


// SE 間(雨音だけが響く)


「すぐ着替えるからこっち向いちゃだめだよ」


// SE 衣擦れ音


// SE 遠くで棚を開ける音

// SE 髪をタオルで拭く音


「おまたせ。ねぇ、今日はどんなことをして過ごしたの? テレビでも見てた? 本でも読んでた? それとも——」


// SE 濡れたタオルを床に置く音

// SE 指で頬にそっと触れる擦れ

// SE 間(雨音だけが響く)


「あ、そうそうプリンを買ってきたの。どう? 美味しそうだと思わない? あなたもきっと喜ぶと思って」


// SE フィルム剥がし“プチプチ…スッ”(高域小さく)

// SE スプーンをすくう音


// 微かな咀嚼音


「うん。やっぱり美味しい」


「あなたも食べて? ほら、あーん」

// SE スプーンの柄を指で転がす微音(金属を指腹で擦る……)


// SE 口元で止まる気配(微かな衣擦れ)

// SE 僅かな間(雨音だけ)


「……どうして口を開けてくれないの? ねえ、少しだけでいいから食べて」


// SE もう一度スプーンをすくう音(やや強め)


「ほら……あーん。……ねぇ、意地悪しないでよ」


// SE 間(雨音だけが響く)


「まだ……何も言ってくれないの? ひとりでお留守番させたから、怒ってるの?」


// 息遣い(耳元に近づいて囁くように)


「ねぇ、返事はしなくていいから。聞いているだけでいい。でもね、私は話したいの。ずっと、ずっとあなたに……」


// SE ベッドが軋む音


「ほら、手を動かしてみて。ねえ、できるでしょう?」


// SE 間(沈黙、雨音だけが響く)


「……なんで黙ってるの? 私の声、聞こえてるよね?」


「……冷たい。やっぱり、寒かったのね……」


「ほら、あっためてあげる」

// SE 袖口(ニット)で頬をそっと押さえる擦れ

// SE 指先が指先に触れる“ペタ…スッ”(爪なし)


「ねぇ、少しでいいの。指先だけでも……ねえ、ちょっとだけでいいから、私に触れてよ」


// SE 間(沈黙)


「……元気がないのかしら。そうね……今はまだ、無理しないほうがいいかもしれない」


// SE 足音(部屋の奥に下がる)


「そこにいてくれるだけでいい。ずっと私と一緒にいてくれるだけで……」


// SE 足音(近づいてくる)

// 息遣い(耳元に近づく)

「あなたは、黙っていても可愛いもの。……お人形みたい。大事に、大事にしてあげるから」


// SE 雨の音(強まる)

// SE 時計の針の音(少し大きめ)


「眠い? ……でも、もうたくさん眠ったでしょう? だから……目を開けて。……ほら、私を見て」


// SE 間(雨音と時計の音だけ)


「……どうして私のこと見てくれないの? ねぇ、一人にさせてごめんね。許してくれない、かな?」


「だめ? ……でも、私は見ていたい。ずっと、あなたの顔を」


「ねぇ……覚えてる? あの日のこと」


「初めて、あなたと一緒に歩いた道も……こんな雨だったよね」


// SE 遠くで物音


「……なに? 今、廊下で何か音がしたよね……?」


「様子を見てくるから、ちょっと待っていてね。私が目を離した隙に、また遠くへ行ったら……私、ほんとうに困っちゃう」


// 息遣い(甘く、耳元で囁く)

// SE ごく小さな囁きの重ね

「ここにいて。逃げないで。……約束してね?」


// SE 足音(部屋の奥に下がる)

// SE 間(雨音だけ)


「鍵もちゃんと閉まってるし……誰もいないよね?」


// 遠くから呼びかけるように

「そうだ、私このままシャワー浴びちゃうね。ちゃんと、待っててくれるよね? 私がいない間にどこか行っちゃったら、絶対に許さないんだから」


// SE 遠くで響くシャワーの音と雨音が混じる


// SE 風の音、時計の音だけが残る


// 小さく・子守歌のように

「——いい子。いい子だよ」




* * * * * *


- 演技指針

- 「ただいま」〜「風邪ひいちゃうよ」までは日常演技、感情トーン:優しさ+安堵。

- 「冷たくなって……氷みたい」〜「でも、好き」は**頬に触れるように、ごく近接で囁く**。

- 「返事はしなくていいから」以降は**しっとり沈んだ愛情と執着が入り交じる**。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る