潮の雨に霞む、白髪の尾。それは夢か幻か。
- ★★★ Excellent!!!
潮辛い雨が降る。
海辺の町にはいつからか塩の濃度が高い
雨が降る様になる。原因は、わからない。傘は役には立たずレインコートが頼りだ。
錆びの浮いた道路標識、植物は苦しんで
枯れて行く。人々は表に出る事を避け、
空はいつも曇よりと曇って潮の雨に霞む。
いつまでも止まない雨に、
静かに町は壊れて行く。
一人の女が膨らみかけたお腹を庇い、
潮の雨の中を行く。生まれて来る子の為に
この町を出なければ。
そう思いながら、そぼ降る雨の中で
潮の雨の中に、片目の魚が混じる。
抉られた様に片方だけ失われた魚の目。
傘に打擲されて、唖然とするが。
潮の匂いに混じる、血生臭さと
白髪の背中。片手の先は失われて、逆の
手には水掻きがある。
目が合って。
安産の御守りを引っ掛けて、寂しげに
笑うモノ。
血生臭さと
頭のない 魚。