潮の雨に霞む、白髪の尾。それは夢か幻か。

潮辛い雨が降る。
 海辺の町にはいつからか塩の濃度が高い
雨が降る様になる。原因は、わからない。傘は役には立たずレインコートが頼りだ。
 
 錆びの浮いた道路標識、植物は苦しんで
枯れて行く。人々は表に出る事を避け、
空はいつも曇よりと曇って潮の雨に霞む。

 いつまでも止まない雨に、
     静かに町は壊れて行く。


一人の女が膨らみかけたお腹を庇い、
潮の雨の中を行く。生まれて来る子の為に
この町を出なければ。
 そう思いながら、そぼ降る雨の中で

潮の雨の中に、片目の魚が混じる。
 抉られた様に片方だけ失われた魚の目。

傘に打擲されて、唖然とするが。

 潮の匂いに混じる、血生臭さと
白髪の背中。片手の先は失われて、逆の
手には水掻きがある。

 目が合って。

  安産の御守りを引っ掛けて、寂しげに
笑うモノ。
      血生臭さと

 頭のない 魚。