第二節「小話1/仔犬とデビューと」

――その日。

模型プラモ部の部室は緊張感(約一人のみ)に包まれていた。


「え、えぇえと、何か色々ありゃましたわたしわ決断しますたぁ。

今日から御厄介ぎょやっきゃいになりまふ白戌恋縫しらいぬこいぬです!よ、よろぴくおねぎゃします!」


恋縫ちゃんの部活デビューの日だった。


「自然体でいきますね!」からの全力噛み噛みトークである。

「あぅぅ~~」

赤面して頭抱えてヘタり込む天使エンジェル恋縫さん。

部員たちのほくほく生暖かい目に包まれていた。

そんなのは他所よそ

「おう、おねぎゃするぞ」と真顔で返した竜地に蹴りをかますと

恋縫ちゃんの肩抱きながら改めてあたしが紹介しなおした。


やっと羞恥テレションが静まってきた恋縫ちゃんはコホンと一息。


「え、えと!新しいことを始めようって模型はそんにゃ詳しないの

ですけお……はい、皆さん色々ご指導ごべんちゃつぅあぅ」

パチパチパチパチ。

みんな突っ込まずに拍手で歓迎。空気読めるってスバラしい。

(一人を除く)

「白戌さん、は堅苦しいのでみんな恋縫ちゃんって呼んであげてね」

空気読めるみんなの歓迎ムードも温まった。


「恋縫くん、小生は夜鳩よばとと言う、部長代理の者だ。宜しく」

「あ、はい!よろしくお願いします」

夜鳩は170超える長身で、恋縫ちゃんは150cm余。ミニマム可愛い。

夜鳩はかがんで問う。なんか補導に来た婦警さんみたい。

「ヴァンダムは観たことあるのかな?」

「えぇ、と……あ、りゅーちゃんの家に行った時ちょっとだけあります!」

とキラキラ目線を竜地に向けてしまう恋縫ちゃん。

(やめれ)という苦悶の表情で無言の抗議する竜地。

「あ」いきなりアカン。

「りゅー……ちゃん??」部員全員の注目が集まる。

目線はりゅーちゃんこと、モグ男先生にである。

「「えぇぇぇぇぇえぇぇ!?」」一斉にどよめく部室内。

「こ、恋縫ぅうおお!やめれ言うたやろお!!」

「「呼び捨てぇえぇ!?」」

さらに輪唱りんしょう、大絶唱。

膝を抱えてた竜地はさらに不意打ちで転げた(ザマない)


「いや、なんだ、落ち着け。こいつとはただの古い仲で!」

「古い仲……それって」

あーそれ藪蛇やぶへびだわー。

「いや、幼馴染だ!幼馴染み!そゆ関係で!ウチの裏手で!遊ぶ関係でだな!」

「裏からって?夜這よばいな関係!?」

誤解ワードで自爆する竜地先生。阿呆でした。

本日のデビュー戦は終始ニヤニヤで終了。早く馴染めるといいね。

あと、

「恋縫、人前でりゅーちゃん呼び禁止!」

「えぇえぇ」

「ぼそ(プライベートではOKなんじゃないの恋縫ちゃん)」

「(あ……そうかも♪)」

と会話があったとか何とやら。

二年の部員からも「りゅーちゃんまた明日~」と輪唱でお別れ。

「ぐ。お、俺がオチ担当なのか……!」

ぐぬぬ顔の竜地でオチりましたとさ。


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る