第9話 一つの真実
「どういうこと?!なんでわかったん?!」
僕は先生に問い詰めるように質問した。
「確か、ウイルスみたいなのから恐竜と人間が逃げてた絵やんな?」
悠真も続いた。
「まず、ここは恐竜が疫病で滅んだ世界ってことは確定してる。ということは、壁画にあったウイルスのようなものは、ウイルスでほぼ間違いない。」
僕らは、うんうんと首を縦に振りながら話を聞いた。
「そして、ここに来て恐竜と人間が共存していた事実が判明した。壁画の恐竜と人間もこれで説明がつく。あとは、逃げている先にあった……」
「穴や!穴がこの洞窟のことか!!」
僕と悠真が同時に叫んだ。本当に学校の授業のようだった。僕らは、答えがわかった瞬間に先生の説明を遮り、先に答えを言うタイプの生徒だったからだ。
「そういうことね。おそらく、人間が家畜にする恐竜や動物を連れて、この洞窟に逃げ込んだんじゃないかな。それに……ここはきっと地底ね。」
僕は、なぜ先生にはそんなことがわかるのだろうと不思議に思った。
「え、地底?洞窟じゃなくて?」
「岩肌を見て。堆積層じゃなく、地殻の奥でしかできない鉱石が混じってる。」
先生はそう言ったが、僕には何のことかわからなかった。
「あー!先生、理科の授業の時そんな話してたような気がする!」
悠真が理科の授業を思い出したようだった。思い出したと言っても、ただその言葉を聞いただけで、内容を覚えていないことは想像できた。
「……うん、まあ洞窟という認識でも良いと思うわ。地表に洞窟の入り口があって、そこが地下に繋がっているという感じね。」
先生は、僕たちを納得させるために簡単に話をまとめてくれた。
「きっと、こんな地底世界があちこちにあるんじゃないかしら。地底に逃げられなかった恐竜や人間は絶滅してしまったのね。前の世界で見た、洞窟で亡くなった人は数少ない地表の生き残りだったのかも。」
僕は急に疲れを感じて、地面に寝そべった。疲れとは言っても、不思議と爽快感があった。
「あー、なんか疲れたなあ。これで現実世界では時間が経ってないなんて信じられへんわ(笑)。」
「ほんまやなあ(笑)。帰ったらすぐ寝るわ。」
悠真も懐中電灯をそっと置いて、ゴロンと寝そべった。
「二人とも、満足できたようね(笑)。少し休憩したら、帰りましょうか。」
先生はそう言って、石の上に腰を掛けた。
「あ!聞きたいことあってんけど、なんで内田先生は図書室の地下空間のこと知ってたん?学校の先生は皆知ってるってこと?」
僕は、ずっとモヤモヤしていたことを切り出した。悠真も体を起こして、先生を見た。
「その説明を全くしてなかったわね(笑)。まず、校長先生と私しか知らないわ。実は私も坂巻小学校の卒業生なのよ。そして、その時に私の担任をしていたのが今の校長先生なの。」
なんだか話が面白くなってきそうだったので、僕らは身を乗り出して話を聞いた。
「それで、田中君・佐藤君のように図書室の地下に辿り着いたんだけど、そこに担任の先生(校長先生)がいたのよ。同じように別世界を案内してもらって、説明を受けたわ。」
「先生は一人だけで行ったの?」
悠真が質問した。あの暗闇に一人で入れたのか、僕も疑問だった。
「ふふ。そうね。怖いもの知らずだったから(笑)。数年に一度ぐらい、図書室の秘密に気づく生徒がいるみたいで、その時はごまかしたりせず『真実』を教える暗黙のルールみたいなのがあるのよ。いつから続いていることかはわからないけど、そういうふうになっていったのね。」
「教えるのは誰なの??」
悠真が再度質問した。
「多分、学校の先生の中に一人は図書室の秘密を知っている人がいるのよ。私の時代で言うと、今の校長先生がいたけど、学校を去る際には違う先生に伝えたらしいわ。そんな感じで受け継がれてきたのね。表だっては話さないから、誰が知ってるとかはよくわからないけど(笑)。」
それはそうだ。表立って話していたら変な目で見られるかもしれない。僕だって誰かに言うとしたら人を選ぶだろう、と思った。現に、図書室の床の異変については悠真にしか話していない。
「要は人には言わず、存在に気付いた人にだけ教えるって感じか!もし誰もいなくなりそうなら、誰か信用できる人に伝えていくみたいな。その人が管理人さんの役割をするんやな!」
悠真はスッキリした様子だった。
「うん、そのイメージで合ってるわ。誰でも知ってしまったら、国の調査みたいなのが入って【一般人は入れない】みたいなルールにされるかもしれないし。なにより、こういう秘密ってあまり教えたくないものでしょ(笑)。」
先生は悪ガキのような顔でそう言った。きっと子ども心をずっと忘れずに大人になった人なんだ。今の僕と同じように。
そして、僕は元気に応えた。
「うん!!特別感が最高!!」
先生はニコッと笑い、手を差し伸べた。
「さあ、帰りましょう!」
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