第5話 パラレルワールド

「目次の中で、気になる滅亡説はある?」


内田先生は、僕らを真っ直ぐ見ながら問いかけた。


「陽斗は、どれが気になってる?」

「絶対これ!【疫病説】!」


悠真の問いに、僕は即答した。


ちょうどこの頃、僕らの世界でも、数年にわたる未知のウイルスの問題がようやく落ち着いたばかりだった。だからこそ、どこか他人事に思えなかったのだ。


「確かに一般的な説ではないし、気になるね。最近の私たちの世界とも通じる部分があるし。」


先生は「よしっ!」という表情で、次の言葉を口にした。


「じゃあ、行ってみようか!」

「え?・・・どういうこと?」


僕らは唖然とした。意味がわからなかったからだ。


「この図書室の本はね、書かれている真実に手を置いて目を瞑ると、その世界に行くことができるの。」


先生は真剣な表情だった。


「ほんまに?!」

「めっちゃ行きたい!」


僕らは疑わなかった。もはや異空間の図書室を見つけた時点で、それまでの固定観念は吹き飛んでいたのだ。


「ただし、注意点がある。その世界の真実は変えられない。見て辛いことがあるかもしれない。その覚悟はある?」

「大丈夫、余裕余裕!」


僕は即答し、悠真もうなずいていた。


この時の僕らは、“真実の世界に行く”ということをまだ理解していなかった。

せいぜい社会科見学に行くときのノリでしかなかった。


「じゃあ、先生が先に手を置くから、上から重ねてくれる?」


僕らは、すぐに手を重ねた。


「ちなみに、この図書室にいる間、私たちの世界の時間は止まっているからね。帰り時間は気にしなくていいわ。」


そう言って、先生は目を閉じた。


「最高やん!行こう、悠真!」

「うん!」


非科学的なことを言われても、もはや当たり前になっていた。

そして、僕らは目を閉じる。


次の瞬間、体が宙に浮くような感覚に包まれた。

目を開けると、そこは宇宙空間のようだった。そして、背中側に追い風を受けるような圧を感じる。


「やばい!めっちゃ楽しい!」

「ほんまに凄い!安全バーがないジェットコースターみたい!」


先生の方を見ると、微笑みながらこちらを見ていた。


「押されるままに身を任せていてね。自動で連れて行ってくれるから。」


時間にすれば30秒ほど。目の前に眩い光が現れ、僕らの体はその光に吸い込まれていった。


そして、景色が一変し、僕らは草原に立っていた。


僕は思わず呟いた。

「ここが・・・恐竜のいた時代?」


「恐竜のいた時代、というより【疫病説】の世界ね。あくまでも、誰かの研究による“誰かの真実”。パラレルワールドだと思えばいいかな。」


「もしもの世界ってことか!」


先生の説明で理解できた気がした。


すると悠真が質問を投げかけた。

「ここには恐竜がいるんですよね?僕らは、この世界の生物に認識されるんですか?それとも、一方的に見るだけで、認識されへんの?」


僕は心の中で思った。

「いやいや、さすがに認識されたら危なすぎるやろ。先生がそんな場所に連れてくるはずない。」


だが、内田先生の返答に僕は凍りついた。


「認識されるわよ。」


「・・・!?」


ガサガサッ。

グゥゥヴゥゥ〜。


近くの草むらに、生物が潜んでいる。しかも、かなり凶暴なやつだ。


そして、それは僕らの前に飛び出してきた――

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