サブカルから学ぶ必勝恋愛講座!

七瀬 莉々子

お隣に住む愛の探求者

 高橋カリン10歳の小学5年生。私には、お隣の家に住む仲の良いお姉ちゃんが居る。

 お姉ちゃんは少し変わっていて、何故かいつも白衣を着ているし、いつもお家に居て外に居るところを一度も見た事がない。

 あとよく分からないけど、どうやらお姉ちゃんは音声の商品を作ったり、パソコンのゲームを作ったり、薄い漫画(?)を描くのがお仕事らしく、前に一度どんなのを作っているのか知りたいって言ったら『君がもう少し大人になったら教えてあげよう』とはぐらかされた事がある。

 そうなると余計に気になる物で、私は更に食い下がってどんな物を作っているのか聞くと、お姉ちゃんは。


『そうだな。……色んな愛を追求し、探求し、形にしているのさ』


 そう、ドヤ顔で言い放った。

 正直、その時のドヤ顔の方が強く印象に残っていて、言っている内容はいまいち分からなかったけど、とどのつまりは愛のプロフェッショナルなのだろう。

 だからこそ、今の私にとってお姉ちゃんは救世主なのだ!


「博士! 私に好きな人を振り向かせるためのアドバイスを下さい!」


 今日私は強い決意を胸に、お姉ちゃんの家に突撃した。そして打ち明けるは恋の悩み。

 ちなみに博士というのはお姉ちゃんのあだ名で、お姉ちゃんが愛の研究をする人で家では常に白衣を着ている事から、私は普段お姉ちゃんの事を博士と呼んでいる。


「突然の事で驚いたが……そうか、君もそういうお年頃になったわけか」

「私ももう10歳だからね! クラスにはもう彼氏がいる子もいるよ」

「もう10歳だからね、か……。私は今年で26だが、未だかつて彼氏なんて生命体は居たことが無いのだが? もしや家に引き籠っている間に、いつの間にか私は異なる世界線に迷い込んでしまったのではあるまいな」


 そう言って暗い顔をして考え込みだす博士。

 突然スイッチが入ったようにぶつぶつと呟きだして考え込みだすのは博士のいつもの癖だ。

 そして大体の場合は少し待つとすぐに復帰して普通に話し出す。……5、4、3、2、1。


「ところで、君の寵愛を受ける羨ましけしからん相手とは何処のどいつなんだい?」


 ほらこの通り。いつも計ったようなタイミングで元に戻る。


「えっとね……お兄ちゃん」

「……一人っ子の君が言う『お兄ちゃん』とは、もしかしなくても我が愚弟のことかい?」

「うん」

「それはなんとまぁ……一先ずあいつは縛り首にでもしておくべきか」

「なんで!?」


 19歳の大学生であり、博士の弟でもあるお兄ちゃんを振り向かせるアドバイスを貰おうとしたら、何故かお兄ちゃんが生命の危機となってしまった。

 多分冗談だとは思うけど、博士は常に声色がマジっぽくて冗談なのか本気なのか分からないのが恐い。


「ふむ。確かあいつは今大学だったな」

「は、博士、どこ行くの?」


 物騒な事を口走ってまたも何か考え込みだした博士が、突然立ち上がり歩き出した事に驚き、まさかお兄ちゃんに危害を加えに行くのではと戦々恐々しながら行先を尋ねる。


「何はともあれ、適切なアプローチのためには相手の事を知らねばなるまい。故に……あいつの部屋へと忍び込んで、ベッドの下やらパソコンの中を物色してくるのさ」


 そう言って博士は、うきうき顔でお兄ちゃんの部屋へと向かった。

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