強制転生させられた僕は人生とはなにか考えさせられた
ネコの額ほど度量が狭い
プロローグ
『これは自分の決断だから後悔は無い』
そう言い聞かせ、目の前にある大量の鎮痛剤を皿に出し始めた。すべての鎮痛剤を出すのにはかなりの時間がかかった。
僕がやろうとしているのは、服薬自殺である。
死ぬと決めたのになにか大きな理由がある訳ではないが、何かが僕を蝕んでいるのは間違いない。
その正体不明な恐怖に僕は負けたのだった。
『父さんにゴメンなさい』と書いた手紙をテーブルに置いた。そんな事では許されないことは分かっている。それでも自分を抑えられなかった。
口に鎮痛剤を放り込むと、大量の水で無理やり、薬を飲み込んだ。喉が痛み、手が止まりそうになったが、手を止めることは無かった。
少しづつだが意識がぼ〜っとしてきた。
それでも僕は薬を飲むのを止めなかった。
最期には意識も心臓を止まり、僕は自分を終わらせた。
不思議な感覚で目覚め始めた。
『これが死か?』
そう思っていると、どこからともなく声が聞こえてきた。
「生きてるかい? ─────、生きてるかいは可笑しいか!」
声の主はそう言って笑った。
その声で少しづつではあるが、周りの状況が分かってきた。
自分が居るのが、甘い匂いが充満したお菓子の部屋であった。何故それがお菓子の部屋かは分からないが、頭の奥ではそう認識されていた。
僕の知らない名前のお菓子が沢山あるが、そんな事はどうでもいいことである。
「はじめまして、君のが来るのをずっと待っていたよ」
また、先程の声が聞こえてきた。
その声のする方に顔を向けると、そこにはケーキを食べる少年がいた。
少年はケーキを食べるのに一生懸命だが、その目は僕から視線を外すことは無かった。
少年は白のスーツを着ていて、中性的な顔立ちから少年と思ったのは勘だけでそう思ったのだった。その身に纏った雰囲気から少年が何者なのかがまったく分からなかった。ただ、少年の何を考えているか分からない笑顔が印象的であった。
「突然で驚いているかもしれないが、私は君たちの認識で言う神ってやつだよ」
「神!」
僕は言葉を失ってしまった。
神が何かは分からないが、僕が不思議な場所に迷い込んだのは間違いない。
「君は自殺しようとしたんだよ。本当に死んでしまいそうな所を僕がここに連れてきたんだよ。そうそう、神に性別はないから、少年と思っても構わないから好きにしていいよ」
神と言うだけあって、僕の頭の中も分かるのかもしれないが、もう驚く事も無かった。
自分が何をしようとしていたのは思い出したが、肝心の自分が何者なのかが思い出せずにいた。
「仕方ないよ。君の脳は半分は死んでいたからね。それもいつかは思い出すんじゃないかな」
少年は面白そうに笑っている。
少年の言いたいことが理解出来ずにいると、神を名乗る少年は話しを進めた。
「これから君には旅に出てもらう。その旅で自分のした事を考え、正しい答えを出してほしいんだ」
先程から、少年は僕に話すタイミングをくれなかった。それでも、少年がケーキを食べようとするタイミングで一気に捲し立てた。
「旅ってなんだい?──、僕は僕が何者かも分からないのに何をさせようっていうんだい?なんの説明も無いのかい?」
「君の知りたいことを探す旅。それが君の目的なんだから、今は何も知らなくてもいいんだよ!」
「・・・・・・・。」
「それでも不便だから、君に名前だけはあげるよ。君は今からアレク(仮)って名前だよ。いい名前だろ」
少年は満面の笑みを見せた。
「アレク、旅の先で答えが出るといいね」
そう言うと、僕の視界がまたぼやけ、自分がどこにいるのかもわからなくなり、長い旅の一歩を踏み出した。
僕の足元にいる何かの存在に気付くことは無かった。
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