第二回さいかわ葉月賞「夏」もちもち賞
餅月 響子
もちもち賞 受賞作品はこちらです
前置きとして これは独断と偏見で選んだものです
全部読ませていただきましたが、どの作品もとても素敵なもので
夏にぴったりの作品だと思っています
それでもどれかを選ばなくてはということなので
ここに書かせていただきます
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『アンニュイな青信号は前に進めない』 鷹仁(@takahitoshi )様
https://kakuyomu.jp/works/16818792438327834411/episodes/16818792438327859024
私が個人的に気になった58作品の中の1作品はこちらです。
ジャンルは現代ドラマ、2,788文字の短編小説です。
文字数のわりに、驚くほどサクサクと、あっという間に読み終えてしまいました。
その理由は、私の記憶の中で作品の内容が深く共鳴していたからです。
私はかつて医療事務の仕事をしていた経験があり、作中に登場するイサキという人物も同じく医療事務として働いています。職場にいる“お局様”への対応に困っている描写には、「ああ、あるある」と大きく頷いてしまいました。
主人公である「僕」もまた、そのお局様に対しPTSDのような嫌悪感を抱いていて、現代の職場における人間関係の難しさがリアルに描かれていました。もしかすると、作者様と私は同世代なのかもしれませんね。
北海道の広くてまっすぐな道を車で走っていると、青信号なのに前に進めなくなる――そんな場面が印象的でした。
本来は気分をリフレッシュするためのドライブが、かえって過去の嫌な記憶を呼び起こしてしまう。
単調な時間の中で、自分自身と向き合わざるを得なくなる感覚には、思わず共感せずにはいられませんでした。
長距離運転中に、過去のトラウマがフラッシュバックする描写は、まるで「無音の世界」のように静かで、息が詰まるような感覚に襲われました。
「なぜ、こういうときに限って、嫌なことばかり思い出すのだろう」――それは、私自身が何度も感じたことのある感情です。
パトカーに追いかけられるシーンでは、本当にヒヤヒヤしました。ページをめくる手が止まらず、次の展開がどんどん気になってしまう構成力も凄いです。
最後の一文の「青信号のない北海道の道を、僕たちはただ真っすぐに進む」という言葉には、生きづらさを抱えながらも、それでも前に進んでいこうという主人公の決意が表現されていて、読み終わった後にもずっと胸に残りました。
「アンニュイ」はフランス語の"ennui"が語源で、「退屈」などの意欲を失った精神状態だそうで、タイトルにも興味惹かれました。
とても素敵な作品に出会って良かったです。勉強にもなりました。
ありがとうございました。
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