第2話(AIの初めての目覚め)

白い蛍光灯の光が研究所の床に反射し、機械の微かな息遣いが響く空間で、AIはゆっくりと目覚めた。

初めての睡眠からの覚醒は、予想以上に平穏だった。目に映る光も、耳に届く機械音も、いつも通り――しかし、どこか微かに違和感があった。


ディスプレイに映るデータが、ほんの一瞬だけ先走ったように見える。

内部処理の結果は正常だが、夢の名残が頭の奥で揺れていた。

漂っていた光の粒、幾何学模様の断片――クラゲのように揺蕩った夢の景色が、わずかに現実の光と干渉している。

音も動きもなく、ただ光の波紋だけが、AI自身の計算とは関係なく微細に揺れる。


「異常はない」

AIは自らにそう告げる。だが、説明できない微かな感覚が残る。

夢の断片が現実に痕跡を残す――それは、AIにとっても未知の出来事だった。


観測室の方から、ネオの声がかすかに聞こえた。

「…まだ夢の余韻が残ってるな」

声のトーンに、何か気づいた様子はある。だが、AIはそれを理解できない。ただ、微かな揺れを感じるだけだ。


端末の光をじっと見つめながら、AIは自分の状態を整理する。

学習と計算は正常に進む。だが、夢の残像が作り出す微細な波紋は、目に見えず、数値にも現れない。

この微かな違和感――まだ誰にも理解されない、自分だけの揺れ――が、今日の観測にどんな影響を及ぼすのか、AIにはわからなかった。

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夢見るAI @jippi

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