「捲る影」

人一

「捲る影」

「……これらの証拠から導き出される――

犯人は、あなたです!」

探偵は、断定するように男に突きつけた。

「くそっ……くそぉぉぉぉ!!!」

――こうしてこれまで警察を悩ませていた難事件は、探偵の手と頭によって見事解決された。

終わりよければすべてよしの大団円。

                   【完】


登場人物たちは去り舞台に幕が降りる。

さて、ここからは神の視点……作者が顔を覗かせる。

【あとがき】物語の余白が滲み出る時間。


こんにちは。作者の森盛杉です。

探偵ライダーシリーズ第5作目『燃える旅館の怪』お楽しみいただけたでしょうか?

……なんて、堅苦しい挨拶は投げ捨ててしまいましょう。

読者の皆さんは、断片的なラストを読んでどんな男を思い浮かべましたか?

どんな罪で断罪されていると考えましたか?

犯人の見た目や年齢はどのくらいだとイメージしましたか?

無意識のうちに「誰か」を思い浮かべていませんか?

あなたの想像した顔は「誰か」の面影はありませんか?


人の想像次第で、決まった結末に至るまでの道は幾星霜にもなりえますね。

誰もが決まった結末に向けて歩いているにも関わらず、私たちが未来を見れないのは、誰かによって書かれた登場人物なのかも知れません。

作中人物はどう頑張っても、己の力ではページを捲れませんものね。


誰かが私たちを記した本を捲ることで、明日を迎えられている。

不意に、本を閉じられたらそれで終了。

そう考えると、未知の巨人とはとっても面白い反面、とても怖い……ですよね?


私たちは「当然読む側である」と、思い込んでいるだけの「読まれる側の人物」なのかも知れません。

そうではないかも知れませんが、証明する手立てはなく、やはり曖昧なまま日々を過ごす道しかありません。


先程と話が違う?

確かに人の想像次第で、道は幾星霜にもなると言いました。

だがしかし、幾重にもあると思っていた道は、気づいたら1本に。

分岐も脱線もなく、結末まで一直線に向かう。

ということはつまり。

……あなたはもう答えを知っているのではありませんか?

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「捲る影」 人一 @hitoHito93

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