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女子高生A「知ってる?この辺で殺人事件があったんだって」
女子高生B「え?殺人?こわ…」
女子高生A「あそこのコンビニの向かいのとこ!人気ないとこで男の人が血流して倒れてたんだってさ!」
女子高生B「は!?嘘!学校までの近道なのに!最悪!!」」
女子高生C「あーそれ聞いた!私のお兄ちゃんが死体見たらしいんだけどさ、なんかめっちゃ血まみれだったらしいよ…それに噛み跡とかあったって」
女子高生B「うわグロ…なんで噛んだの…!?なんのために!?キッモ!!」
女子高生A「あー!あれでしょ、あのー、サイコパスってやつ!」
女子高生C「マジでキモすぎるよね~早く犯人捕まってほしい~」
─────
女性A「知ってる?向かいのお宅の鈴木さん家の息子さんの透利くん!!殺されたんだって…」
女性B「それ聞いた…!最近変な死体がよく見つかるって聞くから、それかしらね…いつも会うたびに挨拶してくれて、良い子だったのに…!」
女性C「連続殺人鬼ってやつかしら?怖いわね…」
女性D「…そうだ、鈴木さんご夫婦、透利くんに一人暮らしなんてさせるんじゃなかったって泣いてたって聞いた…!」
女性A「ストーカー騒ぎもあったって話じゃない?透利くんかわいらしいし優しい子だったから…もしかしたら、ずっと狙われてたんじゃないの…?」
女性D「そりゃあお母さんも一人暮らしさせたこと悔いるわね…」
女性B「確かお姉さんの由唯さんもちょっと前に事件に巻き込まれたんだっけ?」
女性C「そうそう!あの宗教団体が起こした立て籠り事件に!大変な一家…」
女性A「鈴木さんのご夫婦、ずっと塞ぎ込んでるって話じゃない…?私見てこようかな…」
女性C「私も行く…あのお二人にはお世話になってるからね…」
女性B「お菓子持っていこうかな?それは不謹慎かしら…」
─────
女子高生D「あの殺人事件あったでしょ?男と男の痴話喧嘩って聞いた!私のお母さんが言ってた!」
女子高生E「あー!それ私のお母さんも言ってた!確か…殺したやつが、殺されたやつと付き合ってるって思い込んでたんだっけ?」
女子高生D「そうそう!ストーカーが『俺を見ないなら殺してやる~!』って殺したんだよ!」
女子高生E「うーわ…怖すぎ…そんなん逃げようが無いじゃんね…」
─────
子供「いってきまーす!」
母親「いってらっしゃい!五時までに帰ってこなきゃダメだよ!」
子供「えーなんでー?」
母親「早く帰ってこないと…血まみれのお兄さんに噛みつかれちゃうから!」
子供「?なにそれ!」
父親「あ、それパパも知ってる!このあたりでね、夜に一人で歩いてた男の人が…後ろから……ガブ!っと噛みつかれたんだって…!」
子供「え!?噛みつかれたの…?」
父親「そう。ダダダダー!って追いかけられるらしいよ!噛みつかれると……次は君が噛みつきお兄さんになっちゃうんだよー!!」
子供「わー!!!」
母親「あんまり怖がらせないで…でもね?そのお兄さんは夜に一人で居るから出てくるんだよ!」
父親「あと鏡もだ!」
母親「そうだったね…!一応折り畳みの鏡持っていって…!」
子供「わかった!早く帰ってきます!」
母親「良い子だね、気を付けて!」
父親「早く帰ってくるように!」
子供「はーい!」
─────
刑事「何か分かったか」
解剖医「見れば見るほど分かんなくなる…ほら、見て。被害者の身体に残されてた歯形。この首のとこのやつ」
刑事「これが致命傷なのか?」
解剖医「それもだし…ほら、見てわかんない?被害者の歯形と完全に一致してんの」
刑事「被害者の歯の模型を作って…それで噛ませて、無理矢理引きちぎった……もしくは、被害者が、自分で自分を噛み千切ったとか…?」
解剖医「そうなるよね」
刑事「もしも彼が自分で自分の身体を噛み千切ったとしたら…錯乱していた?なら幻覚剤を盛られたのか?聞き込みでは被害者に付きまとってるストーカーが居たって話だろ…そいつが容疑者だ。そいつに何か盛られたりしたんじゃないか?」
解剖医「薬物反応は何も出なかった」
刑事「は?」
解剖医「それに噛んだ場所もおかしい。首、右肩と、太もも、それと、腰だよ。歯形を作って引きちぎった線が濃いかもね」
刑事「…腰か……」
解剖医「うん。それにさ、被害者が自分に噛みついて噛み千切ったんなら、歯に付着している物以外、胃袋には肉片とか血とかがあるべきでしょ?あったのは手の指だけ…小指と…薬指」
刑事「その口ぶりからして消化したって線も無………指?…この人の手の指は?」
解剖医「見ての通り全部揃ってる。だからこそ不気味なの…今出てきた指のDNA鑑定してるけど…なんか、めっちゃ嫌な予感するよね…」
刑事「ありがとう。確かに嫌な予感がするな。一旦分かってる部分をまとめてくれるか?傷口と死亡推定時刻、そして胃の内容物からするに、二つの説があるんだな」
解剖医「うん」
刑事「一つ目は、被害者は何らかの影響で錯乱して、自分の身体に噛みついて、それ故の失血死、だから自殺。そして二つ目はそう思わせるために、被害者の歯形を作成し、それを使って被害者の身体を引きちぎった、他殺…と」
解剖医「うん。もし一つ目だとしたら胃袋に血や肉片が無いのはあり得ない。現場にはなんかあった?この人が自分を噛み千切って飲み込まずにペッと吐き出したんだったらある筈だし……今のところ二つ目の説が濃厚だね」
刑事「分かった。これは殺人事件という線で行こう。現場に何かあったか聞いてみるよ」
解剖医「ありがとう…ねえ、幻覚剤の線は本当に無いのかな」
刑事「?…すまん、電話だ…」
解剖医「あ、待って?身体に残んない幻覚剤だってあるかもしんないよね?それで錯乱してたんだったらさ?腰あたりを噛み千切れなくもな…いや、それはないか?骨折れてないし無理に曲げた訳じゃなさそうだし……あ、この人の身体が尋常じゃなく柔らかいとか…」
刑事「…今連絡が来た。現場には、この人の遺体と遺体から流れてる血以外何も無かったらしい」
解剖医「……そっか。なら歯形作って引き千切られた線が濃厚だね」
刑事「一応、幻覚剤の説を潰すために聞こう。被害者に双子の兄弟はいるか?」
解剖医「…いないね。それに双子でも歯形は異なるんだよ。これは全く一緒なの。だから…引き千切られた説を立証するためには幻覚剤よりも必要なものがあって…この人が…ね」
刑事「……おい、まさかお前…被害者が二人居て、お互いに噛みつき合って殺し合ったって言いたいのか?」
解剖医「推理はそっちの仕事だよ、私にはさっぱ……あ、鑑定の結果出た!」
刑事「指か?どうだった?誰の指だ?」
解剖医「………」
刑事「……何だよ」
解剖医「……やっぱ予想当たってた」
刑事「…ストーカーの指かと思ったが…」
解剖医「違うね。この指の持ち主、この人本人だ…」
刑事「……」
解剖医「…その、さ…察してるだろうけど、歯の間に挟まってた血とか肉片とかも…この人本人の物なんだよ…」
刑事「……じゃあ、さっきお前が言った、三つ目の説が、一番濃厚ってことか…」
解剖医「…それ以外あり得なくない?だって、指出てきてんだよ…」
刑事「…本当…なんだ、それ…」
おわり
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