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嘘だと聞いた。
職場で、都市伝説は全て嘘だと聞いたんだ。
鏡に吸い込まれるという都市伝説。
鏡は危険だから子供に近付かせないように大人が流した嘘だと。
理科室の人体模型も目玉が飛び出す程に高額だから、子供がむやみやたらに触らないよう、深夜になったら動くと嘘を付いたんだ。
深夜の音楽室。そう。何よりも高額なピアノがある場所。
子供が近付かないように、むやみに触らないように「深夜に誰かが弾いている」なんていう嘘を流したんだと聞いた。
口裂け女の彼女も、出現する時刻は夜、もしくは夕方。
子供が早く帰ってくるように。
子供が夜遊びしないように、全部子供のために流した嘘。
川辺の河童も、お盆の海も、火遊びしたらおねしょするのも、てけてけも、トイレの花子さんも全部嘘。
子供を守るために大人が吐いた嘘なんだと。
子供は大人の宝物だから、守るために吐いた嘘なんだと聞いたんだ。
カウンセリング帰り。
エレベーターの鏡は見ないようにした。
そして、病院の売店で折り畳み式の鏡を買った。
家に帰って鏡に映る自分を見た。
変わらず睨む自分。
「黙ってろ、殺すぞ」
鏡の中の自分は、そう言うと睨むのをやめた。
怖がらなくてもいい。
あんなのは、単なる噂だった。
お父さんとかお母さんとか、先生達が自分達子供を守るために吐いた嘘だったんだ。
なら気にしなくてもいい。
鏡の中の自分は穏やかに微笑んでいた。
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