第7話 最悪高記念日
○
私、神永ユイは、今日も今日とて出勤する。
しかし、足取りがいつもより遥かに重い。そう、何を隠そう、今日は週明けの月曜日。
天国のような週末が終わってしまったという事だけでも十分憂鬱なのだが、
今日は対新人類委員会の活動に参加しなくてはいけない。
はぁ、最悪だ、今日は最悪の日だ。最悪記念日だ。
等とボソボソ呟きながらフラフラと研究室へと向かう。
「ォハヨ...」
羽音のような挨拶をし、ドアを空ける。
中にはいつも通り誰もいない。
「ん?」
しかし、いつもとは点があった。
机の上にクーラーボックスが置かれている。
「あー!そういえば、今日新人類さん達の血が貰える日だった!」
一気に私のテンションは爆上がり。
急いで机に向かい、中身を取り出し、クーラーボックスを投げ飛ばす。
「うわ、最ッ高!!今日という一日は
最ッ高!!最高記念日!!」
等と燥ぎながら、血が入った瓶を綺麗に並べる。
「ムホー、壮観壮観! 変なカルト集団に入れさせられて可哀想な私にとっては君達と先輩だけがオアシスだぜ」
•••
「少し落ち着くか」
かれこれ三十分程キャーキャー言いながら一人で騒いでいると疲れてきた。
椅子に座り、陳列されたビーカーを満足げに見つめながら目を閉じる。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
「おい、君、起きろ。おい、起きたまえ」
ハッと目を覚ます。
いつの間にか寝てしまってしたらしい。
時計は五時三十分を指している。
あれから約七時間も寝たというのか。
信じられない。
「ようやく起きたかね。全く手間をかけさせる」
目の前にはあのメガネが居る。
信じられない。
「さあ、君。委員会の時間だ、我々の拠点に来たまえ」
バブル崩壊である。
今までの有頂天は気持ちは何処えやら。
一転、今はゴミみたいな気分だ。
少し歩くと拠点に着いた。
中に入ると昨日より若干少ないが、メンバーの奴らが待っていた。
「遅れてすまない。彼女が無断で来なかったからな、探しに向かっていた」
どうやら私は遅刻したらしい、しかも無断で。
昨日新人類を轟々と批判していた奴が私を見て舌打ちをする。
アイツと関わるのは止めよう。
というか、あと一人足りない気がするのだが。
「あの、更級先輩は今日は来ないんですか?」
と尋ねるとメガネがハキハキと答える。
「あぁ、彼女はそんな名前だったか。
彼女は今日医務室に用事があるらしいのでな、来れないらしい」
そんな! 私のオアシスが!
ということは、私は今日一人でこの空間に居なくては行けないのか?
死んだがましかな。
それからの事は殆ど覚えていない、と言うか思い出せない。
反乱が起きたらどうこう...
といった感じの事を話した気もするが、これ以上考えると身体に影響がある気がするので止めておく。
取り敢えず、地獄の委員会は終わった。
後は帰るだけだ。
と、小走りで帰路についていると
ドンッ!!
人にぶつかった。
「あっ、ごめんなさい」
と謝りながら顔を見ると
「此方こそ、申し訳ない」
サイト長だった。
「ヒィッ、サイト長! すみません!ぶつかってしまって」
「本当に気にしないでいい。神永ユイ研究員」
名前覚えてるのか。全員分覚えてるのかな?
「研究は順調かな?」
「ウッ、も、ちロンデス」
最近変なのに絡まれてまともに出来てませんけど。
「ハハハ、まぁ、変わらず精進してくれ。期待しているぞ。なんたって日本で最も新人類に詳しい研究員なのだからな。」
と、サイト長は柔らかい笑顔で言った。
こんな表情するんだな、と一瞬思った。
「はい、精進して参ります。有り難う御座います」
と言い、その場を離れる。
• • •
ウヘ、ウヘヘへ、サイト長から褒められチマッタゼ。オイオイ、期待してるってさ。
オイオイ、頑張っちゃうぜ。
最悪の一日だったが、帰り道はいい気持ちで歩くことができた。
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