第5話 メガネ、襲来


          ○

メインホールで支部長がアメリカで新人類による暴動が起こったと説明した後、

皆、己の仕事場に戻りながら支部長が言ったことについて話していた。


私もナミ先輩と話しながら歩く。


「ふあぁ~~~~。 んー、まだ少し眠いな」


「あんた、よくサイト長の目の前で寝れるね。 私は怖くて無理だわ、あの人、真顔で殴ってきそうだもん」


「今日、いつもより早く起きたのでそのせいですね。 明日からはいつも通りの時間に起きます」


などと他愛もない会話をしていると、突然メガネをかけた男性が小走りでこちらに来る。


なんだなんだと思いながら様子を伺うと、その男性は早口で話し始めた。


「君達、のほほんと談笑しているようだが、アメリカでは今、テロが起きているんだ、そんな余裕は無いだろう!

我々と共に日本であいつらがテロなどを起こせないよう協力しないか?」


おうおう、元気な奴だな。等と思いながらナミ先輩の方をチラリと見ると、あからさまに嫌そうな表情をしていた。


まぁ、先輩が得意なタイプの人間では無いだろう。そもそも、このような人間が得意な人などいないと思うけど。


取り敢えず、面倒臭いことになりそうなので、断りを入れようと口を開く。


「すまん、私h」


「遠慮などしなくていい!人手など多ければ多いほど良いんだ。君達がいかに仕事が出来ない人でも、裏方として活躍できるはずだ。

さあ、僕達の拠点に移動しよう!話はそこでしてもいいだろう」


こいつ、人の話を遮って喋りやがった、しかも言い草がいちいちムカつくな。


こいつは多分、イエスと言うまで粘着してくるような奴だ、全くもって気色悪い。


「先輩、これは多分逃れられませんよ、行くしかないと思います」


「うん、そうっぽいね。最悪だけど行くしかないか」


と、腹を括り、渋々とそのメガネの男性に着いていく。


小走りで進んでいく彼に何とか追い付きながら十分ほど歩いたらその拠点とやらに着いた。


「ようこそ、我等、対新人類委員会の拠点へ」


と、メガネが誇らしげに言う。

どうやらその謎の委員会には彼だけでなく他に十数人ほどいるらしい。

皆、椅子に座り私達を見ている。


「まずは自己紹介だ。さあ、背の低い方から自己紹介をしてくれ」


と促され、ボソボソと話し始める。


「こんにちは、研究員の神永ユイです。宜しくお願いします」


「宜しく!じゃあ次はそちらも頼む」


「こ、こんにちは、開発で働いてる更級ナミです、、、宜しくお願いします」


先輩は大分嫌そうだ。勿論、私も一刻も早くここから出たい。

しかし、彼らは鈍感なのか、楽観的なのか、そんな様子は全く気にせず、ペラペラと話し始める。


「宜しく、僕はこの対新人類委員会の副会長をしている。加藤ユキナガだ。この委員会のことなら大抵知ってるから、不明点等あったら聞いてくれ」


成る程、コイツは副会長らしい、こんなに偉そうな奴が副会長なら、会長はどのような人なのだろうか。


「あの...」


先輩が口を開く。

メガネが犬の様に食い付いてくる。嬉しそうだ。


「なんだい!?更級君」


「対新人類なんて名前の団体なんですけど。ここにいる皆さんは、新人類の事を嫌っているんですか?」


「当たり前だろ!」


今まで端で黙っていた奴が突然立ち上がり、喋り始める。椅子が勢いで倒れそうだ。

孤独でいることで雰囲気を出そうとしてる奴かと思っていたが、そうでもないらしい。


「あんな運良く優れた身体に産まれただけの奴らが俺らのことを旧人類とか言って見下して。

挙げ句の果てには『我々は旧人類どもに圧制されてる』とか変なこと言ってテロ起こしてんだぜ!?

好きになれって方が難しいね」


結構喋るな、どうやら相当嫌いらしい。


確かにメインホールで鼻の高い男が演説している映像を見た記憶がうっすらある。そんなことを言っていたのか。


「成る程、、、分かりました」


と先輩が言う。

それに続いてメガネも話し始める。


「まぁ、そういうわけで我々は忌むべき新人類がここ、日本でテロ等を起こせないように対策を講じているんだ。

もう、作戦もある適度考えている、是非読んでくれ」


ドスンと重苦しい音が目の前で鳴り、優に五百ページはあるだろう書類が置かれた。


「まず、それを読んで、毎週月、火、金、土にここの拠点に来てくれ、それが委員会の一員としての最低限の仕事だ」


いつの間にか加入したことにされている。


少し早起きしただけで最悪の一日である。

もう二度と早起きなどしないと、心の底から誓った。

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