第2話:夏だ! 休みだ! 海か!? 山か!?



 夏だ!


 夏休みだ!


 海だ! 山だ! 合宿だ!



 って。


 去年の夏休みは『八時間目の特別授業カリキュラム』の活動の一環とかの名目で。


 海辺の別荘に泊りで合宿とかやったなぁ、と、思い出しつつ。


 今年は。


 諸般の事情により。


 日帰りのバーベキュー。


 会場は。


 八時間目の新メンバー、一年生のきゅーちゃんこと、九重ここのえゆうさんの、ご自宅ってことになって。



 会場の最寄り駅で、一旦落ち合って。


 そこから九ちゃんのお家までは、お迎えの車を出してもらえるそうな。


 今、ちょうど電車でその最寄り駅に到着。


 ホームへと降り立って、改札へ向かおう、と、していたらば。


「あーっ! まあや発見!」

「同じ電車に乗ってたんだ」

「やけに後ろの方に乗ってましたのね……」


 三人組の、女性。


 声をかけて来た順に言えば。


 金髪碧眼で小柄な、坂ミリィ先輩。

 おさげ眼鏡の、原ツグミ先輩。

 黒髪ぱっつんロングで少し大柄な、里サクラ先輩。


 の、お三方。


 並んで歩くと、その名の通り『』な背の順。


 ちなみにあたしの身長はツグミ先輩と同じくらい。


 そんな三先輩方に。


「おはようございます。うちの最寄り駅だと後ろの方が近かったもので」


 あたしも、朝のご挨拶。


「そっかそっかー」


 ばしばし。


 金髪子先輩に背中を叩かれるけど、さほど痛いわけではなく。


 あー。


 先輩たちと最初に出会った時の印象から『金髪子先輩』『おさげ子先輩』『ぱっつん子先輩』みたいな風に呼んでたりする。


 もちろん、実際に声を掛ける時には『ミリィ先輩』『ツグミ先輩』『サクラ先輩』って、普通に名前で呼んでるけど、ね。


 当時は、まさか名前で呼ぶなんて思いもしなかったけど。


 いやぁ、なんか、すごく仲良くなって。


 仲良くなりすぎた感も、あって、色々となんかもできたりしてる。



「それにしても電車の中は冷房が効いていてよろしいですけど、外出ると地獄の暑さでやがりますわね……」


 ぱっつん子先輩が、早速ハンカチで額をふきふき、暑さを愚痴る。


 お嬢様風の喋り方なのに、何故か時々、悪態? みたいな台詞が混ざる、少し不思議な方。


「改札の外で待ち合わせ、だったよね、行こ」


 ツグミ先輩を先頭に、改札へと向かう。


 ずらり並んだ改札機。


 先輩たちは、ほぼ中央を、ピッって感じでスマートに突っ切るけど。


 あたしは。


「あぁ、待って下さい」


 一番端の改札機へ、迂回して。


 を、投入。


「なんだまあや、今時、切符なの!?」


 金髪子先輩が掲げる、カード。


 交通系のICカード。


「電車って滅多に使いませんからねぇ、それ、持ってないんですよ」


「いやいや、電車だけじゃなくて色々あちこち使えて便利でしょ、コンビニとか自販機とか」


 おさげ子先輩の、おっしゃる通り、なのでは、ありますが。


「なんかいちいち課金するのが面倒そうで……課金忘れてピーっ! とかエラーになるのが怖くてですね」


「なんか、意外ですわね、しっかりしていそうなのに。お母様らしくないですわ」


 そして何故か、先輩たちからお母さん扱いされてたりする……。


 なんでも、お節介、というか、世話焼きというか、世話好きというか。


 いろいろ、ツッコミを入れてたら、なんか『お母さんみたい』って。


 言われてるんだよなぁ。


 自分では全然、そんなつもりは無いんだけど!?


「あはは、そうですかねー?」


 とか、ごまかしながら改札を出て、少し移動すると。


「あー! せんぱーい! おはようございまーす!」


 って。


 聞き覚えのある、元気な声が聞こえて来た。





――――――――――――――――――――――――――――

本日21:21もう一本!



  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る