第2話 洋梨のコンポート

〜 洋梨のコンポート 〜



秋の夜、窓から差し込む月光がテーブルをそっと撫でる。

そこには、柔らかな光を湛えた洋梨のコンポートがひと皿。


(洋梨をそっと二つに割ると、果肉が静かに光を反射し、

まるで夜空に浮かぶ小さな星のように輝く。


白ワインと練乳の海で、ひととき、ゆらりと煮る。

時間はゆっくりと流れ、甘い香りが部屋に満ちていく。

その香りは、まるで秋の風が運んできた秘密の贈り物のようだ。


そして冷やして、夜のテーブルに戻す。)




ひんやりとした果実を口に運ぶと、舌に溶ける甘さは柔らかく、

けいちゃんの低く澄んだ声の余韻とともに、胸にふわりと広がる。



テーブルの向こうで、彼はそっと微笑む。


「香りも味わって…秋の光を閉じ込めたんだ」


子どもっぽい誇らしさが混ざったその声に、私は息を飲む。


甘く、柔らかく、官能的に。


秋の夜は、洋梨の香りと彼の存在に染まり、


片思いの時間がゆっくり、静かに流れていく。











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