第2話
「私の魔術書が怖いって、どういうことよ!」
「だって、この前エリの魔術書を開けようとしたら、エリの魔術書を守ってる精霊さんに噛まれたし...」
「それは、無断で中を見ようとする変態気質なタカシが悪いわ!」
それは......タカシが悪いな。ただ、もし触るだけでもそんな態度をとる精霊さんがいるならば、どうやって魔術書をジップロックの中に入れることができたのだろうか?
「タカシ、どうやってそのジップロックの中に魔術書を入れたんだ?」
「それはだな......エリの魔術書を守っている精霊さんの好物、金平糖を渡したら持っていくことを許可してくれたんだ!!」
チョロい! 精霊があまりにもチョロすぎる! もうちょっと魔術書を守る責任を持ってほしいものだ。
「あの子ったら、本当に金平糖に目がないのね! 困ったものだわ」
あれ? 話が少し脱線しているような...?
「ところでタカシはどうして魔術書をそこに入れてるんだっけ?」
「はっ! そうだった! ユウマの隣にいるエリが魔王って話だよ!」
そういえば、そんな展開になっていた気がする。さて、どうすればいいのだろうか。
俺が次のセリフに困っていると、タカシが剣を取り出した。
「悪いけど、エリ。ぼ、僕は君を許せない! 僕たちと同じように冒険して、世界を救おうって出発を決めたばかりじゃないか!! それなのに、どうして...」
タカシはそう言って、膝から崩れ落ちた。タカシの服装を改めて見ると、騎士のような格好をしている。ってことは、タカシの配役は騎士になるか? あれ? でも騎士がいるってことは、勇者の俺いらんくね?
俺が突っ立っていると、エリが俺の背中を強く押した。突然のことで俺は、体勢を崩してタカシの方へと転がった。
この部長の俺を押して、転がせるなんて許せない。しかも、お客さんたち! 頼むから笑わないでくれ、これ結構、痛いんだよ。
俺を押しのけたエリは、ドヤ顔をしつつ仁王立ちでタカシと俺に向かって言い放った。
「悪いけど、私にも魔王をしている、ちゃんとした理由はあるわ! もし、タカシとユウマが私と戦うっていうのなら、私はこの勝負に負けるわけにはいかないわ!」
エリはそういうと、ローブの内側のポケットから杖を取り出した。俺は起き上がって、さっきエリから渡された剣を取り出した。
「さあ、勝負だ! かかってこい!!」
俺がそう言うと、エリは考え込むように手を口に当てていた。そして歯切れが悪そうに、顔を上げた。
「...わかったわ。でも、遠慮はするつもりないから!」
そう言ってエリは、杖を振り上げた。
「さあ! 剣よ、吹っ飛べ!」
エリの杖は俺の方を指していた。つまり、吹っ飛ぶ剣は俺の剣ということになる。
俺は持っていた剣を思いっきり舞台袖に向かって投げた。ちなみに剣はプラスチックでできているので、多少投げても大丈夫。それに人がいないかも確認済みだから、怪我人はでない。
「うわああ! 剣が...!」
俺の剣が吹っ飛んだということは、俺はもう戦えないということになる。くっそ、俺の出番もここまでか。
そう思っていると、タカシに「これ」と言って、さっきの剣とは別の剣を渡された。
エリもビックリしたような顔をしている。まあ、それはそうだろう。そしてエリはまた杖を振り上げた。
「と、とりあえず! 剣よ、吹っ飛べ!!」
今度は俺とタカシの剣に向かって杖を振った。俺とタカシで剣を舞台袖に向かって投げ飛ばした。もう流石に、スペアはないだろ。そう思っていた俺を殴りたい。
俺の隣にいたタカシが近くに置いてた袋から、剣を二本取り出した。
「待て、待て待て待て!」
「なんだよ?」
「何本、持ってきてるんだよ!」
俺の質問にエリも乗っかった。
「そうよ! 冒険にそれを持っていくことは難しすぎるわ!」
エリが焦ったようにそう言うと、タカシは自慢げに言った。
「あと十本くらいある」
「多すぎるだろ! もう少し減らせよ!」
「大丈夫だ、現に今、役に立ってるだろう!」
まあ、確かにそうだけど!! それでも、それはいくらなんでも多すぎる!
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます