うちの庭に住んでる神様のお使いが、ニート満喫中なんです

まうにゃろ

第1話 プロローグ


.....昨日の夜は、ものすごい雨と風でほんとに寝てられたもんじゃなかったな。


夏休みに入って、すぐに台風とかホント最近の気候は訳がわからない。まあ、やることなんて宿題と後はクーラーの効いた部屋でゴロゴロとスマホをいじってるしか無いから天気なんてどうでもいいんだけどね。

でも昨日の夜はめちゃめちゃに家が壊れそうで、うちの古い建て付けで耐えられるか非常に心配だった。でも、うるさいばーちゃんが騒いでいないところやを見ると雨漏りなんかはなんとか防げたみたいだ。

うちはほんとに昔からの田舎の造りで今だに台所は床が土間だったり、かまどでお米もたけるくらいだったりする。なんならばーちゃんたまにお釜でごはんたいてるくらい。僕はお釜ご飯

のおコゲが大好きで、ばーちゃんに頼んでお味噌のおにぎりにしてもらう。どんなご馳走より美味しい。

あの雨風だと、庭がめちゃくちゃに散らかってるんだろうな。ばーちゃん頑張って掃除始めてそうだ。落ち着いたらあのおにぎり食べたいってお願いしてみよ、お昼にたべたいなーなんて庭に出てみたらまだ庭は散らかったままだった。


「ばーちゃん、ばーちゃーん!!」

ばーちゃんは、呼んでも返事がなくてあたりはシーンと静まりかえっていた。

普段何にも手伝いしてなくて、この休みにはいってからもゴロゴロと過ごしてた僕としては、なんとなくすまない気持ちを持っていたからかめずらしく竹ぼうきを持ちながら、木くずやちぎれた葉っぱなんかを履き始めた。ふと見ると庭の片隅にある祠がめちゃくちゃにゴミやら木クズやらですごいことになってたんだ。

うちは昔から代々、地元の人たちから神主としてお祓いやらなんやら頼まれている家で庭にもお稲荷様の祠があるんだ。大人の身長くらいの鳥居と祠で古くからあるから大分ボロっとしててあんまりたいそうなものではないが、ばーちゃんは毎日掃除して、お供物は欠かさない。


「ばーちゃん、ここから掃除始めそうだよな。普段なら。どこいったんだろ?」

そう思って、自分なりに掃除を始めたんだけどさ。普段、自分の部屋もあまりしたことない奴がやるもんだから勝手が分からなくてどこから手をつけていいかも分からないくらい。でも、とりあえずこのゴミとかをどかしてみて集めてみようってとこから動き始めた。その時はなんか、無我夢中っていうかなんていうか無心でさ。やってあげようとか、褒めてもらいたいとか頭になくてただただ綺麗にしたいなって体が動いてた。


ふう....。なんとか普段よりはみすぼらしいけど、ゴミだけは取り除くことできた。あとはびしょびしょに濡れてドロのついた祠を拭き上げたら少しましになるかな。そう思ってバケツとタオルを土間から持って来たら上から声が聞こえてきたんだ。


「お前は、久しぶりに会ったと思ったらなかなかよくやってるじゃないか!褒めてやろう。なんもやらんがな!!」


聞いたことのない声でギョっとして見上げると祠の上に古い昔の衣装を着た『ポメラニアン』、銀色の毛のかたまりがこちらを向いて踏ん張っていたんだ。びっくりしてしまって悲鳴すら上げれず、固まっていると

「お前、わしのこと見えないんじゃなかったのでは?なんで見えるんじゃ!何か答えよ!!」

なんていうから思わず

「あ、あのポメラニアンが話してて....。びっくりしちゃって....」

と答えた途端、そいつがめちゃくちゃ唸り出したんでまた固まってしまった。足がすくむっていうか、体が動かない。

「お、お主....わしを愚弄するにもっ.....ほ、ほどかあるぞおぉぉぉ!許さなぬ、許さぬわっ!!」

「わ、わしはしっておるぞ!『ぽめらにあん』とはっ!狗であろ?!ワン公とわしを一緒にしおったな!!」と、小さい体をプルプルとふるわして全身で怒っていた。


でもしばらく見ていたらなんか急に体から力が抜けてだんだんと冷静になってきた、何故ならメチャクチャなその様子が可愛かったんだ。不可思議なことが起こってるのに、なんだか懐かしいような嫌な感じがしなくて....。


「あ、あの失礼な事言ってしまったみたいですみませんでした。謝ります、ゴメンなさい」と、僕が謝ると、怒っていたポメラニアン(ではないらしいが)は少し機嫌を直したようで、

「ま、まあ勘弁してやるが。お前、見えてるだけで何にも覚えてないのか?馬鹿なのか?」とまぁなんとも酷いことを言い出した。

馬鹿とか言われて、ちょっとムカッとはしたが覚えてないって?なんのこと??と、うろたえてしまった。こんな変なの覚えてない訳ないだろう。

「まぁ、大分お前も小さかったからな。2歳過ぎまでわしが同じ相手に遊んでやったの覚えてないのか、失礼な奴め」

と、ポメのくせにやれやれと呆れてきたんだ。

こいつは昔からここにいたらしい。ウチで飼ってたなんて聞いてないよ。


奴は、こう話し始めた。

「富子はわしのこと、ずっと見えておったぞ?ずっとわしのことう敬って働いておってくれてたがな。お前はしょうのない奴だな!」

「わしはここの祠を住まいとしとるお狐じゃ!しっかりせんかい!」


はぁ?このポメがお狐?キャンキャン吠えてるこのちっこい奴が?


訳が分からなくなって、僕は頭を抱えてしまった。ちなみに、富子とはうちのばーちゃんです。





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