第20話 「届いた声」
週の半ば、放課後の図書館で宿題をしていたノアのスマホが震えた。画面を見ると、日本語で長いメッセージが届いていた。送り主は――数日前に連絡を入れた兵庫の町内会のアカウントだ。
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メッセージの中身
翻訳アプリを使い、何度も読み返す。ところどころ不自然な訳だったが、要点は理解できた。
「佐藤イサムさんの記録を少し見つけました。古い家が町内に残っているようです。古い神社の近くにあります。詳しい住所は、また確認して連絡します。」
指先が震えた。
遠い国の誰かが、自分のために動いてくれている。その事実だけで、胸が熱くなる。
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カフェテリアでの興奮
翌日、カフェテリアで仲間たちにスマホを見せると、ジェイデンが机を叩いて叫んだ。
「すげぇじゃん! これもう宝の地図だろ!」
サラは冷静に画面を覗き込み、頷いた。
「“古い神社の近く”って書いてある。地図で場所を特定できるかもしれないわ」
カイは腕を組み、静かに言った。
「……その辺り、俺の親父も聞いたことがあるはずだ。家に帰ったら確認してみるよ」
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父との会話
夜、ガレージで整備をしている父に報告した。
「……住所がわかりそうなんだ」
父はレンチを動かす手を止め、ゆっくりと顔を上げた。
「そうか」
短い言葉。それでも、その瞳には確かな光が宿っている。
「気を抜くな。大事なのは、そこから先だ」
「わかってる」
ノアは力強く頷いた。
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ノートのページ
部屋に戻り、ノートを開いた。
ページの上に新しい項目を書き込む。
•Step Fifteen: Address found – verify location.
そして、ページの隅に小さな文字でこう書き添える。
「風が、道を教えてくれる」
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静かな夜
窓の外では冷たい風が木々を揺らしていた。遠い国の潮の香りが、ほんの一瞬だけ鼻先をかすめたような気がする。
ノアは深呼吸をし、心の中でそっと呟いた。
「もうすぐ、そこに行く」
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