第19話「スクリーン越しの壁」
書類の返事を待つ間、ノアは焦る気持ちを抑えられず、夜ごとパソコンに向かっていた。
「Hyogo」「Kobe」「Sato Isamu」のキーワードを組み合わせ、SNSやローカル掲示板を検索する。英語で見つかる情報は少なく、ほとんどが日本語ばかりだった。
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見つけたアカウント
ある晩、ノアは古い地域コミュニティのFacebookページを見つけた。
「播磨町内会」という名前で、写真には漁港や祭りの様子が写っている。ページの管理人らしき人物がメッセージを受け付けているのを見つけ、ノアは深呼吸して英語で打ち込んだ。
Hello, my name is Noah Miller.
I’m looking for information about my great-grandfather, Isamu Sato, who left Kobe in 1918.
Thank you.
送信ボタンを押した瞬間、胸が高鳴った。
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返ってきたのは…
翌日、スマホの通知が鳴った。
画面には返事が届いている――しかし、そこに並んでいたのは見慣れない文字列だった。
「初めまして。英語が分かりません。日本語でお願いします。」
翻訳アプリを使うが、ぎこちない機械音声で出てきたのは意味の分からない文章。
慌てて入力して送信したが、返ってきた返事には「???」の絵文字がついていた。
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仲間の助け舟
翌日、カフェテリアでノアは頭を抱えた。
ジェイデンがからかうように言う。
「そりゃそうだろ。田舎のおっちゃんがネイティブ英語なんて分かるわけない」
サラはスマホを手に取り、落ち着いた声で提案した。
「じゃあ、私が簡単な日本語文を作るから、それをコピペして送ればいいのよ」
その日の放課後、サラとカイの父親の協力でメッセージを作った。
「こんにちは。ノア・ミラーといいます。
1918年に神戸からアメリカに渡った、佐藤イサムさんを探しています。
何かご存知でしたら教えていただけませんか?」
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小さな成功
その夜、震える手でその日本語文を送信した。
しばらく経って、画面が震えた。そこには短いが、確かな返事があった。
「わかりました。少し調べてみます。」
その一文を見た瞬間、胸の奥に熱いものがこみ上げた。
たった一歩。でも、確かに前へ進んだ一歩だった。
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ノートのページ
ノートを開き、ページの上に書き加える。
•Step Fourteen: First contact.
Message sent. Waiting for reply.
そしてページの隅に小さく書き添えた。
「壁があっても、声は届く」
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